盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

浅草ロック座12月 真白希実引退公演「with final」でグレイテスト・ショーガールの生き様を見届ける

色々な出来事があった2023年も終わりに近づいてきました。スト客はこの時期「どこで劇場納め/初めする?」なんて挨拶を交わし、各劇場の香盤や状況を細かくチェックします。休暇に入ったし遠征しちゃう?心ゆくまでプンラスもオツですよね。

先日、テレビ朝日イワクラと吉住の番組』でストリップの魅力や楽しみ方が紹介されたこともあり、どこの劇場でもご新規さんや訪日外国人のお客さんが連日見受けられ、観光回復&経済活性化の明るい空気を感じます。

一方で、2023年をもって引退・休業する踊り子さんも数多くいらっしゃいました。徳永しおりさん、望月きららさん、緑アキさん、愛奈さん、浅井ひなみさん等々…。

 

ロック座の至宝・真白希実さんも2023年末で引退するという電撃ニュースが流れたのは5月のことでした。何なら元号が変わるくらいのインパクトがあり、スト客のタイムラインは一時騒然となりました。その後真白さんは半年をかけて全国の劇場を巡り、演目をひとつひとつ仕舞っていきました。

引退作は川崎ロック座にて披露し、引退興業はポラ館ではなく浅草ロック座。もし引退がポラ館だったら連日満員の密状態は確実で、ポラを撮る列がいつまでも途切れないために巻き進行や演目カットは避けられないでしょう。DX歌舞伎町閉館の際がそうでした。コロナ前だったらそういう「お祭りムード」もアリでしたが、ただでさえ感染症が流行りやすい冬に劇場クラスターでも発生したら目も当てられません。

ストリップ文化を愛して、劇場や他の踊り子さんたちへの負担を増やさないため、そして遠方からも来るお客さんに最高のステージを魅せるために「立つ鳥跡を濁さず」の精神で浅草ロック座での引退を決意したであろう真白さん。これぞプロフェッショナルの心遣いだなぁと思います。私の想像なので実情とは異なるかもしれませんが…。

 

さて、いよいよ来てしまった引退興業。12月25日、性なるクリスマストリップとしけ込みました。1回目トップから観劇し、運良く2・3回目はかぶり席にありつけました。サンタさんのクリスマスプレゼントだったのかも。

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スタンド花も鮮やか。「お疲れさまでした」の8文字に無限の想いが込められているのを感じる。
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【with Final season 2023/12/11-12/30香盤】(敬称略)

1景 大見はるか

2景 ALLIY

3景 木葉ちひろ

4景 ゆきな

SS(スペシャルステージ) 真白希実

5景 小宮山せりな

6景 空まこと

7景 真白希実(引退)

 

公演名は「with」。「~とともに」の意味を持ち、今時は小学生でも知っている初歩の前置詞です。使いやすい言葉だからこそ多義すぎて日本語訳がしづらいくらい。どうやら「Dream on」や「Re」など過去の年末公演のような分かりやすいテーマを表現するわけではないようです。「with」の演目は時代も内容も様々で、独立した作品がオムニバス形式で進む構成でした。

演目のバラエティが富んでいたことから、8本の短編映画を観たような第一印象を持ちました。そのことから、「with」は何らかの映画・舞台作品をモチーフにしているのではないか?と感じています。

感想をまとめるにあたり、各演目名が明らかにされていないので、小道具やヒントに演目のテーマを探ってみました。きっと的外れなアイデアばかりでしょうし、「『with』はそういう深読みする公演じゃないから」とツッコミ入れたくなるのは承知しておりますが、ハイコンテクスト好きの浅草ロック座の演出家の方々が何の意図も持たずに公演を構成するワケがないだろう…!と思っておりますので、野暮ですがそれぞれ考察を試みました。拙いレポートですが、未見の方やもう一度観劇する方が演目のイメージを膨らませるのに役立てば嬉しいです。

 

1景 大見はるか

真白さんによる開演の口上が終わり、「It's show time!」とショーの幕開けを予感させる掛け声SEが流れて場内が明転すると、すばやく前盆の暗幕が外され、濃いピンク色の衣装に包まれた踊り子たち7名が盆上に勢揃い。

フリンジがたっぷりと縫い付けられたビキニとアンダーが目の前で揺れる揺れる。首にはビーズが光るチョーカー、手首にはリストバンド、髪にはオーガンジーのヘアアクセをつけていて、とっても華やか&ゴージャス!

本舞台に立てられた4本のポールには濃いピンク色の布がパラソルのようにつけられており、自在に広げられるようになっていた。踊り子が代わる代わるポールをすり抜けて舞い、ひらめく布と揺れるフリンジに視線が翻弄されて大変良い心地。

大見さんが衣装を脱ぎ、渡された濃いピンク色のマラボーを身にまとう。ボリューミーなマラボーのフリルの縁にはシルバーのスパンコールが縫い付けられ、ただでさえ豪華絢爛なのに動く度にキラッキラ輝く。大量のフリル全部にスパンコールをラインで縫い付け…だと!?恐ろしく手間がかかっている…!

大見さんの小柄で華奢な裸体に巻き付くマラボーは生き物のようで、すっぽり包まれた時はそういうドレスみたいに見えて可愛かった。運動性あるポーズも格好良く、勢いよく開脚する技は何度観ても感動してしまう。

 

識者によると、2009年公演(未見)、そして2021年「FLASH」1景(観劇)の再演とのことで、特にモチーフとしたものはない演目でしょうが…。

個人的には、映画『シャーペイのファビュラスアドベンチャー』(2011年)という少しマニアックなディズニー映画を想起しました。映画『バービー』(2023年)もピンクモチーフだし旬か?と思いましたが、もしそうならバービーのテーマやDua Lipaの「Dance The Night」を使うだろうし違うかなと。

M3の作曲は今年亡くなった某教授が作曲で、ちょっと切なくなる名シティポップ。当公演にこの演目を持ってきたのは教授への追悼を込めている気もする。そう考えると、サーカスがモチーフだったりするかも。冒頭の「It's show time!」ともつながるし。

いずれにせよ、オープニングアクトに相応しい華やかな演目でした。

衣装は全然違いますが、ピンクつながり×ブロンドということで。女の子が舞台に立つことを夢見て努力し、最後には夢に一歩近付くストーリー。

2景 ALLIY

女たらしのカウボーイ演目。

本舞台の上手に、西部劇に出てくる酒場の両開き扉と丸テーブルが置かれ、酒場の店内でひとり佇むALLIYさんがハーモニカを吹いている。黒いテンガロンハットを被り、スパンコールがキラキラなジャケットの下にはつるりとした黒いシャツ、大ぶりなベルト、細身のジーンズ、ブーツを身につけている。カウボーイ(男装)だけど身体のラインがくっきりしていてエロいのはALLIYさんの実力!

そこに登場するのはキャピキャピ可愛いカウガールに扮した小宮山さんとゆきなさん。2人はALLIYさんを店外に連れ出し、3人でダンスを踊る。完全に目がハート状態のギャルズを侍らせ、ちょいちょいボディタッチをして口説きにかかる。モテる人だ、ワルい人だ。

カウガールが去り、ALLIYさんは腰掛けてブーツとジーンズを脱ぐ。ジーンズを手で持ち脚を上げてくるんと後ろに倒れる脱ぎ方がお見事。生足が光る。ジーンズの下にはジーンズ素材のホットパンツを履いており、一瞬にして男装カウボーイからセクシーなガンマンに変貌!さっきまで飲んでいたエールの瓶を持ち、時折前方のお客さんと乾杯しながら楽しそうに盆に進む。曲に合わせたヘドバンも決まっていた。

で、ここからのベッドがALLIYさんの真骨頂よ。ゆっくりと衣装を脱ぎ、どんどん「オンナ」度が高まっていく。シャツを出すだけなのに何でこんなにエロいんだろう?

ホットパンツを脱ぐため、立ったままお尻側のファスナーを下ろしていく。なんとこの短パンはファスナーが180度付いていて、お腹側からでもお尻側からでも脱ぐことができるのだ。誰向けの服!?どう考えても、誰かに「脱がしてもらう」か「脱ぐのを見せつける」ために作られたエッチな服じゃん。

類似アイテムをAmazonで見つけました。素肌で着るとデリケートな部位を挟みかねないので素人は大人しく下着を履きましょう。

ファスナーを全開に開き、ホットパンツが左右に分かれる。両手でホットパンツを振り回すと締まったヒップが露わになり、何も隠すものがない状態に。ノーパンガンマン!このホットパンツが非日常すぎて頭がついていかない。ただの裸よりよほど扇情的。
お尻には銃のタトゥーシールが大きく貼られ、挑発的。左胸にもタトゥーシールが貼られていた。何の柄か知りたくてガン見しましたが、2発の銃弾+4文字の英単語(TOWN…?)ということしか分かりませんでした。分かる方ぜひ教えてください。
テンガロンハットを足先にひっかけたままポーズを決めたり、小道具をうまく使いながらセクシーに、ワイルドに魅せてくれました。女も惚れる女とはこのこと。

 

さて、この演目のテーマは、西部開拓史時代に実在した女傑「カラミティ・ジェーン」かなと思いました。彼女は世界一有名な女性ガンマンで、色々映画化や小説化されています。男勝りの射撃の腕を持ち、カラミティ(厄病神)とあだ名されるお転婆娘だったそう。

ja.wikipedia.org

まぁ普通に男性カウボーイを演じたのかもしれませんが、この説で解釈するとALLIYさんはプレイボーイではなく女好きのバリタチということになります!!小宮山さんとゆきなさんとのあの絡みはラブラブ♡レズプレイという妄想も可能になるのですよ。叙述トリック!胸熱!彼女たちのお尻を鷲づかんだり、跳び箱をしたり、イチャイチャしていたあのシーンは百合表現だったのかもしれない!?てぇてぇ~~。

…真実は踊り子のみぞ知る。

 

3景 木葉ちひろ

当公演は超豪華キャストで全員主人公なんだけど、木葉さんの色っぽさが年々上がっているのを知れたのが個人的に大きい収穫でした。特にこの1~2年やばない?「祭音」のス○ーピーもエロ可愛かったけど、「with」では存在そのものがエロさの象徴だし、たぶん当公演で一番エロい演目だった。

身長170cmの恵体にパリコレモデルばりの小顔と美脚(10頭身は堅い)、腹筋の線がくっきり浮き出るほど鍛えられた体躯にほどよく乗った女の肉。腰の位置が高すぎて同じ人種とは思えない。そして大きな骨盤にたっぷりヒップ!足長族×おしりフェチとしてはたまらん美ボディをしていらっしゃいます。はちきれそうな太ももに挟まれたいですね。

 

これはテーマが分かりやすく、長年人気踊り子が演じ続ける名演目「飾り窓の女」です。2013年「PEACE LOVE ROCK」(あすかみみさん)以来、2019年「Dream on」(小室りりかさん)、「Shine on」(矢沢ようこさん)で登場しました。

舞台セットが特徴的で、本舞台にショーウィンドウのような長方形の5つの箱が置かれていて、それぞれの箱に踊り子が入っています。箱の前面には透明フィルムが、背面にはカーテンが掛けられています。売春が合法な国・オランダの赤線地帯(Red light district)の性風俗文化「飾り窓」の再現です。

飾り窓は、(主に出稼ぎの)売春者が建物の窓際に立ち、路上を歩く男性客をあの手この手で誘い、おカネと引き換えにひとときの夢を見せる、現役の性風俗です。日本国内の人権団体やフェミニストからは白い目で見られそうですが、オランダでは売春は立派な合法商売で、セックスワーカーも労働者として権利を持ち、犯罪や性被害の温床にならないようしっかりと国に管理されています。ちなみに現在オランダ全土で2~3万人いると推算されています。

 

ja.wikipedia.org

筆者は赤線や遊郭に関する調べ物や実地調査が趣味でして、2018年にアムステルダム出張の際、飾り窓を見に行っていたので、当時撮った写真を載せておきます。今ではコロナ禍も乗り越えて元気に営業していると噂で聞きます。

アムステルダム市内いくつか赤線地帯がありますが、どこも観光地化されていて外国人(男女ともに)が多く訪れます

派手なネオン遣いが特徴で、窓内に立つ女性たちは年齢も国籍も様々でした(売春者を写さないように気をつけています。ここはたまたま中が不在でした)

飾り窓やセックスワーカーに関するミュージアム。めっちゃ面白かった

ミュージアム内、飾り窓に経つ売春者気分を味わえる体験コーナー。日本で言うと遊郭の中の人になれるようなもんですね。即炎上モノです。あまりに進んでる…。

tabizine.jp

ampmedia.jp

 

だいぶ本題から逸れてしまいましたが、木葉さんは歴代の「飾り窓の女」に負けず劣らずの名演でしたし、何なら一番好きでした。ダンスもベッドもポーズもすべてが良かった。黒髪ロングのイメージが強かった彼女は金髪ブリーチヘアで外国人娼婦風にイメチェン。ベッド着は黒ショーツに黒ガウン、ピンヒール。つよつよ。

飾り窓らしく、彼女を買った客との「プレイ」をイメージさせるベッドが繰り広げられ、あんな表情での誘惑、こんな体位での挿入とアダルティーな表現が乱れ打ちでした。木葉さんファン息してる?童貞ならこの演目観るだけでノータッチ射精しちゃうと思う。

 

飾り窓を照らす演出も進化していた。プロジェクターで映像を投影しながらピンスポットや天吊り照明を組み合わせてダブル効果を狙っていたのが白眉。映像や照明の色が背景のカーテンと踊り子の身体にくっきり写り扇情的だし、透明フィルムがあるおかげで透明有機ELのような(Perfumeやライゾマティクス等が使う高級機材です)見え方になっていた。音楽やテンポに合わせて映像と照明を点けたり消したり、この調整めっちゃ大変だったろうなぁ!と技術さんに拍手を送りたい。

飾り窓の踊り子たちも衣装もひとりずつ変えていて、ブラックライトで光る素材も取り入れていて芸が細かかった。あと2景でバキバキに踊っていたALLIYさんがしれっと加わっていてビックリした。早着替えすぎる。

 

というわけで、この景のモチーフは映画「飾窓の女」(1944年)です。映画の内容と関係ないので、タイトルだけですが。

 

4景 ゆきな

分かりやすく、そのまんま、交響詩・映画・ミュージカル作品の『パリのアメリカ人』。第二次世界大戦直後のパリを舞台に、アメリカの退役軍人が1人の女性と恋に落ちる話。原作は戦争の影響色濃く割と暗い話ですが、この景はおしゃれな軽やかさが特徴でした。バレエの動きを多く取り入れていて、男女で踊るパ・ド・ドゥもきれいだった。

水色に白い水玉柄のワンピース姿のゆきなちゃんは、髪を金髪に染めてクルンと外はね。同柄の大ぶりリボンカチューシャをつけていた。雪のように真っ白な手足、陶器のようにつるつるな肌、丁寧にリップラインを整えた口紅、弾ける笑顔。上等なフランス人形のようでとっても可愛かった。君こそシャンゼリゼ通りのパリジェンヌ

ベッド着は明るいレモンイエローのロングドレスで、たっぷりのレースやフリルが彼女によく合っていた。「少女」が「レディ」になる瞬間を見たおじさんの気分です。

broadwaycinema.jp

 

SS(スペシャルステージ) 真白希実

「with」1stと2ndには無く、finalで新登場した演目です。引退公演や特別興業ならではの追加ステージで、これまでも「トリの顔見せ」的に挟み込まれることがあったので違和感はないのですが、正直なところ初見は驚きました。

前景までの雰囲気とガラリと変わるシリアスな音楽が流れ、無人の本舞台が開かれたと思ったら、引退される真白さんが和装姿をして真剣な表情で登場。思わず居住まいを正して観劇しました。

真白さんは深紅の男物長着に、銀色の地に模様のついた袴を着て、真っ赤な足袋を履き、日本刀を構えている。髪は一つに束ねたポニーテールで、表情は硬い。

楽曲はジョルジュ・ビゼーカルメン》 から「ハバネラ」。マリア・カラスの歌唱でした。「カルメン」は言わずと知れたフランス・オペラの代表作ですが、その劇的な効果とリアリズムの手法は当時の観客の度肝を抜き、歴史的名作として評価され、現代まで続くオペラの先鞭となりました。…そういえば「パリのフランス人」演目からのフランス語の楽曲というつながりがありますね。

カルメンおよびハバネラは著作権の保護期間(作者没後50年)が切れた作品なので、著作権ルール上動画URL・歌詞掲載や演目使用名言は問題ないと思いますが、もしアカンかったらご指摘ください。削除します。

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愛は流浪の民

法律なんて知らないの

あなたが私を愛さなくても 私はあなたを愛す

もし私に愛されたら、気をつけなさい!

真白さんはこの「je t'aime(私はあなたを愛す)」の部分で刀を振るい、何かを斬りつける。照明によって舞台が真っ赤に染まり、怖いくらいに格好いい。バトントワリングの名手でもある真白さんならではの剣さばきは見事。

わずか数分のステージですが、鮮烈な印象を与えます。他の演目が年末興業らしくハッピーで明るめな内容なのに対して、このステージだけが異様にミステリアスなので、若干浮いているように感じました。引退公演にこうしたスペシャル・ステージを用意した浅草ロック座、演じた真白さんの意図とは何なのでしょうか?常に我々スト客の一歩も二歩も先を行くロック座/真白さんからのメッセージが隠されているに違いありません。

しかしながら現在のところ公式から一切情報がないので、限られたヒントを頼りに勝手に推測するしかないです。ひとまず当公演のフィナーレまでレポートを書いた後、私見を後述します。しばし待たれよ!

 

5景 小宮山せりな

4景に続き演目出典は明らかで映画「天使にラ○ソングを」(1992年)。敬虔なシスター役のせりなさんが、他のシスターたちの手ほどきによって自分の殻を破っていくドリームストーリーです。

時節柄、訪日外国人のお客さんが多い中「宗教演目は大丈夫か…!?」と一瞬心配しましたが、クリスマスシーズンということもありめっちゃ盛り上がっていました。(まぁ、いつぞや十字架でオナニーする演目もあったくらいだし、このくらいは全然セーフです…)

シスター役に真白さんも参加し、みんなでわちゃわちゃコミカルに踊る表現が楽しい。みんな楽しそうだなぁと素直に微笑ましかったです。せりなシスター、ハジケすぎてどスケベ修道服に着替えちゃうのもご愛敬。あんなに深くスリットが入った修道服あるのね!?

白いシースルーロングのベッド着に着替え、花道へ。鍛え上げられた上腕二頭筋、広背筋、大腿四頭筋、内転筋が輝いています。たぶんこの会場のお客さんの誰よりもストイックに鍛えた肉体の持ち主です。すっごい格好良い肉体なのに超可愛いベビーフェイスっていうギャップにメロメロです。

天井から吊られた白いティシューをほどき、女性のハイトーンが美しい賛美歌を聴きながら精神統一。4曲目でティシューに登り、圧巻のパフォーマンスを繰り広げます。浅草ロック座ならではの高い天井にエアリアルは本当に映えます。ヌードを支える白いティシューは天使の羽のようで、このステージの間、彼女は天から舞い降りたエンジェルそのものでした。お迎え来ちゃった!?

私にはこう見えた。まさに宗教画のワンシーンでしたね。

貴重なエアリアルの使い手でもあり、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気のある小宮山さんによる渾身のステージ。大先輩の真白さんの引退の花道を飾るという強い意思を感じられて感動しました。絶対に観てほしい!

識者によると、小宮山さんは浅草ロック座のためにエアリアルの新技(両脚先をティシューを掴んで開脚する技)を練習していたそうで、DX東寺での金銀銅杯などでもコツコツ挑戦を続けていたらしい。超高速の回転の間も満面の笑顔をして、軽やかに宙を舞う彼女ですが、どう考えても重力に逆らった動きだし人間業じゃありません。「成功・勝利」への徹底的なこだわりを持ち、日々研鑽を積む彼女に敬意を払い小宮山さんを「ストリップ界の大谷翔平」と呼びたいと思うのですがいかがでしょうか。

 

6景 空まこと

大トリ前の空気をつくる重要な景を任されたのはベテランの実力派・空さん。まずはブルーのクラシカルなデザインのワンピースで登場。ハーフアップで登場した空さんは虹色のリボンを右手に持ち、大きな弧を描きながら舞台中を駆け巡る。リボンが地面につかないギリギリの浮遊を保ちながら、軽やかにステップを刻む。新体操に憧れてリボンをクルクルしたことのある人なら分かると思いますが、あれめっちゃ難しいですよね。オリンピックの競技になってるくらいですから。

空中に描いた虹をつかみ、本舞台の袖から溢れるシャボン玉に包まれる演出は幻想的。生まれては消えゆく無数のシャボン玉は、少し切なくて、でも一瞬一瞬が美しい

イメージ。ルイ・イカールの「シャボン玉」という絵です

ブルーのベッド着に着替え、ゆったりと舞う。群舞はなく最初から最後まで1人で魅せる舞台はハイレベルで、安心してウットリ観ていられた。終始表情は明るく、立ち上がりで再び虹のリボンを手にしていたので、希望を感じさせるエンディングだった。

モチーフは、浅学ゆえ分からなかったです…。「虹」つながりで安直ですが、ジュディ・ガーランドの生涯を描いた「JUDY 虹の彼方へ」(2019年)がイメージに近いかもしれません。夢を追って、シャボン玉のように儚いステージを終えて、それでも人生は続いていくし感動は永遠に残るという希望を感じさせる物語です。名曲「Over the Rainbow / 虹の彼方に」のように、雲の上を夢見て、真白さんの門出が幸せなものであることを祈る空さんの願いを感じました。

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虹の彼方の どこか 空高くには

特別な場所があると 小さな頃に 夢のはざまで 1度聞いたの

その虹の彼方では いつも空は 透き通り

そこで "あなた" が見る夢は 全て本当に叶うんだ

ある日 "わたし" は星に願う

その遠い場所にある 雲の上で 目覚めることを

 

 

7景 真白希実(引退)

とんでもない伝説の演目を目撃しました。

バーレスク」「CHICAGO」「ムーランルージュ」といった定番演目から、まっしーの名作演目「Black Diamond」「BigSpender」「Wow」「Feeling fine」等のショーガール作品を想起させるスペシャルメドレーで構成。ファン垂涎モノの「これぞ名人芸」「よっ、日本一!」「真白屋!」と掛け声をかけたくなるような舞台でした。

まず、舞台が開くと本舞台の移動盆にまっしーが佇んでいる。移動盆の側面にはキラキラホログラム装飾がなされており、アジアイチの巨大ミラーボールを囲むようにダイヤモンド型ラインLEDライトが特設されていた。

衣装もキラッキラ。黒いシルクハットのクラウン(側面)、ブリム(ツバ)、裏面に銀のビジューがふんだんにまぶされている。黒ベロア素材のレオタードにもビジューで柄が描かれ、手袋、ブーツ等あらゆる部分に光が宿っていた。首元には大ぶりのネックレスをつけて、ハーフアップにした髪はキラキラのバンスクリップで留めて、ミラーボールの反射を一身に浴びるまっしーは美の化身そのものであり、「ラスボス」感をたたえている。この明かりは真白さん一人で100万ドルの夜景の光量に相当します。ダンサーズ含めた7名のタキシード風衣装の踊り子たちがまっしーとともに群舞を披露した。

 

スピーディーな衣装替えも見もので、2着目は金色のフリンジがたっぷりついたミニワンピース。3着目は真っ赤なシースルーのベッド着で、すべての裾にモヘア素材のようなふわふわがつけられ、女王様のように、花魁のように裾を引きながら花道を進む。ダンサブルなナンバーからしっとり聴かせるバラードに変調し、情感たっぷりのベッドを魅せた。左膝をついて右脚を高らかに上げるボーズは前盆のせり上がりで最高潮を迎え、スーパーL等の難度の高いポーズをしっかりと決めた。涼しい表情でほほえみながら微動だにすることない彼女の身体は、美しすぎてバロックのアーティスト・ベルニーニの彫刻作品のよう。

「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と賞賛されたバロック芸術の巨匠。昔イタリアに観に行きましたが、エクスタシーの頂点で時が止まったかのような表現が見事で、生涯一度は観てほしいです

真白希実はストリップのために生まれ、ストリップは真白希実のためにつくられた」と言っても過言ではないでしょう。この演目は、間違いなく、日本イチの、そして世界の頂点に立つ踊り子のパフォーマンスでした。

グレイテスト・ショーマン、いや「グレイテスト・ショーガール」として、踊り子としての人生を生ききったまっしー。「さあ生きよう、前を向いて(Come alive)」という前向きなメッセージは、私たちスト客やファン、「真白AD(真白以後)」を生きる全国の踊り子たちを激励するようでした。

移動盆での立ち上がりから花道、本舞台でバッキバキのダンスを決めて「STEPS ON BROADWAY」でも使用した階段に登った。浅草ロック座が持つあらゆる演出装置をすべて使い切って、最上段に到達し、最後のポーズとともに銀幕が閉じられた。

生ける伝説――神話と言ってもいい。ストリップが好きで、あるいは美しいものが好きで、舞台芸術愛する人は、一人残らず「with final」に行くべきだ。年末で忙しいのは誰も一緒だが、万難を排して浅草ロック座に駆け込んでほしい。この伝説的舞台を目撃できるのは、あと数日しかないからだ。

 

フィナーレ

白い特大カベッサ(羽が付いた頭飾り)に白と薄ピンクのタキシード、白い長手袋の踊り子&ダンサーズが一同集結。あまりに見所が多く初見時の感想は「目が足りない!!」だった。もうお正月が来たのかというゴージャスな多幸感。

 

引退公演は明るいナンバーを聴いてもどうしてもしんみりしてしまうものだが、フィナーレが底抜けに華やかで、全員全力で楽しんでいるので、逆にこちらが元気づけられてしまった。どんな時も笑顔で締めたい。ストリップ最高!

 

スペシャル・ステージをもう一度考える

さてフィナーレまで書き上げましたが、ここでもう一度「with final」の構成を振り返ってみます。要素・キーワードだけを抽出し、陽のムードか陰のムードかを独断と偏見でラベリングします。

 

1景 ピンクのサーカス?(陽)

2景 カウボーイ&ガンマン(陽)

3景 飾り窓の女(陰だけどセクシー)

4景 パリのアメリカ人(陽)

SS 侍と刀(陰でミステリアス)

5景 天使に○ブソングを(陽)

6景 虹リボン&シャボン玉(陽)

7景 グレイテスト・ショーガール(陽)

 

SSがあることでコントラストがハッキリし、ほかすべて洋装演目なのに対して和装というギャップも作っています。ナンバーは悲劇的なオペラ・カルメンで、真剣をふるう決死の戦いのシーンが印象的でした。

色んな意見があると思いますが、「with」1stにも2ndにも存在しなかったこのSSは「終わりの象徴=真白さん引退のはなむけ」という役割があるのではないかと考えています。

刀、死、侍の美学というモチーフはあまりに三島由紀夫的で、エロス(生)の対極であるタナトス(死への欲動)すら感じさせます。闇があるから光が際立つように、「終わり(死)」があるからこそ「今」を大切にできるように、真白さん引退公演の深みを増すひと匙のスパイス、そんな効果を狙ったのではないでしょうか。

大好きな藤井風くんの「花」という曲をBGMに、真白さんのこれからの旅路が明るく照らされることを祈りたいと思います。

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枯れていく

今この瞬間も

咲いている

 

最後に、この公演名「with」について述べて終えたいと思います。

ケンブリッジ辞書によると「with」の項目は「used to say that people or things are in a place together or are doing something together」と解説され、「人や物がひとつの場所に存在している事や、何かを一緒にやっていることを伝える時に使われる」と言うことができます。

つまり with は「人やモノ、空間でのつながり」そして「一緒に、ともに、つながって何かをしている共働性」がコアイメージです。 相手が「人」であれ「モノ」であれ「空間」であれ「行動」であれ「つながっている、共働している」ことがキーワードなのです。つながり、協働…まさに浅草ロック座のステージそのものじゃないでしょうか。「絆」と言い換えてもいいでしょう。踊り子、スタッフ・関係者、お客さん、誰が欠けてもステージは成立しません。「with」の4文字に、深い意味が込められているように感じます。

 

なんて、上記の考察も各演目も、たった1日観劇しただけの人間の妄想にすぎないので、「そういう風にとらえる人がいるんだw」と話半分に読んでくださいね。いち個人の感想文が、年末年始に行かれる劇場開場待ちの暇つぶしにでもなれば幸いです。そして色んな人の意見が聞きたい…。

 

最後に、浅草ロック座さんには毎回素晴らしいショーを提供していただき感謝しかないのですが、ひとつリクエストをするとすれば、各公演のイメージボード(制作初期に制作するアイデアスケッチ・設定)を一部でも公開してくれたら、考察がさらに捗るなと思っています。劇場内だけの限定展示でいいので…。オタクはイメージボードや設定集を読み解くのが大好きなのです。まっさらな状態で観劇→設定を読んで再訪するリピーターも増える気がしますし。というか売ってくれたら買います。

 

真白さん、お疲れ様でした!あと数日、楽日まで駆け抜けてください。あぁ、そういえばあの曲の読みは「らくじつ」でしたね。偉大な太陽が去った後のストリップ劇場にもまばゆい月や無数の星が瞬いているはずです。またどこかの舞台でお目にかかる日を楽しみにしています。

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浅草ロック座9月新公演「まつろわぬもの」は中毒性抜群の和風ダークファンタジー

最近ストリップの話題で書いていないですが、観るたびに心は動くし筆を執りたくなるんですよ。アウトプットしていないのでぜんぜん説得力ないですね。週に何回も観劇したり遠征していたのは遠い昔、名前しか知らない踊り子さんも増えてしまいましたし、好きだった踊り子さんも何人か引退してしまったし、今は1週間~2週間に1回くらいのペースでどこかしらの劇場に行く程度の細い客です。もうプンラスとかできない。それでもグッと心をつかまれたのが浅草ロック座の新公演「まつろわぬもの」でした。

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まつろわぬもの、とは、古語で「従わないもの」という意味です。漢字表記すると「服わぬ者」あるいは「奉ろわぬ者」「順わぬ者」と書くらしい。

現代アーティストの谷原菜摘子さんが2019年の個展タイトルに付けていて、たまたま行ったことがあったので聞き覚えがありましたが、日常使いする言葉ではないので、多くの方はググったと思います。

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で、浅草ロック座ファンならその時点で思いますよね。これまで9月公演は「秘すれば花」とか「夢幻」とか、芸術の秋らしく古典演目やダークめなファンタジー演目を多く披露してきたので、今回もその流れであろうと。浅草ロック座が自信をもってお届けする新公演、これは観ないと、ってね。どんな歴史や古典作品を土台に新解釈をブチ上げてくれるんだろう?とワクワクしながら浅草に向かいました。

結果、想像以上にスゴかった。

ここまでしちゃうの!?ってくらい本格派ダークファンタジーの世界観が作り込まれており、実力派の踊り子さんたちがガチで挑んでいました!

 

ここからは、演目名を書くのでネタバレになってしまいます。ご了承ください。

 

【「まつろわぬもの」第1期香盤】※敬称略

1景.「土蜘蛛」桜庭うれあ

2景.「浅芽が宿」虹歩

3景.「虫めづる姫君」花井しずく

4景.「平将門」赤西涼

5景.「好色五人女」白橋りほ

6景.「鉄輪」椿りんね

7景.「蝦夷」真白希実

 

演目名だけで妄想が広がります。というか、だいぶマニアックなチョイスですよ。浅草ロック座のプロデューサーの中に日本文化史専攻のガチ勢がいるな?

教科書に載っていてメジャーなのは「虫めづる姫君」くらいで、「蝦夷」も日本史でちょっと習ったくらいの知識の方が多いのではないでしょうか。蝦夷アイヌと思う方もいらっしゃるでしょう。

私のゆるふわ解説をちょこっと加えながら感想を書いていきます。個人の見解なので違ってもお許しください。

 

1景.「土蜘蛛」桜庭うれあ

『土蜘蛛草紙絵巻』伝・土佐長隆|鎌倉時代 重文 東京国立博物館所蔵

土蜘蛛とは大和朝廷に恭順せず敵対した古代の「まつろわぬ人々」へ向けた蔑称。日本各地で記録され、単一の勢力の名ではありません。虫の蜘蛛とも無関係です。しかし後代には蜘蛛の妖怪とみなされるようになった、正史の裏側に消え去られた名も無き民たちです。日本美術史をやっているとたまに出てきます。能の演目にもありますね。
姿かたちも残っていない土蜘蛛一味の頭を演じるのは、キュートな笑顔が魅力のうれあちゃん!正直意外な配役でした。しかし今回、彼女の開花っぷりがスゴかった。はじけるスマイルと長い髪を封印し、クールで格好良く、しなやかな女戦士を演じました。いつものイメージとのギャップは一番大きく、みんなそれぞれ素晴らしかった中で、【個人的MVP】を捧げたいお一人です。

細い肢体に、蜘蛛をイメージした黒いボンデージ風ベッド着がたまらなくセクシー。ショートヘアのウィッグには、蜘蛛の糸を思わせるキラキラのラインストーンがあしらわれていました。首筋のチョーカーに付けられた蜘蛛のチャームが揺れる。長い手足を活かしたスパイダーな極上ベッドに絡め取られ、風を切るためらいのないポーズに魅了され、1景からノックアウトされました。さすが「華のトップステージ」、この公演の世界観にグッと引き込まれます。

 

2景.「浅芽が宿」虹歩

画像は拾いもの

 

浅芽が宿とは、茅などの雑草が生い茂って荒れ果てた家のこと。江戸時代の怪異幻想短編集「雨月物語」の中の物語です。商売で成功した男が、7年ぶりに故郷に残した妻のもとを訪れ再会しますが、妻はすでに死んでおり、会ったのは幽霊だったという男女のすれ違いを描いています。

虹歩さんは普段TS系列の劇場や東洋ショー等に乗られていますが、昨年の10月に久々に浅草ロック座に出演されて以来、私が浅草で拝見するのは2回目です。狭いシアター上野で間近に仰ぐ虹歩さんも大好きですが、浅草の大舞台で輝きを放つ虹歩さんは格別で、毎度、心の中で「東洋のマリリン・モンロー光臨!」と叫んでおります。

今回は真白さんとのダンスシーンも素晴らしく、巧みなステップやターンを決めて技術力の高さを示しておりました。何よりも、大胆なベッドが濃厚で、長年待ち望んだ夫を迎える妻の深い愛情が伝わってきました。濡れた黒目がちな眼、細やかな指使い、ふるふると震える豊かなお胸、そしてあんなに細いくびれ…長年の舞台キャリアで鍛えられた身体は文学以上に物語のクライマックスを雄弁に語ります。いいものを観ました。そしてやはり、乳首が光っていたことを記しておきます。

 

3景.「虫めづる姫君」花井しずく

虫めづる姫君 - GENSEKI

裳着(今でいう成人)を済ませた美しい姫君でありながら、お歯黒などの化粧もせず、眉毛もぼさぼさではやしっぱなし、女性がたしなむ仮名を書こうともせず、ただ虫を愛するという風変わりな姫の物語です。平安時代の価値観を真っ向から否定し、わが道を歩んだ女性の生き様を描く、相当進歩的な話です。日本文学初の不思議ちゃんとも言われますが。

ダークでヘヴィな演目の多い「まつろわぬもの」の中で、明るくて純粋に楽しめて多幸感あふれるレアな演目です。前半の息継ぎポイントでもあります。花井しずくさんは初めて拝見したのですが、めちゃくちゃ可愛くて超タイプでした。他のお姿を知らないので適当なこと言っているかもしれませんが、「虫めづる姫君」は彼女にハマり役!

道重さゆみさんを思わせる絶対的ヒロインなプリティルックスに、バレエ経験者らしい柔軟スレンダーボディ。不機嫌そうなぷんすか顔で口を尖らせて三白眼をキラつかせる彼女は、ぷりぷりプリンセス。お顔の美が強すぎるし、キャラクターデザインが秀逸すぎる…!何この可愛い生き物は!

ピルエットからの「止め」ポーズや180°開脚ポーズなど、常人離れしたアクションをさも簡単そうにやってのけ、舞台上で元気に動き回る彼女から目が離せません。

何よりもベッド着が天才的で、青虫マラボーを身体に巻き付けながら鮮やかなグリーンのランジェリー姿で登場した時は脳に電流が走ったね。そんでもって、ステージでのキュートな姫君のドタバタ劇から一転、ピンク色のいやらしい照明のなかで愛しの虫と絡まり合う変態的な「蟲姦」ベッドは、興奮のあまり呼吸が止まりました。文学~!谷崎潤一郎を呼べ!川端康成も来い!貴方たちがまだ書いたことのない性のドラマがここにある!

後にXで知りましたが、このベッド着の制作は雨宮衣織ちゃんらしい。彼女にぴったりの素晴らしい衣装をありがとうございました。この2人にもうひとつの【個人的MVP】を捧げたい。そういえば、脱いだパンティをあんなところに結ぶベッドも珍しいなと思いました。そういう型破りなところも姫君っぽくて良き。いやぁ、この演目があまりに良かったので、ポラ館でも花井しずくちゃんを観るべく追っかけてみようと思いました。

 

4景.「平将門」赤西涼

平将門 - 妖怪うぃき的妖怪図鑑

崇徳天皇菅原道真平将門という非業の死を遂げた歴史上の3人は日本三大怨霊と呼ばれています。平将門は、古代の朝敵視から中世の崇敬対象、そして明治時代の逆賊視から戦後の英雄化と、時代と共に評価が変わる興味深い人物です。さらに興味深いのは、現代でも将門の祟りが恐ろしいと噂されていることです。(詳細は下記参照)

www.travel.co.jp

いやぁ、普通さ、浅草ロック座のストリップで「平将門」をやろうとは思わないよね。その時の企画会議の様子を見てみたいです。「前半のトリの4景で、平将門やるのはどうですか?」「よし、採用!」ってはならんですよ。

そんないい意味で「狂った」演目を体当たりで演じるのが、浅草のダーク演目に定評のある赤西涼さん。本人はめちゃくちゃ明るい雰囲気で綺麗な方なのに、ダークやホラーな役柄に当て込むとマジで怖いんです。もともと役者として活躍していることもあり、取り憑かれたように別人格になってます。「百物語」の演目「かざぐるま」は本当に怖かったなぁ。

ご本人はさることながら浅草ロック座もこの演目を全力でプロデュースしていて、照明やスモークの力の入れ具合がとんでもなかった。平将門が四方八方から矢を受けて命を落とすシーン、おそらく首が飛ぶシーン、怨霊となって時を超えて蘇るシーン、どれも半端ない作り込みでした。狂気すら感じる赤西さんの目を剥き引き攣った笑顔も恐ろしく、もしこっちに首が飛んできたら、呪いが降りかかったらどうしようと恐れおののいた。念のため言っておきますが…これ、ストリップの感想ですよ?

こんなに怖いのに、最後は脱いでポーズを決めてくれて、爽快感すらありました。ハイル・赤西涼!と叫びたくなる「赤西帝国」ぶり。そして、最後の立ち上がりのクライマックス、魂の咆哮ーー。1本大河ドラマを観たかのような満足っぷりのあと、たいていの初見客は呆然としながら休憩に入っていました。

 

5景.「好色五人女」白橋りほ

好色五人女・井原西鶴忌』 - 季節のブログ『ほっとひといき・四季の便り』

井原西鶴作。実際に起こった五つの恋愛事件をもとに、歌舞伎でお馴染みの「お夏清十郎」や「八百屋お七」を始め、「樽屋おせん」「おさん茂兵衛」「おまん源五兵衛」の5女性を主人公とした物語。封建的な江戸の世にありながら本能の赴くままに命がけの恋をした女性たちは、「好色」というより一途で純情。

後半唯一の明るく元気な演目です。セーラー服に振り袖を悪魔合体させたキュートな衣装を着た5人の踊り子さんが登場して、わちゃわちゃ踊るのが楽しい。1曲目の音楽が聞いたことなかったので調べたところ、まだYouTubeで数千人しか視聴していないインディーズバンドの楽曲(その世界ではたぶん有名なんだと思いますが)だったので、浅草ロック座の音楽担当はどうやってこういうアーティストを見つけ出すんだ?と愕然としました。

私が浅学ゆえ、りほちゃんのモチーフがどの好色女性なのかが読み取れなかったので、2期見に行く方は予習していくとより楽しめるかもしれないですね。りほちゃんは本公演でデビューの新人さんですが、堂々たる脱ぎっぷりが素敵で、全力でポーズを切る姿がいじらしく応援したくなりました。グラマラスなお胸は大迫力で、笑顔のままサービス満点で揺らしてくれるので好きになっちゃうよなぁ。投げキッスとかウインクのようなサービスをしてくれるので、何人ものお客さんが恋に落ちていました。

 

6景.「鉄輪」椿りんね

能・演目事典:鉄輪:あらすじ・みどころ

もとは能の演目。平家物語「剣巻」を元にした作品で、丑の刻参りのイメージの原型となったとも言われている。夫に捨てられた妻が、夫と新しい妻に復讐する悲しいお話です。物語の詳細は下記参照。

noh-sup.hinoki-shoten.co.jp

鉄輪(かなわ)とは、今で言うと、キッチンコンロについている五徳のことです。その鉄輪にろうそくを立てて火をともし、裏切った夫のもとへと恨みを晴らしに向かい、鬼になった女(りんねちゃん)と、夫からの依頼で鬼退治をする安倍晴明(赤西涼さん)との戦いから、ステージが始まります。おおっ、憑依系2大ストリッパーの正面対決だぁ!

りんねちゃんはプラチナブロンドヘアで、白塗りした顔と赤く囲んだ「地雷系」メイクを施し、鬼の角を生やしております。すでに鬼と化してしまっているんですね。怖いです。対する安倍晴明役の涼さんは、清らかな正義の味方風。格好良いこと。2人は闘い、やがて安倍晴明からの術にかかり、成敗される鬼のりんねちゃん…。苦しみの中、スモークの中に消えていきます。

そしてベッド入りしたときには、鬼の角が消えておりました。これは解釈が2パターンあると思うのですが、ひとつは「安倍晴明によって鬼が倒され、女に戻った後」の姿。もうひとつは「夫と浮気相手への恨みを胸に儀式を控え、鬼になる前」の姿。どちらであっても解釈しがいがありますが、後者の方がドラマチックな演出で分かりやすいかなと思い、そっちで受け取りました。

ベッドにおいて、りんねちゃんは赤い血を身体に塗りたくりながら、人間であることを止めて鬼へと変貌していきます。血の涙を流し、慟哭し、怒りと恨みで身体を震わせます。血で染まった白い肢体はこの世のモノとは思えないほど恐ろしく、でもどこか美しく…。

愛と憎しみは紙一重とはよく言ったもので、強い恨みから生き霊となった悲しき鬼女。愛情が深ければ深いほど、愛は憎しみへと変わる。裏切られた悲しみと夫への未練、相反する感情に苦しむ姿が見ものです。嫉妬に狂っているのですが、まだ夫を愛している気持ちもあり、夫を呪い殺してやりたいけど、情の深さがそれを邪魔する。憎しみの中に、愛情の深さが垣間見えるやるせなさが、見るものを悲しくさせます。(もう一度言いますが、これはストリップの演目です)

前々からダーク演目に意欲的だったりんねちゃん、ついに浅草の大舞台で満願成就と相成りました。トリ前を飾るステージを全身全霊で演じていて、こっちが心配になるくらいの憑依っぷりだったので、公演後はゆっくり身体を休めてください…。

 

7景.「蝦夷」真白希実

蝦夷(えみし)は日本古代史上、北東日本に拠って、統一国家の支配に抵抗し、その支配の外に立ち続けた人たちの呼称です。中でも知られる阿弖流為(あてるい)は今から約1,200年前、現在の奥州市水沢地域付近で生活していた蝦夷の一人です。阿弖流為蝦夷のリーダーとして勇敢に立ち向かった実在の人物です。

時の権力者たちは、東北地方を支配しようと、度々たびたび兵を送り蝦夷の軍勢ぐんぜいと壮絶な戦いを繰り広げていました。延暦21年(802)、度重なる戦いで疲弊した蝦夷の行く末を憂いて阿弖流為は降伏。征夷大将軍坂上田村麻呂によって蝦夷は平定され、陸奥国は、朝廷の統治下に置かれることとなります。

www.rekihaku.ac.jp

時の中央政権に抗い、自分たちの土地や民を守るために戦い抜いた人たちの物語です。政府VS民衆の構図には普遍的なドラマチック性がありますね。自然と民衆側に感情移入してしまいます。そして不思議なことに、この物語が公権や世間、時代の圧力に負けず、ストリップという文化を守る物語ようにも、シンクロして見えてきます。年内に引退してしまう真白さんが先陣を切って戦いの場へ行き、命運は残される踊り子さんたちに託され、真白さんの遺志を胸に秘めた彼女たちがこの世界を守っていくかのように。真白さんの勇気ある出陣シーンと、必死で引き留めようとするダンサーズの姿は、涙を禁じ得ません。

群舞シーンも瞬きを許さないスピード感ですが、真白さんが単身ベッド入りしてからの数分は、筆舌に尽くしがたい極上のエロスの時間です。国宝級を超えて世界無形文化遺産級(言葉の綾。どっちが上とかあるわけではないです)。芸術のように磨かれた身体、観音様のような微笑み、天下一品の技。流れるようなベッドからの、ダイナミックなポーズ切り。特に一発目の「L」は神の領域でした。「浅草ロック座の至宝」と言われる真白さんの芸、未見の方がいたら引退前にぜひ目に焼き付けてほしいです。

 

この景は衣装や小道具も凝っていました。蝦夷は、蝦夷錦(えぞにしき)とよばれる色あざやかな着物を身につけています。ストリップなので女性の身体を美しく見せながら、民族に敬意を払ったデザインは逸品です。どうやって作ったのか、何を参考資料としたのか、衣装さんのお話を聞いてみたいですね…。

首飾り アイヌの女性が身につけた大切なアクセサリーの一つ。 市立函館博物館所蔵

フィナーレ「火の鳥

火の鳥(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ - RENOTE [リノート]

踊り子さんとダンサーズ全員登場の群舞。華やかで、でも品がある、祈りのようなステージでした。人間の歴史や運命を見守る不死鳥・火の鳥とともに、「まつろわぬもの」の7つの物語は流転していくのでした。時代やテーマもバラバラの物語をうまくまとめており、さらに深い視座を与えていて、これ以外のフィナーレはあり得ないと思えるものでした。

 

この公演を一言で言えば「人間賛歌」です。様々な登場の「生」のありようを描き、醜い欲望も業も怒りも悲しみも、地に生きるすべての命を肯定する、優しい眼差しにあふれていました。

 

終演後、色んな人の感想が聞きたくなりました。浅草ロック座は毎公演楽しみに観ていますが、こんなに後引く公演は久々かもしれません。各景の解釈やときめきポイントを話し合いたい。私はたった2回観ただけなので記憶があやふやな部分も多いし、予習もしていないので間違っているところもあると思います。ごめんなさい。ですが、率直な感想を残したかったので、どきどきしながら書いてみました。

いつか、この公演を観劇した方と話せたら、もしくは誰かがどこかで意見交換するのに役だったなら、残りの「まつろわぬもの」公演に足を運ぶきっかけとなったならば、こんなに嬉しいことはありません。

秋の夜長に、ひとさじの愛しい(かなしい)ものがたりを。

夏も韓国に行こう②チェジュ島の海と山よくばりフルコース

あんにょんチェジュ島。

波の音が目覚ましだった。昨夜はてっぺん過ぎまで飲んでタクシーでエアビーにインしたので部屋をよく見ていませんでしたが、オーシャンビューの本領発揮という眺めですね。あがる!

何度か泊まった新市街のホテルは夏で値段が上がって1万円近かったけれど、エアビーは1泊5千円くらいでした。

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キッチンつきってのがいいよね。市場でフルーツ買ってきて食べよー(と思っていたけれどずっと遊んでいたのでしませんでした)

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バスタブはなくシャワーのみの海外仕様ですが夏は問題なし。1ヶ月くらいここで暮らしたい。
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歩いてすぐの食堂で朝ご飯のコレグクス(韓国風豚骨ラーメン)。あっさりしたスープが飲んだ翌日にぴったりです。そして黒豚の肉がうまいこと。f:id:sakariba:20230808103223j:image

今回もトルハルバンを見かけたら写真を撮るチャレンジをしています。石のおじさん、なんか癖になる顔してるんだよね。
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昨日の友人に車でピックアップしてもらい、再訪・城山日出峰!前回はひよって諦めたけれど今回は山に登ろうと思い、覚悟を決めてきた。真夏なので人は前回より少ない。30℃超えの晴天で登山とか、正気の沙汰ではない。
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チェジュ島のポンカン・ハルラボンジュースを回復ポーション代わりにゲットして、いざ登山!奥の方に見えているのがこれから登る山です。
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まぶしいぜ。ちなみに暑いですが風が吹いておりカラっとしているので、日本よりは体感涼しいです。日本の夏は屋外に出る気すら失せるので、まだ動ける暑さ。
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登山道というより階段なので登りやすい。汗だらっだらで、下を向くとポタポタ垂れる。でも振り返るとパステルカラーの町並みが広がるので、頂上からの景色をモチベーションに頑張れる。
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登頂!30分くらいで登れました。夏でなければそんなに辛くないと思います。カルデラの風景は阿蘇に似ている。

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登り切った達成感で景色がますます美しく見える。チェジュの海の色は釜山とも日本とも違う。
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大好きなハルラボンジュースをゴクゴク飲んで、身体の細胞にチェジュの成分を行き渡らせる。地のものを現地で食べるのが旅の醍醐味。
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何食べてもうまいモードで、アワビ粥をいただく。身体にいい味がする。チェジュの料理は韓国本土とは全然違っていて、全体的に素材感あって素朴、けれど再現不可能な深さがある。唐辛子もあまり使っていない。辛いもの苦手な人も大丈夫だと思います。
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お土産でハルラボンピンバッチとシールをゲット。
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灼熱登山のあとは、極寒の万丈窟へ。まるで交互浴のような旅程です。

万丈窟とは、世界遺産にも指定されている世界最長の溶岩洞窟で、年間通して気温が11〜12°に保たれている天然の冷蔵庫だ。
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中は暗いので写真が撮りづらい。上着を着て歩いてちょうどいいくらいの気温。たまにノースリ短パンの欧米人にすれ違ってビビった。足場が悪く、水たまりが多いので歩きやすい窟でないと危険。勿論Tevaサンダルでいけました。最深部までは歩いて20分ちょいで、ひたすら洞窟が続く。歩くことに集中できるし涼しいしでマインドフルネスな時間でした。洞窟の解説で、ちょいちょい日本語あるので価値も何となく理解できた。

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「次はどこ行きたい?」「海!美しいビーチを歩きたい」「OK!」

チェジュは電車がなく公共交通機関がバスのみなので、車での移動が一番便利。持つべきものは、現地の友達である。

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「チェジュのモルディブ」として知られる咸徳海水浴場(ハムドク・ビーチ)に連れてきてもらいました。美しい翡翠色の海と真っ白な砂浜。こういうビーチに来たかったの!
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かわいい浮き輪もたくさん。ナス型初めて見た。
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SUPやサーフィンをする人は少なく、浅いところでぱしゃぱしゃ遊ぶ人が多い。海の家のような屋台はなく、アルコール販売もなし。治安が大変いいですね。

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まさに海日和の天気だったので、キラキラ輝く水面がきれいだった。ビーチの奥のほうに行くと、ボートに乗るアクティビティがあったり、マーケットがあったりした。
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ピンス(韓国かき氷)を食べてみたい、と言ったら連れてきてくれたカフェ。涼しい店内で、大きな窓越しにオルム(山)を眺めながらオルム型のピンス(抹茶ミルク味)を食べました。氷がミルクでできているのでマイルドでふわっふわ。甘さ控えめで、小豆をかけて食べると抜群においしい。日本のかき氷と全然違って驚きました。多分新大久保あたりでも食べられると思いますが。


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夕飯は新市街の居酒屋で食べようと話していたので、車で戻りお店でみんなと合流。この日、彼らの友人のひとりがチェジュを離れるラストナイトだったこともあり、昼から麻雀大会をしていたらしい。写真に写っている彼らはすでに相当飲んでいるはずだが、顔色が変わっていないのがすごい。
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キムチや肉を煮込んだ鍋。見た目ほど辛くなく、発酵の進んだキムチの酸味が夏にぴったりのおいしさ。(帰国後、賞味期限が少し切れて酸っぱくなったカクテキやキムチで鍋をつくったら再現できました。乳酸菌パワー)
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ジョン(日本でいうとチヂミ)も。チヂミは材料を刻んで薄く広げて焼く料理ですが、ジョンは材料の形はそのまま、小麦粉と卵をつけてフライパンで焼く料理。いわばピカタのようなもの。チヂミは普段のおやつとしてもよく食べられるが、ジョンは祝日やお正月など華やかなお祝い事に欠かせないメニューらしい。

「ジョンとマッコリは親友なのよ(一緒に食べてみ、飛ぶぞ)」とのことで、チェジュの生マッコリをぐびぐび飲りながらジョンを食べる。素材のうま味と揚げ物のコクがダイレクトに味わえるジョンは、マッコリの清涼感にぴったり。
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食後、カラオケに行こう!とのことで、彼らいきつけの店へ。海外でカラオケに行くのは初だ、英語で歌える持ち歌はないけれど、なんとかなるだろう…!
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韓国式カラオケは色々なタイプがありますが、ここは日本のパセラと同じようなシステム。ミラーボールやLEDがだいぶ派手だけれど。そして彼らはノリがいいので、前に立って歌い、踊り、盛り上げるのがうまい。
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韓国語をわからない私向けに、日本語の曲も入れてくれた。X JAPAN好きな彼が完璧に熱唱。あと「雪の華」はみんな日本語で歌えました。シティポップ流行ってるしどうかな、と「真夜中のドア」歌ったら大好評で、みんなで「Stay with me~!」と合唱。
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カラオケ後はバーへ。

「私たちもいつか日本に行ってみたい」と言ってもらえた。もし来たらどこを案内しよう。東京もいいけれど、彼らには神奈川のいいところを紹介したい。渋谷スクランブル交差点とか新宿ゴールデン街より、野毛の都橋商店街。湘南や三浦の海で遊んだり、鎌倉で飲んだり、大きな老舗商店街を歩いたりしたい。いつか実現するといいな。

 

翌朝、ラストチェジュ。エアビーをチェックアウトして散歩がてら海沿いを歩いた。モーニングは「ボマル(보말)」という小さな巻き貝(日本ではクボガイというらしい)を使ったお粥にした。
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jejutour-jp.hatenablog.com

 

龍頭岩(ヨンドゥアム)も近かったので、立ち寄ってお詣り。またチェジュに来られますように。

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ちなみに今回の旅荷物はこれだけでした。カリマーのパッカブルリュック+無印のショルダーバッグ+モンベルの日傘+ノースフェイスの速乾パンツ+Tevaサンダルさえあれば、世界のどこでも行ける。

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道頭洞虹の海岸道路で海にお別れを告げて…

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www.visitjeju.net

 

おひるごはんは、やっぱオギョプサル!昼から飲んじゃお~
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噛み応えあるジューシーな五枚肉を、地元の野菜やわらびスープと一緒に。サムギョプサル屋は数多くあれど、オーシャンビューの店は少ない。お値段も手ごろ。新市街から少し離れていますが、ほかの観光スポットとも近いのでおすすめです。
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フライトまでの残り時間は、行ってみたかったD&DEPARTMENT JEJUへ。ナガオカケンメイはじめデザイナーが選んだ商品や文化をリデザインしているショップです。

www.d-department.com

カフェがおすすめ。チェジュや韓国の伝統茶を手軽に飲めました。ハルラボンのドライフルーツもおいしくて、ヨモギ茶と一緒にお土産に買いました。
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店員さんたちが全員韓国ドラマに出てきそうな美形ぞろいでした。
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こういうメニューのデザインも凝っている。韓国ってコーヒーを飲むカフェはたくさんあるけれど、伝統茶のお店は探さないとないよね。
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チェジュ空港へ。釜山に戻ります。f:id:sakariba:20230808103128j:image
エアプサンの機内はミストが出て涼しげでした。
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離陸。窓際の席で、離れていくチェジュを眺めた。さっきまでいた街中が見えるとセンチメンタルになってしまうね。あのへんに、みんないるのか。
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昨日行ったビーチが見えた。翡翠色のところ。十数時間前までいた場所を上空から見るのは不思議な気持ちになる。

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楽しかったなぁと懐かしむ気持ちと、友達によくしてもらえてありがたいなぁと感謝の気持ちでいっぱいに。彼らが私にしてくれたように、私もひとに優しくしたい。これが利他の心ってヤツかもしれない。
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釜山着。国際市場をざっとまわり、近況チェック。昨年より人出があってお店も元気そうでした。f:id:sakariba:20230808103217j:image
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山梨の水信玄餅ジェネリック版が売っていました。
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色付けたらもはや別物だろう!
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こういう発想面白い。しかし別に売れていなかった。
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マッサージを受けて、夕飯は軽く海鮮チゲラーメンにしました。辛くておいしかった~。
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ラスト韓国の夜は、やはりバーでシメたい。チェジュの友達におすすめのミュージックバーを聞いておいたので、行ってみよう。入口から雰囲気がたっぷりな店だ。
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雑居ビルのルーフトップの店で、やたら庭のつくりこみがすごい。

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店内はチルな音楽が流れている。カウンターに通してもらえた。店員は男性3名。全員異様に格好良く、韓国のモデルさんかってくらい男前だった。英語で会話できたので、店の仕組みを教えてもらったところ、注文はインスタのメッセージ経由らしい。なるほど、そうやって顧客情報をつかむのね。
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シグネチャーの漢方カクテルをいただいた。おいしい。「City vacance」という名前だった気がする。まさに今夜の気分にぴったり。ちなみにバックバーには酒瓶だけでなく香水も並んでいた。昼は香水ショップとして営業しているらしい。かっこい~
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iPadを渡され、好きな曲をリストに入れてねと言われた。「日本の曲も人気で、今はあいみょんとimaseが流行っているよ」とのこと。迷って、indigo la endの「夏夜のマジック」をリクエストした。音作りの天才・絵音くんのマジカルエモサウンドを釜山で流した。

「これ、旅人へのサービス。よかったら」とフルーツ盛り合わせをくれた。瑞々しくておいしかった。旅人に優しい国はまた来たくなる。自分の住む国に彼らが旅で来た時も、優しくされるといいなと思う。
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翌朝、釜山空港から時間通りのフライトで帰国した。またいつか。

 

夏になると思い出す別れの歌も

今なら僕を救う気がする

今日だけは夏の夜のマジックで

今夜だけのマジックで

夏も韓国に行こう①釜山・海雲台の絶景ビーチとブルーラインパーク編

あんにょん!4月に行ったばかりですが8月頭に渡韓してきました。年始のチェジュ航空セールで700円航空券を買っていたのです。毎年お盆休みは普通に働き、その前後で休みを取ってどこかに行く「ずらし旅」へGO。

前回の韓国旅行記はこちら。そろそろ韓国ネタ飽きたよという方、もうすぐほかの国も行くのでちょっと待って。ようやく韓国以外のアジアも行きやすくなったね。

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出発1週間前くらいは、台風6号が韓国に直撃するのではというニュースがありましたが、まぁなんとかなるだろ直前の台風進路次第だと気にしないでいたら、台風クンは沖縄に長期逗留したため韓国はノーダメージでした。帰国後にニュースを見たらこれから台風クンは韓国ツアーするようでした。神回避でラッキー。こういう悪運はめっぽう強い。

 

親しみを覚えるオレンジ色のロゴが青空に映える…。

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文庫本を読みつつ寝ていたらあっという間に釜山へ。近いなぁ。
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ちなみに今回の旅のおともは朝井リョウの「正欲」。朝井さんらしい視点で「多様性」社会に切り込んでいて良かったです。

 

入国手続きは超スムーズで何のストップもなかった。着陸後10分で電車に乗れるくらい。1時間ほどでホテルにチェックインし、韓国の親友と夕飯を食べる約束をしているので身支度を調える。

彼女は大学時代に日本に留学していて、同じ授業を取っていたことをきっかけに友達になった。大学の宿舎でトッポギを作ってもらったり、恋バナをしたり、一緒に課題に取り組んだり、アートについて語り合ったり、「あいちトリエンナーレ」に行こうと夜行バスで弾丸ツアーしたり、青春を過ごした大切な友達だ。

今はソウルで働きながら博士号を取っていて、今回の渡韓に合わせてわざわざ釜山まで来てくれた。ソウルから釜山は韓国の新幹線2時間半くらいかかるので感謝しかない。

夕食は釜山らしく海鮮にしよう!とアグチム(アンコウの蒸し物)を食べに行った。

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一見カフェのようなおしゃれな店内で、コラーゲンたっぷりのアグチムをいただいた。甘辛いソースが白身にぴったりで、シャキシャキのもやしとも絡む。アンコウのフライも美味しかった。
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楽しい再会の時間はあっと言う間で、彼女がソウルに帰る電車の時間が近づいてきた。彼女は来年出産を控えているし、私は冬以降しばらく韓国に来られなくなるので次に会えるのはいつになるだろう。そんな事情もあったので時間をつくってくれた彼女には感謝しかない。釜山駅のホームまで見送って涙の別れ。ホテルに戻り、彼女が日本語で書いてくれた手紙を読んでまた泣いた。最近泣くと翌日の目の腫れがやばいのに!

 

翌朝、早起きしてチェックアウトしバス停へ。夕方にチェジュへ向かうので日中で釜山観光といきましょう。

釜山の街中ではいたるところで2030万博誘致のPRがされていた。2030年まで7年もあるのに、市バス、鉄道、駅広告などをジャックしており熱の入った誘致活動に驚いた。我が国の万博ニュースは暗いものが多いので落差がすごい。2030年は多分釜山に決まるだろうし、面白そうだから決まってほしい気持ちもある。
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釜山駅からバスで45分ほど揺られて海雲台(ヘウンデ)へ到着。市街にほど近いビーチリゾートです。約2kmにわたって白い砂浜が続く海雲台海水浴場が有名。
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駅のコインロッカーにリュックを預けていざ海の方へ。10分ほどまっすぐ歩くと海岸に到着した。澄んだ青空にサラサラの白い砂が輝いている。海水浴場とはいえ泳いでいいエリアは限られており、ほとんどの人は足をつける程度だった。
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ひとりっぷなのでその辺の方に写真を撮ってもらう。韓国の人は写真を撮るのが上手。
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ビーチの近くには高層ビルがそびえ立っており、その高低差のギャップも面白い景色。
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BUSAN Xという展望台つきの建物も。屋上プールも発見。

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真夏なのでそりゃあ暑いですが30℃超えくらいなので日本よりマシです。風もあるので屋外活動できるレベルでした。

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このまま海を眺めて過ごすのもいいけれど屋外では熱中症になりそうだし、眺望のいいカフェが見当たらなかったので街中散策へ。つい収集してしまう面白日本料理屋。
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韓国で流行っているらしい生クリームドーナツ(トッベギ)の店「Knotted(노티드)」へ。前日に友人が教えてくれたので行ってみた。

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map.konest.com


ちょうど開店時間だったので並ばずに入店できた。帰りには満席だったので早めがいいですね。一番人気の生クリームドーナツとアメリカンを注文。なんか早割セット?効いて500円くらいでした。ナイフとフォークがついていたのでカトラリー使って格闘していると、隣のお姉さんが「カップを持って食べるのよ」と教えてくれた。なるほど…!クリームたっぷりでおいしかったです。
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どこ行こうかなぁ~と観光案内所のお姉さんに相談したら「ブルーラインパークが一押し!」とのことで行ってみた。2020年に観光列車がオープンしたことは知っていたのですが、あまり食指は動かなかったのでスルーするつもりでした。予約もいっぱいそうだったし。でもせっかくオススメしてくれたので行ってみよう。
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www.bluelinepark.com

行ってみるとやはり満席。予約した人も大勢並んでいて典型的な観光地渋滞を起こしていた。せっかく来たし列車とスカイカプセル?なるものの顔を拝んで帰ろう…と列の脇を進むと奥まで道が続いていた。お、乗車券代払わなくても見られるのね~と思ったら、なんじゃこりゃ!
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なんと可愛いレトロポップな列車と、空中を走るオモチャみたいなスカイカプセル!これが併走するのね、しかも海岸線を!え~実物可愛いじゃん、走っているところを見たいなぁとキョロキョロすると、駅の隣にカフェを発見。しかもルーフトップ席がある。特等席じゃん!

生スイカジュース500円(作り置きシロップとかじゃなく都度ジューサーで作っていて絶品だった)を注文して屋上へ。設置されていたパラソルを広げて、ジュースを飲みながらベンチで悠々とブルーライン鑑賞会を始めた。カフェのオーナーはよく分かっている…。

1時間近くいても全然飽きないし、写真や動画を撮りまくってしまった。自分がこんなに乗り物にハマるとは思わなかったし、動いている姿が本当にキュートなんですよ。

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下から見ても可愛いね。
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色んな車体があったけれど私の推しは青空に映える赤い子。
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2030万博誘致デザインも凝っていた。ちなみに25分の片道で3000円(1~2人)です。高っけぇ。エアコンついているんだろうか。たぶん乗ったら楽しいんだろうけれど眺めているだけで十分でした。乗車している人たちに手を振ったり、声をかけたり。
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桜木町駅の横浜エアキャビンは5分で1000円なので、ブルーラインの方が良心的か。海沿いを走る様子も絵になるし。しかしエアキャビンのワクワクしなさは何なのか…。
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海!街!高層ビル!可愛い乗り物!という全部盛り構図。列車やスカイカプセルの予約者はこちら側まで来ないので超空いていました。穴場でおすすめです。
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さてお昼にしますか。海雲台伝統市場を冷やかすも、観光地マーケット然としていたのと、複数人で食べる前提の料理が多かったのでスルー。冷麺が食べたいんだけど、マーケット近くの店はどこも満席で列ができていた。
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海雲台駅の山側に移動して散策。こちら側はあまり再開発されておらず昔ながらの街並みが広がる。あと何故か日本食屋が多い。
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うまいみせ、白飯におかずを載っけて丼で食べさせる店のようだった。看板メニューはハンバーグ?
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あの煙突はお風呂屋さんかな。海雲台温泉入るのも素敵…。
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銭湯は解体中でした。
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地図も見ずにフラフラ歩く。なんとなくこっちの方に素敵なものがありそうだ…という勘だけで。最近こういうフリーダム散歩をしていなかったので楽しい。

お寺がありました。尼僧さんに声をかけて拝観させていただく。日本の寺院の門は木製の質素な門が多いですが、韓国の寺院は中国の影響が色濃くカラフルな門が多い。
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散歩は満足したので駅の方へ戻ろうか。個人の雑貨屋やおしゃれなカフェがちらほら見えるが昼食を摂れる店は少ない。あっても外国料理ばかり。

雑貨屋が複合入居するレトロなアパート。ピンクのお布団が可愛い。

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駅そばに冷麺屋を発見し、これ幸いと入店。結構老舗っぽいのに空いている。看板メニューの冷麺を注文。
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う、うま!これイメージしていた韓国冷麺じゃないぞ。小麦麺が細くてプリプリだし、澄んだお出汁が力強く、載っかっている豚がウマイ。あたたかいお出汁スープも美味しい。
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調べると、これは「ミルミョン」という釜山名物で、要は釜山版冷麺らしい。一般的な冷麺はジャガイモやそば粉でできているが、ミルミョンは小麦麺。朝鮮戦争後、食糧不足のためアメリカからの援助物資である小麦粉で代用したのがルーツだとか。また牛肉ではなく豚肉を使うのも特徴。このお店はアクセントに細切りした梨が入っていて、スープを凍らせた氷入りなので最後までぬるくならず美味しくいただけた。

真夏に食べるミルミョン最高。冷麺界では一番好きだ。

お店はこちら。地元の方が多くいらしていた。ここでマンドゥつまみながらソジュ飲んで午後を過ごしたい衝動に駆られる。

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食後、さっきハマったブルーラインのスカイカプセルポストカードで日本宛の手紙を書いた。ブルーラインのピンバッジとステッカーも買ってしまった。デザインが可愛すぎるんだもん!韓国こういうグッズデザインに優れている。駅近くに郵便局があったので郵送。何日で届くかな?(後日談:約2週間かかりました)
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駅そばでポップアップ展示をしていたので寄った。無料でしばらくやっているみたい。
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釜山市や観光協会が主催なのか、釜山の新しいシティブランドを発信する展示だった。「Busan is good」をコンセプトに打ち出すそう。

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ここでもグッズに力が入っていた。つい欲しくなっちゃったが来週以降発売らしい。危ないところだった。

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そろそろ空港に行くかと駅に向かうが、フライト時間が変更になり早まるという知らせが届く。えっ、無理間に合わないって!

焦るとロクなことはなく、うっかり反対側の電車に乗ってしまった。これまで韓国で電車間違えたことないのに!しかも終点越えて車庫に入り、車内を清掃するおばちゃんにギョッとされた。気を取り直して到着時間を調べるも、どんなに急いでもフライトの数分前に空港着が最速。1時間半かかるもんね。

 

おっとーー、やらかした!

脈が早く打っているのが伝わる。呼吸が浅くなる。飛行機取り直せる?今日中に着ける?チェジュの友達との夕飯の待ち合わせに行けないかも。連絡しなきゃ。余計な思考が飛び交う。焦っているらしい。

こういう時は深呼吸。10秒かけてゆっくり吸い、少し止めて、10秒かけてゆっくり吐く。数回繰り返すと頭がスッキリした。焦って行動してもロクなことにならない。1分間心をととのえて、それから対策を講じた方が確実にうまくいく。

 

「おもしろくなってきたぞ」

まずはスカイスキャナーで振替られるフライトを確認する。ないとのこと。最速で明日の夜になってしまうようだ。なんとしても今夜のうちにチェジュ島に行きたい。

続いて、釜山空港のホームページをチェックして、釜山発チェジュ行きのフライト状況を見る。お、まだ結構飛んでいるみたいだ。早い時間順で各航空会社のホームページの空席状況を見る。英語サイトがあって本当に助かる。日本語サイトでは出てこない便も結構出ていることが分かった。

 

エアプサンは…売り切れ。大韓航空は…お!ある。ちょっと高いけれど候補イチ。同時刻発のジンエアーは…予約できる!しかも乗りたかったチェジュ航空と値段がほとんど変わらない。

となれば、ジンエアーのフライトを予約して、チェジュ航空の予約をキャンセルだ。チェックイン前ならチェジュ航空のキャンセルができて、しかも航空会社都合の時間変更として返金もされる。到着は当初より1時間以上遅れるが、夜までに着くなら問題ない。あ~~ほっとした。いざとなれば釜山からソウルに出て、ソウルから国内線に乗ることも考えたので、心から安堵した。

 

で、空港に着いた。ジンエアーのフライトに無事チェックインできた。やはり海外での飛行機は1時間半以上前に到着するようにしましょう…。海外旅に慣れてきた頃に陥りがちな失敗として、いい教訓になりました。LCC乗り過ごした方は、空港サイトをチェックして別の便があるか調べてみてください。乗り過ごさないに限りますが。

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時間ができたので、チェジュの友達たちへの手紙を書いた。せっかくできた時間は前向きに有効活用。Papagoアプリで翻訳を駆使して、一文字も読めないハングルを「描く」。

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夕焼けフライトだったので夕陽を眺めて過ごせた。窓際のベスト席でラッキーでした。
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チェジュ空港着。夕飯を一緒する予定の女友達に「着いたよ!」と連絡し、レストランに向かうためタクシー乗り場へ歩く。すると彼女から「私の友達も同じ飛行機だったから、あなたをピックアップしてもらうわ」とメッセージが。え!?誰かが来る?
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「今日のあなたの写真も送って」とのことで、全身がわかる写真を送った。「出入り口付近にいるこの子を探して」と友達の友達の写真が送られてきた。飲み会で酔っ払って踊っている写真だった。分かるか!

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異国でマッチングアプリの初回面会みたいなムーブをしているのウケる。(マッチングアプリしたことないですが、よく駅前でキョロキョロしている人たちもこういうことしてるんですよね?)

 

出入り口でキョロキョロしていると、同じように人を探している女性と目が合い、お互いに「もしかしてー?」とスマホを見せ合い、「はじめまして!」とハイタッチ。英語が上手い方で助かった。
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すぐに彼女のボーイフレンドが車で迎えに来てくれ、目的地のレストランまで送ってくれた。彼女たちはそこに行くわけではないので、本当にただの好意である。感謝しかない。

彼女はチェジュに住んでいるが、仕事の都合で本土に単身赴任しており、長期休暇のたびに帰ってくるそうだ。「都会は人が多くて疲れちゃう。チェジュに帰りたくて毎晩泣いているわ」と言った。

「今夜は一緒に行けないけれど、よかったら明日の夜ご飯を食べたいね。予定が決まったら連絡して。お互いチェジュを楽しみましょう」レストランで私を下ろし、車は来た道を戻っていった。
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友人たちがレストランの入り口で待ち構えていて、遅刻した私を笑顔で迎えてくれた。今夜はサムギョプサルパーティーだ。昔日本に住んだことのある友達を連れてきてくれていて、少し日本語で会話することができた。友達の輪が広がるのが嬉しい。

「あなたが日本語しゃべっているのを初めて聞いた。日本語ができるって話、信じてなかったw」と言われていた。


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いつも「JEJU」Tシャツを着ている彼。前に行ったソウルのバーで痛飲している写真を見せてくれた。いい顔。
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食べて、飲んで、みんなでいつものバーへ移動した。行きの八百屋で買ったフルーツを持ち込み、ビールやワインを飲む。
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ここはミュージックバーなので音楽のリクエストができる。日本の音楽はチェジュでも人気なので、こんなのもいいよ!と布教しまくる。酔っ払うといつも同じような曲ばっか聞きたくなるね。真夏のチェジュ島で聴く「若者のすべて」エモかった。
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日本語ができる彼女は、14年前にワーホリで吉祥寺に住んだことがあって、岩井俊二の映画と村上春樹が好きで、キリンジとEGO-WRAPPINがお気に入りなのだという。

マジか!日本でもそれらを語れる人少ないよ、とお互いはしゃぐ。チェジュで「海辺のカフカ」を語る日が来るとは思わなかった。「ドライブ・マイ・カー」は絶対観て、とプッシュした。素敵な音楽が流れるバーで、美味しいお酒を飲みながら気の合う人たちと語る時間のなんと豊かなことか。夜が更けていく。時間が止まればいいのに。
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この晩、カカオトークに「JEJU CRAZY GIRLS」というグループチャットができました。ワインは2本空きました。
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続く!

素敵な本を読めたらその日はオールオッケー!

「ごきげんは自分でつくるもの」。私の朝はこの魔法の言葉で始まる。

ずっと聴いているラジオ・J-WAVEの朝の声で知られる別所哲也さんの名言だ。平日毎朝の「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」のシメの言葉に使われていて、雨の日も風の日も、別所さんは明るいテンションでリスナーをブランニューデイへと送り出してくれる。

「Have a great day and don't forget your smile!」

 

たいてい頭がゴキゲンなお気楽人間ですが、たまにはヤなこともあります。

せっかくの週末が仕事に終わってしまった日や、がんばってるのに仕事相手から無下なメールを送りつけられた時や、経費精算や勤務表や押印申請など事務仕事が溜まっているのにPC前に座る気が沸かない時とか。(仕事ばっかやな…)

家にいるときは、1時間走ったり踊ったりすればスッキリするし、イライラモヤモヤは汗とともに流れてバイバイできちゃうけれど、仕事帰りの出先は踊れないから困ってしまう。そういう時は小説の世界に旅に出ます。エッセイでも何でもいいけれど、上質な文章こそ一番の薬。レッツ・現実逃避!

映画も大好きだけど、映画館に足を運ぶ元気や時間がない時もあるし、電車の中でパッと切り替えたいのだ。そういうときは、ぜひ本を。私はおでかけ鞄に文庫本が最低1冊入っていないと不安になる。読み終わりそうな時は新しい1冊も必要。タフな現実からの逃げ場をくれ。

 

今年、個人的には新作映画が不作。旧作は名画座で名画を見まくっており、2023年はそれを超える新作には出会えていないなぁ。

というわけで備忘録で面白かった本を並べておきます。この10倍くらい読んでいますがぼんやりとしか覚えていないものも多いので、良かったものしか挙げません。

 

すばらしかった!読み終わるが惜しいくらい、この世界にはまりました。いわゆる時代小説ですが、読みやすいし言葉遣いが洒落ていて粋。初めて読む作家さんでしたが、思わず過去作品をポチって読んでいます。

これまた面白い。でも「木挽町」の方が構成とオチが鮮やか。

 

憧れの女性・高峰秀子さまの書く文章が好きです。品がある。小学校しか出ていない人ですが、教養とはこういうことを言うんですね。物心ついてから映画女優としての仕事をしてきた彼女ならではの、仕事への向き合い方は含蓄がある。プロってこういうことを言うんですね。生涯、最初で最後に挑戦したシナリオ(脚本)も圧巻でした。

 

直木賞を受賞した「しろがねの葉」を読む前に、過去作も読みたいと思いこちらを。ストリップの踊り子の新井さんとの共著は読んだことがあり(「わるいたべもの」こちらも面白い)、新井さんは知人なので、勝手に千早さんにも親近感を湧いていたのですが、いやいやすごい小説家じゃないですか!尾崎世界観さんとの共著「犬も食わない」もヒリヒリ楽しめました。

 

今のところ一番好きなのはこちら。著者初の恋愛小説とされています。ラスト泣きました。翌朝目が腫れてどうしようかと思った。「しろがねの葉」読むのが楽しみ。

 

面白い小説や本に出会ったら、その作者の過去作も全部読む悪癖があります。熱しやすい。中島らも東直己金原ひとみ綿矢りさ瀬戸内晴美谷崎潤一郎…。

センセイの鞄」がとても良かったので、川上弘美さんの過去作も大体読んだんですが、そこまで好きな世界観ではなかった。電車で読んでてのめり込みきれず、ほかの本に浮気をして中途半端なまま何冊も読みさしになってしまった。(家に帰って残り数十ページだけを何冊も読むはめになる)

「うおー!次の駅で降りなきゃなのに、今読むのをやめたくない!」とか、夢中になって乗り過ごしてしまうくらいの小説を求めているわけです。

 

自宅の「読む本の在庫」置き場には、常に何冊か転がしておくのが至上のシアワセです。時間の無い出かけ際に、さっと1冊持って出ればいいので。しかし、村上春樹さんの新刊「街とその不確かな壁」がドーンと2ヶ月鎮座してしまっており、攻略機会を今か今かを伺っています。うーん、この1冊だけ持って長旅にでも行こうか。読書好きには、いつ、どこで読むかというのも大事なポイントですよね。

すべてがすべて自分向けではないけれど、どんな一日も充実してしまうかもしれない魔法のアイテム、本。ずーっと読み続けていても読みたい本が切れることはないし、何十年経っても飽きることがありません。

ありがとう本、ありがとう作者の誰か、ありがとう出版社、ありがとう本屋。月に1~2度、リアル本屋さんに行って4~5冊吟味して値段を気にせずレジに持って行き、肩の重みを感じながらホクホク帰る時間が、何より貴い。明日は何を読もうかなぁ。

映画「TAR ター」を観たり、ビール日和を迎えたり

ツラかった。この世に救いはないのかと夜空を仰いだ。風を切ってチャリで駆け抜ける横浜・親不孝通りのネオンが目に滲みた。

映画「TAR ター」をシネマ・ジャック&ベティで観終えた直後の感想です。映画「怪物」も後味ニガかった(若干のエグみもあった)けれど、「TAR」は殴られたようなエンディングでブツっと視界がブラックアウトした後、現実に返る帰路でじわじわニガみが広がってきた。誰かケイト様を幸せにしてくれ。

gaga.ne.jp

TARのあらすじはこんな感じ。

いまだ女性指揮者は珍しいクラシック界にあって、リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は別格だった。米国の5大オーケストラでタクトを振ったのち、ベルリン・フィル初の女性首席指揮者に就任。ちかぢかマーラー交響曲第5番を録音し、マーラーのBOXを発売する予定だ。作曲家としても大活躍で、エミー賞グラミー賞トニー賞アカデミー賞を全制覇。自伝の刊行も控えている。のみならず、若手女性指揮者を支援する財団を設立し、ジュリアード音楽院でも教鞭を執るなど、後進の育成でも評価が高い。かくも飛ぶ鳥を落とす勢いのターだったが、ほんのちょっとしたボタンの掛け違いから、転落が始まる──。

TARは権力とハラスメントの問題を描いている。しかし終始ター目線なので、彼女のどこがいけなかったのか、なぜこのような目に遭わないといけないのか、視聴者は終盤まで理解ができない。それこそが、ハラスメントをする側の視点なのかもしれない。

VRハラスメント」とでも言ってみようか。

権力こわい。権力なんか、手にするもんじゃない!

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ジャック&ベティの壁がター一色になっていた。すごい。ポスターこんなバリエーションがあるんだ。どれも素敵。

 

それにしても、語り尽くされた問題ではあるが、個人の才覚と社会的道徳感は一致させないといけないのか。あるいは作品の素晴らしさと作者の倫理観が不一致の場合の処し方について。マネージャー的第三者やよほどできた家族がフォローし続けることが必要なんだろうなぁ、現代においては。

不祥事を起こした俳優が出演した作品はお蔵入りしないといけないのか?世の中を騒がせた人物は一定期間干されなきゃならないのか?個人の声が大きく拡散される社会だからこそ、作品や才能の重さが疎かになっていないか。うーん、たぶん私は芸術至上主義に偏っているんだろうな。

 

モヤモヤしたままでは締まらないので、伊勢佐木町つながりで、最近の良い思い出。

梅雨明け前なのに30℃超えの日が続いて、昼間は一歩も家から出たくないこの頃ですが、さすがに土日とも家に籠もりきりだと勿体ない気がしてくる。そこまで湿度が高くない、カラッとした空気の夕方。ビールが飲みたくなった。

お酒がめっぽう好きな人間に思われがちですが、一人では基本飲まないし、実は人に誘われない限り飲みに出かけることは少ないです。あったかいお茶や白湯が好きなので、家では映画見ながら湯気の立つホカホカしたノンアルH2Oを飲み続けています。(たとえ観ているのがホラーだとしても)

そんな私ですが、たまに自分から無性に飲みたくなる日があります。最近は、年に何日もないかもしれない。そんな日があった。

夕方、習っている踊りの帰り道。全身汗だくになるくらい1時間激しく踊った後、ミント入りの汗拭きシートで全身を拭い、新しいTシャツに着替えて、足をガクガクさせながら駅に向かった。電車を待つホームで、いい風が吹いた。微温い風にさぁっと全身をなでられて、汗拭きシートのミント効果ですぅーっと涼しくなった。その時、「あぁビールが飲みたい」と思えた。

今日は絶対ビールが美味しいぞ。エビスとかサッポロじゃなく、アサヒでもなく、オリオンのようにさっぱりと薄味のもの…いや、東南アジアのビールの気分だ。チャーンだ、絶対チャーン飲むぞ。

 

たまらず、友達にメッセージを送った。

「きょう、ビール飲みたくない?」

すぐ返ってきた返事はYES。1時間半後に集合することになった。

 

帰ってお風呂に入って汗を流し、さらにビール・コンディションを高めた。汗をかけばかくほど、ビールを美味しく感じる。これは真実です。(健康には悪いかもしれないけれど。ちゃんと水分補給はしております)

 

行ったのは、真金町のタイ料理居酒屋「ソムタム」。ラブホ街が裏にあって、横浜橋商店街の近くにある横浜・ド・ローカルな店である。

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取るものも取りあえず、チャーンをオーダー。瓶もグラスもよく冷えている。

コポコポ…カチン、ごくり、ごくごく。

 

 

…消えた!?

今グラスに入れたビールが蒸発したぞ!だめだ、入れても入れても蒸発してしまう!おねいさん、もう1本チャーンください!
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そんな調子で3本を秒殺し、その後も欲望のままチャーンだけを飲みまくりました。


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何を食べても美味しい。メニューがとにかく多く、1皿もボリューミーなので3人以上で来ることを推奨する。店名になっているソムタムも色んな種類があって選びきれない。結構辛みも本格派なので、お子さんがいる場合は手羽先(はちみつタレ)がおすすめ。

これまでタイ料理はJ's Store一択だったけれど、これからはソムタムに通っちゃうなぁ。かなりローカルなメニューに、絶妙に日本人好みの味付け。

 

友達と2軒目に。この近くのバーといえば阪東橋の「アポロ」でしょう。

横浜にアポロあり。この一帯では一番古い店と聞いています。風俗街ど真ん中、右も左もピンクなお店ばかりの通り沿いなので、なかなか近寄りがたいかもしれないエリアです。1階にメンズ・リラクゼーション「アロマ倶楽部 カサブランカ」があり、その2階にアポロがあります。勇気を振り絞って階段を上ってみよう。80代のマスター・チャンさんが優しく出迎えてくれます。ちなみに隣の店は店舗型ヘルス「クラブFG」です。


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ウイスキーソーダ割り(濃いめ)を飲みながら、マスターの話を聞くのが楽しい。100円3曲の現役ジュークボックスで名曲をかけて遊んでみてもヨシ。

 

あ、全然関係ないですが髪をバッサリ切りました。乾かすのが早くなり、便利です!

また韓国に行こう②エドワード・ホッパーに会いにソウル編

後半のソウル編です。前半はこちら。

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チェジュからソウルに入り、いつも通りノープランです。お買い物してもいいけれどこれといって欲しいものはないし、目的の展示は明日万全の状態で観たいので、午後はまったり過ごすことに決めた。

シーシャでも吸いに行くか、と仁寺洞へ。そういやキムチミュージアムに行ったことなかったので寄ってみようか。
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開館何周年かの記念で入館料無料だった。ラッキー。キムチの展示でどんな内容なのかしら。おお、エントランスからの導入凝ってるね。基本は韓国語のみで、英語にちょっと日本語がある感じ。観光客向けに頑張ってるのかしら。
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と思ったらこの後の展示は盛り上がりどころなく…。

聞こえる、「キムチだけでミュージアム作るのは無謀だって!」の声が。キムチ自体の歴史は長いけど、ニンニクや唐辛子を使うキムチが普及したのは18世紀頃だもんね。食品メーカーの企業ミュージアムでもなさそうなので深掘りが難しそうなテーマな気がする。

普通に食いたい、いろんな野菜のキムチ。
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キムチづくり体験ができるコーナー(要予約)もあった。こういうのはいいね。ま、無料だから文句は言うまい。
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さてシーシャへ。透けカーテンが洒落ていていい感じ。明るいうちからチルっちゃちましょう。
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空と仁寺洞の大通りを行きかう人たちを眺めながら煙をくゆらせる。靴脱いでぼぅっと、甘い果実のフレーバー香る白煙だけが動きのある空間。
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しばらくすると暗くなって、街の灯りがともり始めた。日本を発ってからずっと動き回っていたし、休暇だというのに忙しなかったね。中日でこういう時間を設けるのは大事。

海外でシーシャはドバイ以来。料金体系は同じくらいだけど、お店のレベルは日本>韓国>ドバイだな。中東はシーシャ本場のはずだけど、フレーバーの種類の多さと炭や器具類の管理の丁寧さは日本がダントツでした。

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夕飯どうしよ~とチェジュの友達にお勧めを聞いたら徒歩で行ける距離だったので向かいます。食べログ的なネットの評判よりも生成系AIの適当なアンサーよりも、胃が合う友のレコメンド。

土曜の夜は繁華街が賑やか。オープンテラスの席もいっぱいで楽しそう。
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来ました。イイダコを辛く炒めた料理。貝のスープ、チヂミとのセットがあったので頼んでみた。

「辛さはどうする?マイルドとオリジナル、激辛があるよ。結構辛いからマイルドを頼む人が多いけど、開店以来の味のオリジナルも人気。でも辛いよ」とのことなので、迷ってオリジナルに挑戦。「マジで!?」と驚かれたけど、えっ人気なんでしょ。

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まずは一口。あ、全然甘くない。韓国料理って真っ赤な料理で一見辛そうと思っても甘辛味が多いんだよね。これはしっかり唐辛子だね。辛さは、うん、大丈夫なレベルかな…と思ったら、後から来るやつ!だいぶ辛い!辛さはかなり得意な私でもギリギリな!ビールはアカン!

ということでソジュ。ソジュの甘さとタコの辛さがベストマッチ。辛いの苦手な人には勧められないけれど、韓国らしい料理が食べられて大満足。ほかの料理もおいしかったです。
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歩いて明洞へ。半年前より明らかに外国人が増えている。空きテナントも大分戻ってきたんじゃないかな。
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まだ夜も更けてきたばかりだし、バー探し。ソウルではあまり飲んだことないのでバー詳しくないです。目についたところから入って行こう。
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ドラマに出てきそうなお店は内装がおしゃん。外国人も多く、ホテルバーよりもずっとカジュアルに入れる、でもしっかり高級感はある店でした。デート向き。酒の種類はそんなない。
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移動してミクソロジー系のフルーツカクテル専門バーへ。入口が一見分からないようになっている遊び心ある店。冷蔵庫を開けて入ります。ここかなり良かった!
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内装好みだわ。このプリズム風照明ほしいんですがどこで買えるでしょう。
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注文は、店内の公衆電話を使って地階のカウンターへ。
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電話用のコインは横に置いてあり自由に使っていい仕組みでした。謎の凝りよう。注文は英語でも大丈夫です。
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メニュー読んでも味が想像つかないのでフィーリングで頼んだら美味しかった。ドライフルーツがお通しなのもうれしい。

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ドライアイス入りの升にグラスが載ったカクテル。これもおいしい。Bar Prima思い出しちゃう。
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良い夜になりました。バーで美味しいお酒を飲めたら、何もドラマチックなことがなくてもその日は最高の一日ということで。

出口の扉に良いこと書いてあった。「すべての出口はどこかへの入口」その通りね。

「すべての道はローマに通ず」も好きだけど「EXITはENTRYでもある」って考えもポジティブでいいな。終わりは始まり。
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翌日、帰りのフライトは早朝便なのでこの日が実質最終日。悔いのないよう。いざ。
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朝ごはんは蒸し餃子でした。腹が減っては戦はできぬ。
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来た!ソウル市美術館。HP見たときは予約制じゃないとありましたが、受付に行ったら時間制の入場になってた。入口に結構な人数の若者が待ち合わせでたむろしていたのでびっくりした。10時開館に行って10時の回取れたので問題ないけどね。もっと混んできたら予約取りづらいかも。

sema.seoul.go.kr


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音声ガイドの貸し出しがあって、韓国語だけじゃなく英語もあったので借りました。500円。字幕付きというありがたい仕様。絵を観ながらヒアリングに集中するの疲れるし。

館内は広いので混んでなさそうに見えますが展示室は結構な人。絵の前には常に1列出来ていて、間近で観るにはちょっと並ぶかも。こちとらこの展示のために渡韓したので時間を気にせず過ごしますが。
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エドワード・ホッパーのコレクションを所蔵するホイットニー美術館とソウル市美術館の共催展。つまり日本は巡回しない(はず)。秋に東京で始まるデイヴィッド・ホックニー展もソウルからスタートだし、アジアのアートの中心地はソウルと香港になりつつあることを肌で感じる今日この頃…。

さて、企画展の副題は「都市から海岸まで」。このタイトルにどんな意味が込められているのか、韓国初のホッパーの個展でどのような展示構成になっているのか、知りたいことだらけではやる気持ちを抑えて、企画展示室へGO!この瞬間がいちばん滾るぜ!

 

は~~~~!!!最高!!!!!!

展示室内の写真は撮れなかったので画面で伝えることができず残念ですが、目に焼き付けることに集中できてよかった。

想像以上に展示品数多く、音声ガイドも1時間たっぷり(25項目くらいあった)で幸せすぎた。主催者メッセージがわかりやすくてよかったので翻訳。

2020年、イギリスの日刊紙ガーディアンは、「『今や我々は皆、エドワード・ホッパーの絵画だ:彼はコロナウイルス時代の芸術家なのか?』」というタイトルの記事を掲載した。1900 年代初頭のアメリカ人アーティスト、ホッパーは、孤立、断絶、疎外感が蔓延している今日、なぜ再検討されているのか?(中略)

彼の絵は風景を超えて内省的な自画像となっており、窓越しの誰かのシルエットも、高層ビルと対照的な低い建物の屋上も、線路に沈む夕日も、どれも私たちに似ている。

本展覧会では、作品の中にその痕跡が捉えられたパリ、ニューヨーク、ニューイングランド北部、ケープコッドに焦点を当てて、アーティストの65年の絵画キャリアを振り返る。彼はニューヨークの自宅と田舎、海岸沿いのさまざまな保養地の間を定期的に行き来しており、これらの場所はホッパーの芸術的視野を広げる上で不可欠な役割を果たした。

韓国語で「途中」を意味する展覧会タイトルは、ホッパーが自らのスタイルを確立してきた旅、それぞれの道がつながり、自分だけの軌跡となること、そしてホッパーと出会う瞬間を想起させるという意味が込められている。 この展覧会では、ホッパーの生涯にわたる270点を8つのセクションに分けて展示し、芸術家の生涯と芸術世界を忠実に概観する。この展覧会がエドワード・ホッパーについての理解を広げ、さまざまな意味で疲れている私たちに彼の作品が共感と慰めを与えることを願っています。

ホッパーの作品は現代人の孤独を描いていると思われがちだが、彼が歩んだ道は多様で奥深いもので、各地への旅や演劇、音楽、自然、愛妻との豊かな時間の積み重ねによって生み出されたものだったことが、展示を通じて示された。

「ナイトホークス」に代表される都市の片隅を描いた作品も大好きだけれど、今回初めて観た、美しく荒々しい自然を描いた作品も素晴らしいと思った。ホッパーの知らない一面を知ることができて本当に良かったし、展示をまとめあげるキュレーション力に感動したね。

「私にとって最も重要なことは、継続するという感覚です。旅をしていると、物事がいかに美しいかがわかります」

それな~~!今実感してるよ!

 

水彩の作品など、一部コーナーは撮影できたのでチラリと。モデルは奥さんです。

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ホッパーの絵に入り込める今風コンテンツもあったよ。f:id:sakariba:20230504112838j:image

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場内は若い男女が多くて、休日の朝っぱらから美術館に行く人が多いと関係なくても嬉しいね。韓国でアートが人気っての納得。
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ホッパーが演劇や舞台好きということも初めて知った。チケットを美しく残している。
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イラストレーター時代の作品も初めて観た。あ、ミュージアムグッズもオリジナルいっぱいあってめっちゃ良かったです。
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数年前、コロナ前(というか直前)にニューヨークへ行った。その頃色々あって疲れ果てていて、すべてを投げ出してしまいたい気持ちで日本から逃亡した。もう何もしたくないけれど、どうせなら好きなものを観てからこの先の進退を考えたいと思って、ホイットニー美術館を目指した。ホッパーの絵が常設展示されていたからだ。「ナイトホークス」のあるシカゴ美術館じゃなくてニューヨークなのは単純に行きたかっただけ。

ホイットニー美術館で気に入った「午前7時」という作品。静かな絵なのに人の気配がして、構図といいトリミングといい色調といい全部が見どころ。1時間くらいこの絵の前にたたずんだ。ソウル市美術館で再開した時は思わず涙がこぼれた。生きてこの絵にもう一度会えたことに感謝したし、頑張ってよかったと思う。

ニューヨークで念願のホッパーを観て、帰国後ロックダウンが始まった。その後のニューヨークはパニックとなっていてどこの美術館もしばらく閉館していたので、ほんとにギリギリセーフだった。こういう悪運には滅法強い。

「もしかしたら数年、海外に行けないかもなぁ」
そんな予感は現実のものとなり、海外どころか国内も行きづらい時期が続いた。それでもあんまり…というか大して辛くなかったのは、インドアが性に合っていたことと、土壇場でホッパーを観に行けたからだろう。仕事とは言え2022年頭にはドバイに行けたので、意外と2年で海外復帰できたのは意外でしたが。

 

ま、そんなわけで、私のコロナ禍はエドワード・ホッパーとともに始まった。そしてコロナが第五類になってマスク義務もなくなった今、やっぱり私はエドワード・ホッパーを観てコロナ禍を終えようとしている(たぶん)。ただの偶然なのか、ホッパーに縁があるのかはわからないけれど、出口は何かへの入口、そういうことなんだろう。何かが始まることを期待して。そして待ってろシカゴ美術館。行こうと思えばいつでも行けるけど、ふさわしい時に訪れるよ。ライフイズビューティフル。


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ハラヘッタ。ホテルに荷物を置きがてら遅めのお昼ご飯。5年ぶり?の平壌冷麺を食べに。
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冷麺には韓国式と北朝鮮式の2種類があって、日本に伝来したのは具材たっぷり色とりどりの韓国式。でもルーツはセピア色の地味な北朝鮮式冷麺らしい。モソモソした蕎麦粉麺に薄~~い牛骨出汁。味なら韓国式のほうがおいしいと思うけど、ごくたまに食べたくなる味。北朝鮮の暮らしの厳しさを疑似体験できる味。
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午後はホックニー展観ようかと思っていたが、ホッパーに満足しきっちゃったし、どうせ日本に来るしいいかと。せっかく時間があるので、絶対に来るつもりのなかったロッテワールドへ。安いチケットが売られていたので。
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ロッテ財閥による遊園地。空いてるように見えますが結構混んでました。コスプレ制服着た男女のつがいが大量にいた。
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シンデレラ城風の建物は入れません。
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絶叫マシン!フリーフォール系のこれが怖そうだな~と並んで待つ間、乗客のリアクションで心の準備をしようと思ったら、みんな降りるとき無言でやんの。あり?つまんない系?とタカをくくったらマジで怖かった。落ち始める瞬間、超高い上空でギャーと叫び、地上に戻ってくるころには放心状態になる。だからみんな真顔で降りてたのね。ハマって連続して乗った。
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昔は絶叫系を連続して乗ってもヘッチャラだったのに1時間遊んだだけで疲れた。普段出ないアドレナリンを出すから?これが加齢か。

アトラクションは一旦止めてロッテワールド内の民俗博物館に行った。テーマパーク内に博物館があるのが韓国らしい。

www.konest.com


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館内はかなり広く、ミニチュアフロアまであった。古墳を元に再現した模型やジオラマなどで遥か昔から近代までをリアルに覗くことができる。ロッテの御曹司がジオラマ好きなのか?引くくらい気合の入った博物館でびっくりした。
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王の政務および生活の場として用いられた景福宮での国王即位式は大勢の臣下がずらりと並び、圧巻のスケール。お見それしました。
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ロッテマートで買い物するかと思ったら休みでした。韓国では第二、第四日曜日が大型マートの定休日なのを忘れていた。観光客が忘れがちなやつ。f:id:sakariba:20230504113431j:image

じゃ、マッコリ飲みに行こう。気になっていた店に入ったら大正解でした。クラフトマッコリが大量にあって選びきれない。
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これが特に気に入りました。テイクアウトもできるとのことでお土産に持ち帰り。
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メニューはこちら。英語があって助かる。ドリンクはすべてクラフトマッコリ。説明文もクスリと笑えるものばかり。
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ソウル行くときはマストだな。何人かで来て飲み比べしたいぜ。
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焼肉食べ忘れていたのでカルビ納め。
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うーん、やはり韓国は食い倒れの国。どこで何食べてもおいしい。
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ホテルに戻る前、深夜もやってる東大門のファッション卸売市場をパトロール。可愛い服ばかりなんだけど、ちょっと若い女子向けなのよね。肩出しやヘソ出しが似合わなくなってきて悲しい。ゴテゴテしたモードよりもシンプルなファッションばかり似合うようになってきた。これが加齢。
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おやすみソウル。
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早朝、東大門の東横イン前発の高速バスで仁川空港へ。帰り道はバスが楽なので東横インがありがたいのだ。帰路も楽々チェックインでした。

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まだ居たい気持ちを我慢して帰国。おセンチになったのも束の間、爆睡して復活した。
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なんか早々に再訪する気もするけれど、いったんバイバイ。出会った皆様、ありがとうございました。