盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

日ノ出町に書き残したままのラブレター

私の住む街は、その最寄り駅の名の通り日の沈むことを知らない、昼夜問わず薄明るい街である。私は、日ノ出町・黄金町・曙町・福富町・蓬莱町・長者町末広町・万代町・不老町・寿町など、縁起の良い町名に囲まれて暮らしている。

 

とある緊急事態宣言下の零時過ぎ、横浜駅から京急線でほんの数分。傷んだ長い金髪とアニマル柄のトップス、短いスカートを身に着けた若い女性と、今にもお尻が見えそうなワンピースを着た女性が慌ただしげにホームに降り立った。黒いウレタンマスクから鼻を覗かせて、少し脂浮きした化粧を気にしながら改札へ向かう。高いヒールは頼りなさげで、ところどころキズが付いている。けれど足取りは確かで、彼女たちは福富町方面に迷わず向かう。

横浜駅西口の居酒屋で飲んだその足で、朝まで営業しているクラブに行くのだろうか。音楽を楽しむクラブなのか、異性との会話を楽しむクラブなのかは分からない。私はどちらも行ったことはないけれど、その存在は地元人に有名だ。経営者は日本人じゃないだとか、現金が飛び交っているだとか、たまに警察が踏み込むだとか。

 

私の通う婦人科では、朝っぱらから派手な化粧とドレッシーな恰好をした女性たちが集う。零れそうな目玉のチワワを抱えた女性、日本語話者ではなさそうな女性たちを、ムームーのようなユニフォームを着た看護師たちがさばいていく。

性風俗業に従事する女性たちが、STD検査(性病検査)をしに来るクリニックでもあるらしい。NN(「ノースキン・中出し」の略)、即尺(「即フェラチオ」の略)、即即(「即尺即ベッド」の略)といったワードが飛び交う。

常備薬の漢方を処方してもらいにこのクリニックへ通いだして数か月。非日本語話者も安心して行ける婦人科として在日外国人に知られているらしく、毎回1人は外国人がスマホ片手に待合室にいる。ここもドラマがある空間だ。

 

黄金町に向かう大岡川沿いの暗がりでは、街角ごとに人影が立っている。冬場はスキニージーンズで、春から秋はミニスカートで、同じ顔触れが並ぶ。よく誰かと電話をしており、日本語ではない単語が漏れ聞こえる。

看板のない店舗の中では、歌謡曲のカラオケの大音量が響き渡る。女性禁制のピンク映画館に向かう男たち。女装した男性たちの野外会合。酒類提供禁止のご時世に湯吞みで酒を提供する料理屋。生活保護費受給日にはパチンコ屋の前に行列ができる。

ストリップ劇場、場外馬券売り場、ボートレース、パチンコ、ホストクラブ、あらゆるジャンルの風俗店・・・よくぞここまで集結した。飲む・打つ・買うがすべてそろっている。なんでもござれ。改めて、人間の業をまるごと肯定してくれるような街だなと思う。

なんでこの街に住み始めたんだっけ、なんでこの街を好きになったんだっけ。

 

私にこの街を教えてくれた師匠みたいな人がいた。このブログを始める少し前、その人は月に1度くらい横浜や神奈川県内を案内してくれた。その当時私は上野に住んでいて、ゆらり東海道線を揺られて横浜周辺に通った。数年かけて一緒に各所を歩いた。やがて季節をいくつも越えた。何十冊もの本と、何十作もの映画と、何十枚ものCDを共有した。2020年頭にその旅路は唐突に終わり、何の因果かその後私は横浜に越してきて、これから中長期的に住み着こうとしている。

 

酒場の「味珍」、「第一亭」、「山荘」、「クライスラー」、「キネマ」、中華街の「徳記」、「ウインドジャマー」、寿町の居酒屋「浜港」、石川町の喫茶店「モデル」、イセザキモール横浜橋商店街等、ぜんぶ彼が教えてくれた場所だ。今は1人でも行きつけるようになった。

「観光向けの店じゃないし、お嬢ちゃんには退屈かもしれないけれど」そう言いつつ、とっておきの良い店ばかり紹介してくれたことは今でも感謝している。

横浜を好きになったのは、その人が見つめる横浜の街が好きだったからなのかもしれない。もうその人とは会うことはできないけれど、いつか横浜の道端ですれ違わないかなぁ、とほんのちょっと願っている。あるいは上記の店のカウンターで。話したいことがたくさんあるんだ。無理かな。

 

大岡川の中べりで、水面に映ったラブホテルのネオンがきれいに見えるスポットを見つけました」

クライスラーで、はじめて一人でジュークボックスを動かしました」

「今年もイセザキモールにしめ縄が飾られました」

「『こんな繫華街、どんな人が住んでいるんだろう』と話していた街で暮らし始めました」

「私も立派なハマっこに育ち、観光スポットを案内できるくらいになりました。あなたのせいで黄金町や寿町が多いけれど」

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あの人の面影を忘れないために横浜に住んでいるのかもしれない。街や人から今も気配を感じる。それでも少しずつ忘れていってしまうのが寂しい。

お墓の場所は知らないので、心の中でセブン・スター(現在はメビウス)に火をつけて供える。酒場のカウンターで、ちびたグラスに注ぎ合う赤星が世界一美味しかった。

冬になるたび思い出す。毎年大晦日から元日は縁起の良い町名を歩き、「横浜は縁起の良い町名こそディープですよねぇ」と言いながら横浜橋商店街で買ったお惣菜をつまみに一杯やっていたことを。ある年の元旦は初日の出を見に行って、そのまま伊勢山で初詣もしたっけ。たまに彼が撮った写真を見返すんだけど、私はいつも楽しそうだし、笑っちゃうくらい飲んだくれている。

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港町って大好き。本来出会うはずのない人間たちが出会い、別れ、再開することができる場所だから。人間交差点。あるいは姿を変えて、別の身体、別の心を持って。影響を与え合い、遺し合う。バタフライエフェクト。横浜という街には、そういう魔力があるって信じている。

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年末。今年が急速に畳まれていく。否が応でも来た道を振り返ってしまう季節。宇多田ヒカルの「真夏の通り雨」を、雪がちらつく真冬に聴きながら、記憶の中の横浜で一人佇んでいる。よいお年をお迎えください。

カレーディナーという選択肢~関内「スパイスドランカーやぶや」で脳内トリップ

カレーの街ってどこだろう。

今までは「神保町じゃない?ボンディ、エチオピアまんてん、カーマ 、共栄堂 、マンダラ、ガヴィアル…数歩歩けばカレー屋に出くわす街だよ、神保町は。もしくは御徒町南インドカレーのメッカだよね。アーンドラ・キッチンやヴェヌスは一度行く価値があるから」と考えていた。

しかしながら、横浜に越してきたら「横浜も結構カレーの街じゃない?」と思うようになった。カレー選手権自由形、個性派揃いのパンチの効いた店が多い。間借りカレーのレベルもやたらと高い。グルメ雑誌「dancyu」2021年8月号「スパイスとカレー。」にも、横浜のカレー屋が何店か紹介されていた。

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関内でカレーと言えば「丸祇羅 (マルマサラ)」。美しすぎるプレートもさることながら、国籍・季節不明の店内も素敵。ビールも飲みたいけどいつも混んでいるので遠慮がち。休日は避けて平日がおすすめ。
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桜木町の間借りカレー「スパイス食堂」。木曜日の昼しか営業していないので狙って行って。食べると元気になるのでお疲れさまにぴったりです。
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桜木町の間借りカレー「ムムム」。木曜と金曜だけだっけな。どうやって作っているのかまるで分らない複雑な味わいが魅力。

 

カレーを嫌いな日本人ってほとんどいないと思うけれど、どうしても「ランチ」のイメージが強いのではないだろーか。上3店もすべてランチだし。サラリーマンにとっては忙しいビジネスアワーを縫って掻っ込む補給食。ご家庭にとっては冷蔵庫の余りものを全部ぶち込んで数食稼げる国民食

そういう人には是非!「カレーディナー」という選択肢を持ってほしい。カレー屋のコース料理、あなどるべからず。食いしん坊の彼氏彼女(もしくはそれ未満)との非日常デートに絶対おすすめです。距離を縮めるための焼肉や焼き鳥のカードは使い切ったし、気取ってフレンチって気分じゃないし、和食はちょっと堅苦しい…そんな時はカレーです!「インド料理でフルコース」どんなものが出てくるか想像つかないでしょ?そのドキドキ感、食べた時のワクワク感、まるで海外旅行に行ったかのような体験が、ほんの2時間で味わえるので、めちゃくちゃコスパ高いと思う。

 

おすすめのカレーディナーをいくつか紹介。

まずは鉄板「エリックサウスマサラダイナー」

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こちらは季節ごとに独創性の高いフルコースを提案してくれる、誰を連れて行っても喜ばれること間違いなしの名店。ここでデートして盛り上がらなかったら諦めたほうがいいでしょう。お酒が飲める方はワインをボトルで頼んで、ゆっくり味わって。

2021年冬のコースはこちら。どんな料理か想像つかないでしょ、楽しいんだこれが。人気店なので予約必須。

・鯖プットゥとブルーチーズのサンドウィッチ

・グシュタバ 根付きセロリの石窯焼き

コルカタ風野菜スープ

赤海老とカジキマグロのボッタ

・春菊、柿、セロリのサラダ

・豚肩ロースのマスタードグリル、ブラックキーマグレイヴィ

・わんこカレー

・紅玉アップルドーサ

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「東京カレンダー」みのある写真。カレー食べていい雰囲気になったら、円山町に移ってムフフな夜を過ごしてみてはどーでしょう。たぶんお腹いっぱいで難しいと思うけど…

 

続いても超有名店「ダバ インディア」。10年前に初めて行って、以来南インドカレーの虜となった。

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ランチ時は大変な混雑なので、夜に予約していくのが正解。コースでなくアラカルトが色々頼めて楽しい。ビリヤニは絶対食べてほしい。

「シターラ」も美味しかった。上2店よりも高級感ある店内なので、ロマンティックなデートに合うかも。インドの5つ星ホテルのシェフがいるとか。甘くないラッシー初めて飲んだ。

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ほかにも名店たくさんあるけれど、今年初めて行った「スパイスドランカーやぶや」には一発ノックアウトされてしまった。場所は関内駅。そう、横浜エリアで夜行きたいカレー屋を見つけたのです!というか、このお店を書きたいがためのカレー記事です。

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こちらはスパイス料理で日本酒(熱燗)を呑み、南インドミールスで〆るコース居酒屋。開店から短期間で食べログの百名店に選出されたそうで、グルメ雑誌にも特集されたり、グルメライターがこぞって絶賛していたので、絶対行かねばと思って狙っておりました。緊急事態宣言中はノンアルコールだったので、宣言明けてお酒復活のタイミングで行くことができた。

イセザキモール入り口すぐの路地の3階にあり、8席MAXの完全予約制。店主はワンオペで19時に一斉にスタートするので遅刻厳禁だ。

 

「日本酒とカレー!?どうなのよ、それ」って思うでしょ。分かる分かる。私もやぶや未経験時はそう思っていた。今や、燗酒とスパイス料理がこんなに合うものかと…これ以外の選択肢はないと思えるまで。インド人もびっくり!

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路地にあるので見落とし注意。狭い階段を頑張って登りましょう。

19時、カウンター席にその日のお客さんが勢ぞろいする。初対面ばかりだけど、これから一緒にトリップする仲間です。同じツアーに乗り合わせた乗客たちみたい。一蓮托生。

前菜からメインまでの4皿にペアリングした燗酒が4種出てきますが、別途ビール注文も可能。個人的にはお酒の量はペアリングでちょうどよかったかな。
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前菜。白子のアチャール、牡蠣のスパイスオイル漬け、フグのジンジャーフリット。(メニュー名はうろ覚えなのでご勘弁を)合わせるのは樽酒の燗。スパイスに負けないどころか、樽香で臭みを消して魚介の旨味を引き出すナイスアシスト。


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2皿目。白身魚にココナッツスパイスソースを合わせたものだったかな。ソースをたっぷり絡ませて一口食べた後、口の中を熟成酒で満たすと得も言われぬ恍惚。白身のまろやかな甘さとふわふわな食感が、ほわん、と包まれる。


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スペアリブ。この燗酒は「ロゼワインだと思って飲んでください」と言われる。酸味が強い個性的な熟成酒で、そのままでは個性が強すぎるんだけど、スペアリブとソースとともにいただくと、まぁ!絶妙なバランスで華やかな旨味がピリカピリララ。カウンターのお客さんたちも「!?」と衝撃の様子。マリアージュって、ワイン以外にも生まれるんですね!和洋折衷ならぬ和印折衷、ここに日印平和条約が締結されました。


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メインができるまでのおまけメニュー。特大しいたけを焼いてもらって、クミン塩で合えたもの。はー、美味しい。


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やってまいりました、ミールス。「この燗酒はモヒートだと思って飲んでください。ミールスはまずそのままで食べて、五味の特性を感じてください。単体では美味しいと思えなくても、ジャスミンライスや他の小皿と混ぜて味わうと変化します。そしてモヒートを飲むとまた違った味わいになるはずです。あなただけのバランスを探して、口中調味してください。」

五味とは、酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩味)の5種の味。そして「口中調味(こうちゅうちょうみ)」というパワーワード!食べること、味わうことだけに集中して…。


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見た目は「沼」なお行儀の悪い混ぜ混ぜミールスだけど、これが美味いんだ。私はラッサム多めでスパイシー&サワーな味わいが好み。そこにさっぱりモヒート(燗酒)を足すと、旨味がピュルピュル増してくる。合わせると、単体で食べる100倍美味しくなる。1×1=∞という方程式が生まれる店。


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見たことのない日本酒が並ぶ店内。たくさんの日本酒がある中、どうやってスパイスとのベストマッチを見つけ出すんだろうか。カウンターの裏では尋常じゃない数の試行錯誤があるに違いない。

 

こんなに五感をフルに活用する食事も珍しい。たった2時間でインド旅行をしてきた気分だ。食後はスパイス効果で身体がぽっかぽかになるし、胃腸が元気になるし良いことずくめ。次のコースも絶対行かなきゃ…と誓ったのでした。

 

閑話休題

外で食べるカレーは最高だけど、おうちカレーも大好き。コロナ禍、スパイスからカレーをつくることにハマった。当時は御徒町に住んでいたのでアメ横「大津屋商店」でスパイスを揃えて、エリックサウスのシェフが書いたレシピ本「だいたい15分! 本格インドカレー」をバイブルに。

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見たことない量のスパイス棚にクラクラ。店員さんに聞くとおすすめも教えてくれる。
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本を頼りに、必要なスパイスだけ購入。まずは15分で出来るという鯖カレーに挑戦した。
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合わせておいたスパイスと、みじん切りした玉ねぎとトマト缶をフライパンにぶち込んで炒める。
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ほんとに15分で出来た本格インドカレー。自宅でこのレベルが作れるんですね…。この時はバスマティライスが無かったので普通の白米で。


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その後、かっぱ橋でカレー皿を買いました。サフランライスも炊きました。形から入るタイプです。

 

今の会社に入社する時、一次面接の待ち時間で廊下に座りながら人事と雑談する機会があった。そこで何故か「美味しいカレーの作り方」について議論した。カレーに一家言ある方だったようで自信があるようだった。私もカレー好きの端くれとして「玉ねぎとにんにく、生姜はケチらず使わないと味がブレる。スパイスをテンパリングさせる油が大切だから、カロリーやコレステロールなんか忘れてドバっといこう」なんて話した。カレーの話ばかりしたせいで二人してお腹が空いた。面接は受かり、その後もとんとん拍子で運び、内定が出た。

「就活生の緊張をほぐすために雑談してくれたのかな」と思ったが、別にそうではなかったらしい。他の内定者に聞いたところ、別にカレーの話なんかしなかったらしい。なぜ私だけ…。よほどカレー好きに見えたのか?

入社後、その人事と再会してカレー仲間になった。社内ですれ違うたび、お互いに美味いと思うカレー屋を紹介する程度の仲だ。ある時、「なんで面接前にカレーの話したんでしたっけ」と聞いたら、「いや、お昼時だったので『お腹空きましたか?お昼に何食べたいですか』と聞いたら、カレーと言われたんだよ。カレー好きとしてはどこのカレーか気になるじゃん。で、自分でも作るって言うからレシピを教え合ったんだよ。長い人事人生でも、就活生とカレーの話をしたのはあれが最初だなぁ」と言われた。…私が食いしん坊なだけでした。

いずれにせよ、カレーが繋ぐ縁ってのも悪くない。今度「スパイスドランカーやぶや」を教えようと思う。それとも、コロナが収束したら誘ってみようかな。

まだ液体のままの存在たち

猫は液体。

ぶるぶるっと身震いした時に耳が「ぴちぴちっ」と鳴る。同じ部屋にいるはずなのに、たまに音もなく消えて何時間も姿を現さない。

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体の幅よりも狭い通路を通る。リラックスしてる状況で抱き上げたら想像の1.5倍以上伸びる。見た目より重くて、寝ている時に腹に乗られたら悪夢を見る。

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夏は開き、ふと見ると床でとろけている。冬は布団の中で脚と胴体がしっちゃかめっちゃかな位置にある。「量子もつれ」も顔負けなくらい常にもつれている。

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毛並みが良すぎてぬめぬめしている。人肌より少し温かい程度で、顔をうずめると眠ってしまう。丸まっているお腹に手を入れたら、適温のお湯に手を入れている感覚。

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表情豊かで雄弁なので、気に入らないことがあるとストライキを起こす。昼寝中唐突に愛を伝えてくれる。一生のうちに一度だけ人語を話す。

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安心している時は毛布や柔らかいものを揉む。母猫にお乳をもらう記憶を思い出しているそうだ。目をつぶってもみもみしている様は可愛いんだけど私のお腹やお尻に爪を立てるのはやめてほしい。

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人間の記憶を消すことができるので、毎日見るたびに「なぜうちにこんな可愛い生き物が?」と本気で驚く。数日おきに「猫 可愛い なぜ」と検索をする。実は私は犬派なんだけど。

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あお向けでお腹を出して、いかにも「触ってください」のポーズなのに触ろうとすると猫パンチされる。人間の言葉をかなり理解しているそうだが、何度言っても言うことを聞かないのは「無視」しているからだ。

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おそらく神は人間よりも気合を入れてこのけだものを作りたもうた。

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新聞を読み始めると邪魔をする。お前さっきまですやすや寝ていたじゃないか。
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人間よりも高い位置に陣取り、人間を見下ろす。人間は猫を養うために存在する。
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キリンジの新アルバム「crepuscular」が、非常に非常に良い。テレワーク中エンドレスリピートで流している。何ならこの記事を書いている今も。

堀込高樹がコロナ禍で抱いた感情や印象が色濃く反映されているので、キリンジにしては珍しく歌詞が具体的で、妙にリアリティがある。Amazon MusicSpotifyでも聴けるので是非。メロウでちょっぴりビター。

www.universal-music.co.jp

このアルバムの中に「気化猫」という曲がある。猫飼いにはたまらない名曲だ。

「君の家の猫も 液体だと知っているだろう」

「信じるかい 信じないの?からだじゅうが毛に覆われたLiquid Cat 蒸発してしまうかも、なんて」

 

この曲を聴きながら猫たちを見ると、こいつらは今は固体のふりをしているが目を離すと液体になり、いつしか気体となって部屋の中を漂うのだろうと思う。

天国とか浄土とかあの世は信じない。死後、猫たちは虹の橋を渡って猫の楽園に行くというインターネット・ミームは素敵だけど、私は自分勝手なので死後もそばにいてほしいと願う。・・・グレーの猫・モリアーティの方は、そのうち尻尾が分かれて人語を喋りはじめ、「猫又」として跳梁跋扈するかもしれない。そうなってほしい。黒猫・ルパンの方は気体になったことに気づかずに寝ていそうだ。

 

我が家の猫たちは代々ヴィランの名を与えるルールなので、「次の猫はなんて名付けるの?」とたまに聞かれる。2匹の世話で手一杯なので当分増やさないが、万が一、増えるとしたら・・・。「ハンニバル」にしたいところだが、ますます手に負えない猫に育ちそう。ちなみに黒猫ならば「ルパン2世」にする。

ちなみに犬には、伝説の主人公の名を与えている。前飼っていたヨークシャーテリアは「アーサー王」。ペットクリニックに行くたびに笑われていた。犬は固体。

 

psnews.jp

 

茹で上げたパスタがいずれ食べ時を失うように、どんな恋愛もいつかは冷める。しかし猫は永遠。永遠に理解できない。理解できないから惹かれる。納得のいく答えが出ないのをわかっていて、今日もまた「猫 可愛すぎる なぜ」とGoogleに尋ねる。

 

猫には秘密が多く、人間に心を許し切らない孤独主義者だ。ほらまた液体化している。

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楽しく、新しく、続けてみよう~ライフハックについて

少し早起きできた朝、バスタブにお湯を張ることから一日を始めた。寝巻にパーカーを羽織り、プラスチックごみの日だったのでマンションの外に捨てに出て、ついでに郵便受けの新聞を回収した。息が白くなるほどではないけれど、身が引き締まる寒さ。

「ふゆはつとめてーー」

清少納言枕草子』の一節を思い出す。確かに冬の朝はいいけれど寒さにはかなわん、慌てて部屋に戻り、布団の上でだらしなく開いている猫たちを横目に寝巻をすべて脱いだ。脱皮した抜け殻は猫たちの上に投げ捨てた。お風呂場に直行して、ざぶんと浸かる。はぁ~極楽極楽。

首まで浸かりながら、この感覚をどこかで味わったことがあるなと気づいた。頑張って寒い思いをしてからの極楽…なんだっけ。ぶくぶくぶく。頭まで浸かる。

あ、露天風呂だ。

温泉は年中最高だけど、温泉宿はとくに冬がいい。おおごちそうを食べて深酒した翌朝、気合で布団から這い上がって、着崩れた浴衣を直しながら露天風呂へ一直線。どうせすぐ脱ぐんだから帯は適当でいい。眼鏡とタオルと鍵さえあればなんとかなる。脱衣所で浴衣をかなぐり捨てて、いざ露天風呂。気温10度以下の明るい屋外に全裸で飛び出すことなんて、普通に生活していたら年に何度も、一生に何百回も起こらない。

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昔はもう少しとっつきにくい人間だった、と思う。自分のことで精一杯で、他人に興味を持ったり交流する余裕がなかったのかもしれん。内側はドロドロで、外殻はピリピリしていた。

道程でたくさんの何かをこぼれ落としてきた、と思う。美しさと正しさが等しくあると疑わないで居られるのは若さ故。不可逆な過ち、力及ばない悔しさ、どうしようもない人恋しさを覚えて、寛容さをちょっとずつ身につけて大人らしくなっていくのだろう。

最近は「いつも楽しそうだよね」と言われることが増えてきた。大人とは自分の機嫌が自分で取れる人間のことである、という戒めを持っているので、少しは大人になれたのかなとホッとする。できれば四六時中ゴキゲンでいたい。私生活や仕事でトラブルが起こった時も「面白くなってきやがった…!(by次元大介)」と心の中で呟いている。不謹慎ばっちこい、能天気イズ最強。陽気なギャングが地球を回す

 

ゴキゲンでいるためのライフハックがある。たぶんどっかの自己啓発本にも書いてあるような他愛もないことなんだけど、30年間生きてきて編み出した、自分なりのライフハック

 

毎日ひとつ「楽しい」を見つけること、毎月ひとつ「新しい」を始めること、毎年ひとつ「続ける」こと。

 

毎日の「楽しい」は美味しいものを食べるとか、コンビニの新作フードを買うとか、馴染みのバーで好きな一杯を飲むとか、軽くてささやかな喜び。寝る前にぼんやり思い出すと幸せな気持ちになる。

毎月の「新しい」は本屋で知らない作家の本をジャケ買いするとか、知らない地域や駅に行くとか、未開拓な盛り場(オススメはストリップ劇場、名画座、コの座酒場、バーなど)のドアを開けるとか、世界を少しだけ広げて覗いてみる発見。刺激的で享楽的で、こんな場所でこんなことが!を知ると、いつもよりも世界が広くなった気がする。

毎年の「続ける」は、好きなYouTubeチャンネルを観続けるとか、気に入った作家の新刊を必ず買うとか、新聞や雑誌を定期購読するとか、ラジオ英会話を聴き続けるとか、ジムやヨガでもなんでもいいけど習い事に通うとか、その道の奥深くに入り込んでひとつのことを極めようとする努力。継続は力なり。武道や茶道などの「道」とはよく言ったもので、終わりがないのがいい。牛歩の進みでもいいし、止まってもまた気が向いたら歩き始めればいい。拠り所を複数持っておくと心が安定する。

 

コロナ前は、毎月LCCで海外に弾丸一人旅したり、ストリップ劇場に毎週通ったり、毎晩飲み歩いていた。今は大幅にスケールダウンしつつも、周りの人に恵まれているおかげで毎日・毎月・毎年楽しく過ごせている。

 

去年から始めたZUMBAは2つのサークルに入って精進中。初めは数曲踊るだけで息が切れていたのに今は1時間踊り通せるくらいになった。キレッキレに踊れるようになりたい。キレッキレに踊れるアラサーって格好良いと思う。

来年からはサンバを始める。いつか浅草サンバカーニバルに出場するのが夢だ。大学のゼミで映画「黒いオルフェ」のカーニバルシーンに魅せられて、暮らした浅草の街のサンバカーニバルに夢中になり、音楽と踊りと街が一体になった空気が好きになった。

幼少期にクラシック・バレエをかじった程度で踊りの経験はほとんどない。今更遅すぎるよなぁ、もっと前からやっとけばよかった、せめて二十歳から始めておけば…という気持ちもある。でも1年ZUMBAを続けて少し自信を持てたし、二十歳の頃は別の何かに夢中になっていたし、色々あっての今なんだから、始めるならば今が一番早いスタートダッシュ。そう思い込んで、みっともなくてもゼロから始めるのである。

ランニングも5年続いた。週に2~3回10kmを走るだけのソロ活。マラソン大会には出るつもりないけれど、いつかトライアスロンにも挑戦したい。こないだ琵琶湖南湖をクロモリで一周したのが楽しかったので、来年はびわ湖一周サイクリング(ビワイチ)もやりたい。ロードバイクほしいな。Re:ゼロから始める体育会系生活。

マリンスポーツも始めてみた。海でSUPに乗る程度だけどね。今年は大井町「スポル」(すでに閉館)でシティサーフィンに挑戦した。ZUMBA効果か割に体幹がしっかりしているので、一発で波に乗れた。何にも拠り所がなく水の上に立つ感覚にゾクゾクした。来年は海に出てみよう。

 

色々始めてきた。続けるかどうかは分からないけれど、やれるだけやってみる。どれもきっかけはほとんど人づて。信頼できる友人たちが勧めてくれるものは、十中八九楽しいという経験則。

入りたかったサンバサークルも、友人の伝手であっさり見つかった。引っ越した先の友人の友人がサンバの人だったという僥倖。ハマで知り合う人みんなに「横浜でサンバやりたいんですよー」と言っていたらすんなり出会えた。シンクロニシティ

巡り合わせは偶然なんかじゃなくて、人から貰うもの。すべてのご縁に感謝。なんて、10代の自分に聞かせたら笑われそうな、至極当たり前な結論に今はたどり着いた。

仕事とは全然関係ない内容で、仕事では出会えない人たちと交流できるのが楽しい。毎週会って一緒に何かをする。部活かよってくらい熱血に。単純に楽しいんだけど、居場所づくりという意味でも、社会人こそ課外活動したほうがいいんじゃないかなと思う。

 

ずっとやってみたかったグランピングをする機会にも恵まれた。あきる野の山中「WOODLAND BOTHY」にて。1日1組限定で素敵な山小屋に泊まり、専用シェフが料理をしてくれるというもの。

woodlandbothy.jp

 

車で近くまで来て、30分山を登る。山と言っても獣道でなく整備されているので、動きやすい恰好とスニーカーであればそこまでつらくはない。きつい坂や階段が続くので、少し息が切れる程度。
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人里離れて、自然の音しか聞こえない世界へ。
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泊まる山小屋が見えてきた。もう少し!
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到着。ふかふかのベッドやくつろげるテーブルが美しくセッティングされている。自分でテント立てなくていいのって楽。
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景色は最高。ハンモックにゆらゆら揺られながら山を眺めた。
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部屋のいたるところに飾られたドライフラワーのあしらいが素敵で、思わず洗面所でパチリ。
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紅葉を肴に、まずはビールで乾杯。
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なんと温泉つき。ほかの宿泊客もいないので優雅に占領できた。窓を開けて涼しい風を浴びて露天風呂気分。
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とても美味しい夕食後は焚き木時間。火ってキレイだなぁ。
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オプションで花火やらせてもらった。
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朝食も美味しかった。この山奥まで食料を調達するのは大変なんだろうなぁ。普段のキャンプは食料や水、お酒を背負って大荷物なので、手ぶらで来られるグランピングはとっても楽ちん。

 

あんまりに素敵な体験だったので、すっごく久しぶりに絵を描いた。へたっぴなんだけどね。キラキラした時間をガラスケースに閉じ込めて永遠のものにしたいけれど叶わないので、なんとか記憶に留めておくために、思い出すための糸口にするために、人類は文学や音楽や芸術を生み出したんだと思う。

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もともと表現することが好きだったけれど、私の場合は絵よりも言葉の方が精度高く使いこなせたので、言葉を操る仕事を選んだ。絵を描くことより、描かれた絵について語るほうが得意だったので。でも絵を描くこと自体は今でも結構好きなので、来年からはたまには描いてみようかな。誰に見せるわけでもない、思い出クロッキー

 

人の一生って、長い時間をかけて何かを得て、もっと長い時間をかけてそれらをひとつずつ失っていくようなものだと思う。家族、恋人、友人、ペット、能力、地位、若さ、感性、五感、自意識。大事な人も楽しい体験も、いつか思い出せなくなる日が来る。最後に残るのは使い尽くした肉体のみ。借り物の容れ物。それすらも、筒井康隆の「残像に口紅を」のラストのように幕が引ける。いつか失うからこそ今を大切にしないと勿体ない。困難に負けそうな時は心のガラスケースの中のキラキラした思い出を眺めよう。

 

唐時代の詩人・于武陵の「勘酒」という詩が好きだ。尊敬する映画監督・川島雄三がよく引用していて、私もたまに口ずさむ。

 

勸君金屈卮(この杯を受けてくれ )

滿酌不須辭(どうぞなみなみ注がしておくれ)

花發多風雨(花に嵐のたとえもあるさ)

人生足別離(さよならだけが人生だ)

 

さよならだけが人生ならば、また来る春に何をしたい?

年末も映画三昧、「ラストナイト・イン・ソーホー」イン・トーホー!

2021年新作映画のランキングを先日書いたけれど、その後いくつか新作映画を観た。結論として私的ベスト1位2位に変動はないものの、どれも心に残る良い映画だったのでメモ。あと「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」の公開が2021年3月だったことをすっかり失念していたので、私的MVP賞を与えたい。庵野監督よくまとめたよ、よくやった!という気持ちです。すべてのエヴァにありがとうとさようなら。

sakariba.hatenablog.com

 

まずは「007 ノータイム・トゥー・ダイ」。周りの評判がそんなでもなかったのでつい後回しにしてしまったけれど、めっちゃ面白いじゃん!なんなら名作と名高い「スペクター」よりも構成が良かったし、ダニエル・クレイグへの壮大な鎮魂歌(レクイエム)としても満足のいく出来だった。オープニングにビリー・アイリッシュを起用したのも良いな。007ってこういう流行歌手も取り入れるのがうまい。

監督のキャリー・ジョージ・フクナガは初の007シリーズ監督とのこと。「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」などで培ったカメラワークやホラー演出が存分に活かされていた。3時間もの内容を、観客を飽きさせずに伝えきる手腕はさすが。そしてラストシーンには思わず落涙してしまった。

レイトショーで観たものの、終演後ダニエル・クレイグの弔いがしたくなりBar Primaへ。24時以降も気軽に行けるバーが近所にあって嬉しい。

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やっぱりヴェスパー・マティーニをオーダー。

バーテンダーのYさんが気をきかせて、007の作中レシピを参考に作ってくれた。とっても美味しい。「スペクター」ではマティーニを飲もうとしたら敵が現れてグラスを吹っ飛ばされていたので、本作では思う存分飲ませてもらっていてよかった。戦いながら強いお酒を飲むのが007流。

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ヘンドリックスでギムレットを作ってもらったら、ジンの苦味がちょうどよくマッチして感動。ヘンドリックスは癖のある味わいなので、今までロックかソーダ割りでしか飲んだことがなかったけれど、オーダーしてみるものですね。

ヘンドリックスは大好きなジンで、特に「ミッドサマーソルスティス」が好き。ミッドサマーとは夏至のことで、スコットランドでは夏至祭がしばしば行われる。映画「ミッドサマー」のように、花々の香りに包まれて、神秘的で儚い享楽に酔える。

sanyo-brands.jp

 

もう一作、2021年に一番楽しみにしていたと言っても過言ではない新作映画「ラストナイト・イン・ソーホー」を観た。公開当日、TOHO日比谷で。「ラストナイト・イン・ソーホー」イン・トーホー!と言いたかっただけです、はい。

lnis.jp

この映画は、「ベイビー・ドライバーエドガー・ライト最新作で、「クイーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイと、「オールド」のトーマシン・マッケンジー、今最も旬な2大女優が共演するという超注目作なのです。映画ファンなら問答無用で観なきゃいけないやつですね。

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1960年代のロンドンを舞台にするだけあって、ポスターも色々デザイン遊んでいて楽しい。

 

予想以上にサイコホラー要素強いので万人に勧められる作風ではないけれど、私は好きだな!エドガー・ライトの思いが詰まった選曲を大音量で、アニャちゃんの「強い顔面」をスクリーンいっぱいに観られる幸せ。娯楽映画ってこうじゃないとね。

この映画で「60年代ロンドンの華やかな暮らし&ファッションを楽しみたい♪」と思っていた観客たちは、割と早々に主人公と一緒に悪夢に引きずり込まれてひどい目に遭ってしまうんですが、その劇場の一体感が良かった。エドガーにまた騙されたぜ!

ま、でも「ベイビードライバー」も心を閉ざした少年の成長物語だし、「ラストナイト・イン・ソーホー」も夢見る田舎少女の成長物語ってことで、同じジャンルよね。ロンドンは怖いところだね、っていうオチだし。

裏テーマである「女性搾取の問題」は、今年色んな映画でも見られたテーマだった。「プロミシング・ヤング・ウーマン」「最後の決闘裁判」しかり。本作は男性監督らしい目線だったので、逆の立場でも語ってほしかった。欲を言えば、アニャ演じるサンディはもっとしたたかに逞しく描いてほしい。そうでないとオチの説得力(実は✖✖に✖✖を⁉)が弱まると思うので。

 

ちなみに、主人公が下宿する家の女主人は、ダイアナ・リグという女優さん。この人、「007ノータイム・トゥー・ダイ」でも大々的にオマージュを捧げられていた、「女王陛下の007」のボンドガール(ジェームズ・ボンドが唯一結婚した女性)ということを、観終わってから知って驚いた。全然気づかなかった!

あと、細かくて伝わらない話なんだけど、主人公の祖母(リタ・トゥシンハム)が妙に怖くて仕方なかった。稀代の名作「ヘレディタリー 継承」のトラウマが未だに残っています。白髪で痩せた高齢女性&主人公の祖母はみんな悪魔降臨するのではと身構えてしまう。

 

年末年始は何を観ようかな。毎年クリスマス時期に友人らに勧めるのは「グリーンブック」「東京ゴッドファーザーズ」です。

私は好きな映画を観返すことが多いので、やっぱり今年も「エクソシスト」「ヘレディタリー 継承」でオカルトナイトかな。…趣味の悪さは承知の上。

いいコにプレゼントを配る赤いサンタもいいけれど、悪いコにお仕置きをする黒いサンタの方が惹かれてしまう性質なのです。黒いサンタは、プレゼントの中身に石や石炭を詰めたり、ベッドルームに臓物をまき散らしたりするんですよ。

そんな悪いコたちが見る映画は「悪魔のサンタクロース 惨殺の斧」「サイレント・ナイト 悪魔のサンタクロース」「バッドサンタ」で決まり!皆様良い年末を☆

マリグナントを観ルグナントした

先週は映画好きのタイムラインがにわかに騒がしかった。

「マリグナントを観るぐなんと」「マリグナントまだ観てないぐなんと…」

そう、言わずと知れたホラー映画界のヒットメーカー・ジェームズ・ワン監督の最新作「マリグナント 狂暴な悪夢」の公開が始まったのです。

wwws.warnerbros.co.jp

ジェームズ・ワン、誰それ?って方も「SAW(ソウ)」シリーズや「死霊館」シリーズは聞いたことあるんじゃないでしょうか。新時代のホラー映画をいくつもぶち上げてきた稀代のホラーエンターテインメント監督です。斬新な設定、破天荒なカメラワークが人気で、観客を怖がらせたり喜ばせることが何より好きな、サービス精神あふれる方。邦画で言うと清水崇(「呪怨」シリーズ、「犬鳴村」など)的存在でしょうか。もっとスゴイスケールだけど。

 

「マリグナント」、一般人には絶対進められないけどホラー映画ファンは必見だわ。ジェームズ・ワンの2021年集大成って感じ!

「SAW」で培った謎が謎を呼ぶサイコスリラーストーリー、「死霊館」「インシディアス」で見せたオーセンティックな恐怖演出、「ワイルド・スピード」「アクアマン」で鍛えた超絶カメラワーク、そのすべてが暴力的に合体・魔改造されて、誰も観たことがない18禁ホラー映画が爆誕してしまった。全部乗せカロリーマシマシだけど、不思議と胃もたれせず食後スッキリなのが高評価。

映画のジャンルすらよくわからない作品。ホラーで、アクションで、ミステリーで、オカルトで、スリラーで、ちょっとコメディで、ハートフルで、バディもので…。あ、でもゴア(人体損傷)描写が多いので苦手な方はご注意を。作中の死者数はかなりのもんです。

ホラー映画にありがちな、ストーリーのテンポを狂わす無能キャラクターや、ちんたら進む恐怖演出がほとんどないことも魅力!主要キャラはみんな有能でサクサク謎が解けるし、恐怖を味わうキャラは即死ぬ!後半は5分ごとに15人くらい死ぬ!

 

分かる。ハリウッドの規模感で身内飲みをしている感覚。ジェームズ・ワン監督は今や新世代の大監督として名をはせているのに、いまだに「マリグナント」みたいなテンションのおかしい映画をつくってくれるのが好き。

 

ほんとその通りで笑った。治安悪すぎるよこの家。

 

ネタバレ厳禁令が出ているので、肝心のディテールを喋れなくてつらい。諸悪の根源の正体は「狂暴」としか言いようがなくて、「ヴェノム」的ダークヒーローとして人気出るんじゃないかなぁ…。ちなみにタイトルのマリグナントは「悪性」などを意味する言葉らしいです。

 

土曜の夜、横浜ブルクのレイトショーでホラー映画をニコニコ観ているすっぴん三十路という、モテない要素しかなかったけど楽しかった。

その昔二十歳ごろに付き合った人とは、初対面のバーカウンターで好きな映画の話になって、「今『富江』シリーズ全部観ているんですがアツいですね!伊藤潤二原作のホラー映画なんですが、時の美少女と新進気鋭の監督が毎回ハチャメチャな味付けをするんですよ。初代は菅野美穂富江役で生首姿を披露するんです~!」とニコニコ喋った記憶が蘇る。ここからどうやって恋愛に発展したのか本当謎だ。

http://comip.jp/spinel/cbs/c1171/c118-1193/

尊敬する人は「邦キチ!映子さん」の映子さんです。

 

今週は神保町シアターで「夜の女たち」(1948年公開、溝口健二監督)も観た。

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大女優・田中絹代が初めての汚れ役に挑んだ意欲作。戦争未亡人の姉とその妹が陥る悲劇を描いている。

観始めて気づいたけど、23歳くらいの時にわざわざレンタルして観ていたわ。当時は画面が暗くて見づらかったので、やっぱ劇場で観るのがいいね。内容自体は「肉体の門」を思わせる戦後ドサクサモノで、パンパン(娼婦)に落ちた女たちの悲劇的な物語。ちょっと説教じみているのは好みでない。荒い脚本なんだけど、溝口健二らしくひとつひとつのシーン演出はすばらしく、田中絹代の演技が光っている。

今週は神保町シアターで「暗夜行路」を観ようかな。シネマヴェーラの日活ロマンポルノ特集と新文芸坐の昭和女優祭りも捨てがたい。あ、007の最新作を早く観ろって感じですね。でもあれはロングランやってそうだから後回しでもいいかなって。あ、12月10日は「ラストナイト・イン・ソーホー」始まるじゃん!やっほぅ!

…年内には007観ます。

昔、土浦のおっパブに行った話

ストリップ劇場の知人が、初めておっパブに行ったらしい。

kazkumaputti.hatenablog.com

知人といってもTwitterで相互フォローをして、たまに劇場で合えば挨拶するような仲だ。互いに劇場ネームしか知らないし、普段はほとんど絡みはないし、年齢・職業・住まい・素性はまったく知らないけれど、それでも推しの踊り子や好みの女性はお互い把握しているし、今週はどこの劇場に出没していそうかも大体想像がつく。ストリップ劇場の知り合いたちは、裸の女性を囲んで手拍子や拍手をして、ポラタイムや休憩時に「いいですねぇ…」「尊い…」と呟き合う、そんな仲。

 

ストリップを観に行くのが趣味な男性でも直の触れ合いができる風俗に行きたがるんだ、という素直な発見もありつつ、おっパブ体験中の心の機微・動揺・悟りの描写が面白く、楽しくブログを拝読した。

と同時に、昔おっパブに行ったことを思い出した。

Once upon a "oppabu" time...

およそ10年前、二十歳になりたての大学生の時分だった。その頃、私はアルバイトで大学至近のバーでバイトをしており、そのバーの常連さんたちと週4で飲み、大学関係の友人や先輩と週1で飲み、サークルの人たちと週3で飲むような生活を送っていた。要するに年がら年中飲み歩く模範的な大学生だった。

 

いつものようにバーに出勤して、常連さんたちと他愛もない話をしていたら、たまたま飲みに来ていたバーの後輩が「先輩、相談があるんスが」と切り出した。

その後輩は1つ下の男の子で、数ヶ月前からそのバーでアルバイトを始めていた。彼は、どこに出しても恥ずかしくないピカピカのチェリーボーイだった。

「自分、同級生に好きな子ができたんで告白しようと思ってるんスが、おれ男子校だったから女性とうまく話せないンす。2人きりになったら頭真っ白になっちまいます。どうやったら女性慣れするンでしょうか」と、話してくれた。どこ出身か忘れたけれど、訛りが抜けてない割にチャラい話し方が印象的だった。

彼はアルバイトの後輩としては勤務態度の悪くない、幼い笑顔がキュートな男の子だったが、確かに女慣れはしていなかった。彼女はできたことないらしい。好みのAVは老人介護モノと言っていたので、若さの割に珍しい性癖してるなと思っていた。

そんな可愛い後輩の悩みは聞かねばなるまい。今夜の肴は彼に決定だ。常連さんたちとナナメウエのアドバイスを繰り出した。

「初デートは筑波実験植物園のキノコ展でどう?『この後はぼくの自宅で別のキノコ観察をしよう』と誘うんだよ」「夕食の後、二次会でこのバーに連れてきてよ。ロングアイランドアイスティー(※度数がバカ高いカクテル)奢ってやるよ」「勝負パンツは買ったか?一緒にイーアスつくばに探しにいってやるよ」

人生経験豊富な常連たちが真摯に対応していたが、どれも「女性慣れ」を導くソリューションとは言いがたかった。悪ノリのネタが尽きてきた頃、誰かが「そういえば土浦にできたおっパブが良かったらしい」という情報をくれた。

それだ!!!

全員、後輩の悩み相談は忘れて、おっパブの話に夢中になった。「おっパブって行ったことある?」「どんなことできるの?」「未成年でも行ける?」スマートフォンがまだ普及していない時代だったのでガラケーググる奴なんかおらず、近所に住む風俗物知り博士をその場で呼び出して質問攻めにした。

その結果、いくつかのことが分かった。

 

・おっパブとは「おっぱいパブ」の略称で、女性の乳房を直で触ることができるキャバクラのこと

・土浦の桜町(茨城最大の風俗街でNSの聖地)に人気店があり、若いキャストが多い

・男性5,000円(うろ覚え)で時間内飲み放題、女性は無料

 

後輩が女性と話す練習ができるし、初対面の人の胸を触れたら同級生に告白もできるだろうという雑な推論が導き出され、早速次の金曜夜に行こうということになった。その場にいた4人の常連に車持ちがいたため車で行くことにした。じゃんけんで負けた人が運転手役で。

後輩のチェリーボーイ、アフリカあたりからの留学生、自称・100人斬りした社会人、豪農の一人息子のフリーター、私という役者が揃った。男4人女1人の頼もしいパーティーだ。

 

当日、みんなどことなくソワソワしながらバー前で集合して車に乗り込んだ。土浦までは車で20分くらい。ちょっと緊張していたしシラフで会うのは珍しいので行きの車内は静かだった。それでも「俺たちはこれからおっぱいを揉むためにわざわざ隣町に行くんだぞ」という思いが全員の心をひとつにしていた。後輩は入学式で着たスーツを身に着けていた。故郷(くに)のお母さん、息子さんは今から男になります。

 

桜町に着いた。夜の桜町に行くのは初めて。思ったよりも静かで暗かった。もっとネオンでギラギラしてスケベオヤジたちが跋扈しているイメージだった。新宿&渋谷育ちのシティガールなので、郊外の歓楽街に足を運ぶ機会がこれまでなかったのだ。閑散として見えるのは表面上だけで、実態は都心よりも闇が濃くて深いことを知るのはもっと後の話。

 

車を停め、例のおっパブに入店しようとしたら満席だった。フライデーナイトにフィーバーしたくなるのはどこの街の住人でも同じようだ。どうしようかと思っていたら、提携のガールズバーで500円で飲ませてくれるというので、そこで時間を潰すことにした。席が用意できたら呼んでくれるらしい。

ガールズバーには、同じような境遇の男たちがたくさんいた。立派なスーツに身を包んだサラリーマンが多かったが「この人たちも全員おっぱい揉み待ちか…」と思うと微笑ましかった。

ガールズバーは女性バーテンダーのいるショットバーで、カウンター越しに接客をする形態の飲食店。そこはピタピタのワイシャツにミニスカートの女性が多かった。作ってもらった薄いジントニックをちびちび飲みながら20分ほど過ごした。後輩は楽しそうに女性バーテンダーさんと喋っていた。お前、普通に話せてるじゃん。単に「好きなコ」の前で平常でいられなくなる恋煩いじゃん。なら何人ほかの女性で練習しようが治らないよと気づいたが黙っておくことにした。そういえば、ガールズバーに行ったのもあれが最初で(今のところ)最後だった。

 

「お席ができたようです」と店員さんに声をかけられ、いよいよ決戦の時が来た。残念ながら店名は覚えていないし、おそらくもう閉店している。入口は狭く質素で、店内のつくりは中規模のキャバクラ程度だった。赤い囲みソファがいくつかあり、その奥に通された。上述した知人のブログの記述の通り、たぶん今の一般的なおっパブ(セクキャバ)は「二人掛けのソファが特急列車のように同じ方向を向いていて、座れば頭が隠れるていどの仕切りが付いている」つくりだと思う。都内近郊のおっパブ経験者の何人かの遊び人に聞いたところ、全員そう言っていた。とにかく店内は暗く、音楽が大音量でかかっているそうだ。私が行った店はソフト路線なんだろう、キャバクラ並みの光量で他のお客さんの顔もよく見えた。

まずはドリンクをオーダーした。飲み放題らしい。運転手以外は全員ビールをチェイサーに、ウイスキーの水割りを頼んだ。テーブルに置かれたウイスキーは角瓶だったがキャップは開いていた。

テーブルに4人の女性キャストたちが着いた。客1人につき1人の女性が着くのだが、女性客はカウントしないシステムらしい。道理で無料なはずだ。キャストたちは自己紹介して、「どういう集まりですかぁ~?↑」と尋ねてきた。飲み屋の友達で、評判良かったから来たんだ、と誰かが答えた。「おねいさんはどうして来たの~?↑」と聞かれたので「おっぱいが揉みたくて」という本音を話した。なんか照れるな。

「うちの店は、基本的にはお酒を飲んでお喋りして、ショータイムになったら触れますぅ。その時、良かったらチップもくださいねぇ~」

そういえば入店時に料金を支払った際、チップらしきおもちゃの紙幣を何枚か渡されていた。これを渡すらしい。ショータイムがいつ来るのか分からないが、それまでは飲みながら会話をした。キャストの年齢層はバラバラだったが、愛嬌のある人ばかりだった気がする。普通に楽しかった。

しばらくして、店内が少し暗くなりスポット照明がつき、ダンサブルな音楽が流れてきた。ショータイムが始まるのだろう。それまでにこやかに会話していた女性たちが急に脱ぎだし、上半身を露わにした。女性たちは男性客にそれぞれまたがり、客の手を胸に当てて触るよう促す。さっきまで和やかに隣で話していたのに、今は馬乗りになって胸を揉まれている女性たち。そして知り合いの男たちはニヤニヤしながら揉みしだいている。みんなの急な変貌ぶりにドキドキした。店内の空気のにおいは湿度を帯び、濃いピンク色に変わっていた。非日常の光景を、水割りを飲みながらぼうっと眺めていた。自称・角のウイスキーは酔いが回るのが早い。

すぐに私の上にも女性がまたがった。女性の胸部は銭湯や修学旅行などで見慣れていても、こんな至近距離でじっくり見るのは初めてだし、ましてや触るなんて。「失礼します!」30代半ばくらいだろうか、濃い化粧で明るい茶髪ショートヘアの女性のキャストの胸は柔らかく、ブラジャーを外したら少し垂れていた。少し汗ばんで、ひんやり冷たかった。エアコンが効いていたので「寒くないですか?」ととんちんかんなコメントをしてしまった。女性は笑いながら「大丈夫よ、ありがとう。たくさん触ってねー」と、胸をつかむ私の両手をぎゅっと押し付けた。これは、バブりたくなる。オギャりたくなる。

少ししてその女性は隣に移動した。変わりに別の女性が来たが、最初の女性以上のときめきはなかった。店内が明るくなり、ショータイムが終わることが分かった。何か忘れてる…あ、チップ!同行していた男どもはいつの間にかチップを渡し切っていたらしい。どうせなら最初の女性に渡したい、と服を直して違うテーブルに向かう彼女を呼び止めた。彼女はとびきりの笑顔で「ありがとう!」と言って胸をはだけた。谷間に突っ込めということらしい。遠慮なくねじ込んだ。その後、ストリップにはまり何人もの踊り子に色んな方法でチップを渡すことになったけれど、胸に入れたのはあれが最初だった。何事にも言えるけど「はじめての人」の記憶って強いよね。

 

帰りの車内は、行きとは打って変わって盛り上がった。店内にいたのは40分程度で、ショータイムは2回あったけれど、お互いの動向を見る余裕もなくあっという間だった。謎酒がまわっていたともいう。それぞれが、それぞれのおっぱい談に華を咲かせる。いつの間にみんな何かしらのドラマを経験したようだ。

ひとしきりシェアして笑い尽くした後、破顔した後輩がしみじみ呟いた。

「先輩、楽園ってあったんスねぇ・・・土浦にあったんスね」

5000円で行ける楽園か。あまりにチープで即物的だけど、君にそう言ってもらえたら土浦まで行った甲斐あったよね。茨城県道55号土浦つくば線から見える星空がきれいだった。

f:id:sakariba:20211117010749j:imageつくばは高い建物が少ないので空が広いのだ

 

翌週、彼が思い人に告白して付き合えることになったとバーで報告してくれた。その日も常連たちとどんちゃん騒ぎで祝福した。その子を店に連れて来いよと誰かが言うと、「頼むから、おれがおっパブに行ったことは黙っていてくださいね!」と口止めをされた。

その後、彼とその彼女が幸せに暮らしたかは分からないけれど、卒業までは付き合ったんじゃないかな。めでたしめでたしで終わればいい。以来、おっパブには行っていないかもしれないし、ハマってしまったかもしれない。楽園は意外と日常近くに潜んでいて、いつでもウェルカムなのだ。禁断の果実、おかわりください!