盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

映画「グリーンブック」を観る

春の訪れを感じさせる晴れの日。TOHOシネマズ日比谷で、アカデミー賞受賞作品「グリーンブック」鑑賞。

gaga.ne.jp

前情報は公式HPの情報程度。アカデミーの作品賞は「それでも夜は明ける」「ムーンライト」のように、社会性の強い題材が選ばれやすい傾向があるから今回もその枠かな~ボヘミアンラプソディ」良かったけどな~、なんて考えてましたが、ところがどっこい、よく出来た映画でした。いろいろな発見があった。作品賞も納得です。

クセの強い2人の男がバディを組んだロードムービー、というアメリカ映画的なフォーマットを用いつつ、1960年代にあった人種差別の実態を示し、現代にも通ずるメッセージをシンプルに伝えていた。

台詞回しや小道具の使い方も絶妙で、人の悪意や無自覚な差別をわかりやすく表象していた。作品タイトルである「グリーンブック」が、アメリカ南部で黒人が宿泊可能な施設などをまとめたトラベルガイドを指すということ1つとっても、当時の黒人の生きづらさをあらわしていてぞっとする。黒人の入店を断るレストランオーナーが「個人的な差別ではない、単にこの土地の風習だ」と言い切るシーンなんて、思考停止によって差別が温存・継承される構造と、その解消の難しさを考えさせられる。

ただ、「グリーンブック」は重いテーマを扱っているにもかかわらず、クスリと笑えるシーンやホロリとさせるシーンもあり、とても観やすい。最後はハッピーエンドなのも後味が良くていい。映画冒頭とラストで主人公トニー(ヴィゴ・モーテンセン)の意識が変化していることも、「たとえ知らない人・文化であっても、関わろうとすることで人は変われる」というポジティブなメッセージを感じさせる。

黒人文化(と規定されるもの)になじめない黒人ピアニストのドクター(マハーシャラ・アリ)の居場所のなさ感も切実だ。ディアスポラ(移民コミュニティー)の問題としても受け止められる。全然関係ないけどピアノは役者が弾いていたのかな、めっちゃ上手かった。ショパンの「木枯らしのエチュード」完璧でした。指長ぇ!そしてスーツやタキシードの着こなしがセンス良い。(それに対してトニーのセンスと教養のなさが対照的で痛快)

あと感想としては、フライドチキン食べてカティサーク飲んでタバコ吸いたくなるね・・!作中の食べ物がやたらうまそーだった。見終わったあとにクリスマス気分になるので、年末あたりに見直すのもいいな。以上。