盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

CHANEL NEXUS HALL「ピエールセルネ&春画展」を観て銀ブラする

シャビの荒木さんと誘い合わせてCHANEL NEXUS HALL「ピエールセルネ&春画展」へ。当初はレセプションに行く予定だったけれど私の急な仕事で延期。(レセは大混雑で作品鑑賞どころじゃなかったそうなのでよかったかも)

chanelnexushall.jp

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シャネルの企画展はいつも凝っている。のぞき穴の先には春画が・・。

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展覧会名のレタリング格好いい。お金かかってそう。

美術商・浦上蒼穹堂の浦上満コレクションの保存状態のすばらしさに感嘆&感謝。喜多川歌麿や鈴木春信のたおやかな春画は美麗で、彫りも摺りも一流。公家が多様なな階層の女たちと交わる鳥文斎栄之の肉筆画《源氏物語春画巻》も見事。交接部位の汁がキラリきらめいていたり、常軌を逸したこだわりに絶句。葛飾北斎の迫力ある肉体のデフォルメと、男女から漏れる声や音を描写したテクストの熱量にも圧倒された。

兎角すんばらしかった。この展示を無料で見せてくれる、おシャネル様にも感謝。でも正直なところ、ピエール・セルネの作品は、まったく要らなかったのでは・・。

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上気した心で銀座ぶらぶら。

シャネルを出て、荒木さんが木村屋のあんぱん(あんバター)を食べたことがないというのでお土産に持たせた。木村屋は大人のあんぱんも最高。

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クラブが開店したらしく、祝いの花がズラリ。北陸のように花輪ではない。

めしにしましょう。荒木さんがライブミュージックレストランに連れていってくれた。銀座に行きつけの店のある大人になりたい。(国際フォーラム時代に通った店らしく、十年ぶりらしいけど)

kaijyo.jp

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重厚感ある入口。お店は地下にあります。

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待合コーナーも洒落ている。

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60〜80年代の懐かしい曲をBGMに、気のおけない仲間と語らいながら、食事やお酒を楽しめる。

銀座なのでさぞ高級店では・・と思ったがそこは荒木さんぬかりない。腕のいいシェフの料理はなんでもおいしいけれど、お値打ちワインも揃っていてお値段はかなりカジュアル。気兼ねなく楽しめるいい店。貸し切りもできるので、ちょっとした集まりにいいな。

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バーもあるからお酒も揃っている。店員さんも親切だった。

ブルターニュ地方出身のフランス人スタッフさんがいて、荒木さんが流暢なフランス語で会話していた。日本文化が好きなオタクだというスタッフさんに、私も思わず「春画展に行くべし」と勧めた。
楽しくおいしく飲んで食べて、もう一軒。
「バー・ルパンで太宰治ごっこしよう!」

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シルクハットをかぶり、片眼鏡でギロリとにらんだ男の看板が暗闇に浮かぶ。

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アール・デコ調を思わせるランプと階段。入店するのにドキドキするバーが好きだ。

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昭和を感じるレトロな店内。ヤチダモの1枚板のカウンターはよく磨かれている。

文藝春秋創始者でもある菊池寛をはじめ、里見弴、泉鏡花久米正雄永井荷風直木三十五武田麟太郎川端康成大佛次郎林芙美子太宰治織田作之助坂口安吾、サトウ・サンペイ、小松左京星新一後藤明生など馴染みとしていたバー。日本文学好きとしては馴染みにしたい店だ。

まずはジン・トニックで乾杯。レモンの香りがさわやかで、ごくごく飲める。お通しのジャパンピクルスは生姜が効いていて美味。

マスターの高崎龍彦さんは三代目。御年78歳のジェントルマンだ。太宰のエピソードや、酒に関する知識を教えてくれた。ウイスキーの話に花が咲き、二杯目はマッカランの12年。シングルモルトロールスロイスと呼ばれる銘酒で、ドライフルーツを思わせる甘みとかすかなスパイス、重厚で華やかな香りが素敵だ。

夜も更け、ラストオーダーの時間になると客は我々だけに。高橋マスターの厚意で、太宰の座った席で、林忠彦の撮った太宰の写真のポーズをさせてくれた。

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一番奥の座席に腰をかけ、椅子を2~3つ使って座るのがポイント。

いい店、いい酒、いい音楽、いい店員。やはり長く続く店は魅力が多い。もらったマッチをポケットに、店を後にした。