盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

麻布十番「可不可 KAFUKA TOKYO」に行く

新年度がはじまり、通勤電車には着慣れないスーツに身を包んだ若者が押し込められ、新たな元号「令和」が発表され、スーパーにも新物が続々入荷するようになった。春です。この時期のレストランのメニューを見るのが好きで、行く当てもないのに和食のお店のSNSを巡回して味を想像している。

そんななか、会社の大先輩・朝田さんにお声かけいただき、なんだかすごい人たちが集まる飲み会に参加した。現在は会社の重役を務める早稲田大学ラグビー部の同窓たちと、飲食・空間業界で活躍している人たちの交流会。そのどちらでもない私は「なんかお酒が好きな人」枠。役得!

お腹を空かせて向かうは麻布十番「可不可 KAFUKA TOKYO」。名前がいい。フランツ・カフカとは関係はないし、食事をしても「変身」することはない。

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暗闇坂を抜け、奥まった場所にあるので隠れ家感があるけれど有名店。

 

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落ち着いた雰囲気だけどとってもアットホーム。大きなカウンターはお客さんとのコミュニケーションが取りやすいし、料理教室などのイベントにも向いてそう。

メンバーが集まるまでヱビスビールをグラスでいただいて乾杯。泡がきめ細やかでおいしかった。朝田さんの呼びかけで集まったのは、キリンビールの臺さん、メディア制作をされている湊さん、フード・アーティストの田中淳子さん、人材育成コンサルタントをされている朝田さんの奥様。華やかな業界の方々のお話が新鮮で、世界は広いなぁと思う。お酒をスパークリングに変えて先付のエンドウ豆のすり流しを一口。

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緑色がきれいな碓井豌豆の摺り流し。白い器に映える。

空豆の青臭さがなく、でもギュッと詰まった豆の風味が香ばしくておいしい!ごはんを待ちわびた胃にスーッと入っていく。身体に春が訪れた。先付で店のレベルが分かるというが、僭越ながら、このお店、とっても美味しい。

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季節の山菜とホタルイカ白海老に出汁ジュレをまとわせた前菜。

前菜を見て、お向かいの臺さんと顔を見合わせて「これは日本酒案件ですね・・」とすかさず「黒龍 純吟」を注文。蚕豆、うるい、ほたるいか白海老、ひとつひとつの味が濃く際立つのに、出汁ジュレが優しく素材を包み込み、優雅な和のハーモニーが楽しめる。「和を以て貴しとなす」ということわざが頭をよぎる。新元号「令和」を食にしたらこんな感じだと思う。

続く前菜は、新もずくと赤貝の酢の物。酢の物好き。ちゅるんと飲んでしまう。控え目なショウガもいい仕事。「醸し人 九平次」を注文。

 

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蟹糝薯と蛤と新わかめのお椀。

お椀もお出汁がめちゃめちゃおいしくて、蟹糝薯が信じられないくらい味が濃くて柔らかい。歯ごたえのいい新わかめもごちそう。はー、和食最高。「七本槍」を注文。飲み口ガツンとして後味スッキリで好みの日本酒なので、たまにお取り寄せもしている。

その後の焼き物やご飯も当然美味しく、興奮のあまり写真を撮り忘れた。お酒はジャパニーズの赤ワインをボトルで。ココ・ファーム・ワイナリーの第2楽章というもので、クランベリーのような甘酸っぱく爽やかな風味がキュート。「マスカット・ベーリー種Aも美味しくなりましたねぇ」と臺さん。臺さん、お酒で商売しているプロなので当然とっても詳しく面白い。「来年の酒の陣は一緒に飲み倒れましょう」なんて言いつつ、楽しい時間を過ごした。

デザートのマスカルポーネと白玉が悶絶するほど美味しく、天才じゃないかと思った。和食というか、和洋折衷したモダン・ジャパニーズ。その証拠に、お酒は日本酒やワイン、スパークリングやクラフトビールを行ったり来たり。自由でしなやかな美味しいお食事でした。毎月変わるメニューを追いかけたいな。

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宮下プロデューサーと。食のカリスマと呼ばれる所以がよく分かりました。