盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

別府に行こう~別府八湯めぐり編~

「地方都市に移住するなら、一番は別府、次点で岡山」

別府という街を、そのくらい気に入っている。ご飯が美味しい、お酒が美味しい、人が優しい、かつ温泉に入れる!行くと元気になれる街、別府。もし今すぐ2兆円が降ってきたら、即移住するだろうな。

そんな思いもあって、母親を別府に連れて行った。母親は、変形性関節症の手術で7~8月入院しており、湯治をしたいと言うのだった。「リハビリを兼ねて温泉地に行きたいんだけど、どこがいい?」と言うから、「ぜったい別府」と答えた。今年の春にご縁があって別府に数日滞在したことがきっかけで、私は別府が好きになった。

(余談だが、母親は退院後、野沢温泉別府温泉乳頭温泉というヤバいツアーを開催している。間違いなく常人より元気である)

今回の目的は、温泉。鉄輪温泉と明礬(みょうばん)温泉をメインに、2泊3日で別府八湯を楽しもうという趣向だ。出発前は、「1日2湯、3日で6湯まわれればいいかな~」と考えていたが、結果的に「3日間で14湯」行った。私は3日目で帰京したけれど、母親は1泊残って「4泊5日で20湯」行ったらしい。これでも結構な量だが、なんと別府は88湯ある。1/4もクリアできていない。やっぱ住まなきゃだめだ。

温泉ツアーにあたっては、仕事でもお世話になっているBEPPU PROJECTさんにアドバイスをいただいた。土地の人のおすすめする宿や食に間違いは無い。実際すごく良くて、母娘ともに大満足。せっかくなので、行った場所を記録してみる。

 

8月24日(土)大分空港→別府観光港→鉄輪温泉

まずは「アシ」の調達。日産レンタカーで車ゲット。事前に予約していて、2泊で8,000円と安かった。スタッフさんが親切で、付近のおすすめ昼食場所マップをくれた。

ランチに人気回転寿司屋「亀正くるくる寿司」に行こうとしたが、14時すぎで10組待ちだったので断念して、やはり回転寿司屋の「水天」に。こちらも店内にぎやかだったが、ちょうどランチ客の入れ替わりで入れた。回転寿司と言いつつも回っていない寿司屋で、高級感ある店構え。明るく清潔な店内が心地よい。さすがに地物の鮮度が抜群で、「白身三昧(あじ、ぶり、ひらまさ)」「りゅうきゅう」「さば」が美味しかった。ウニやサーモンは別府産ではないのでスルー。ランチでアラカルト3,000円/人程度。運転するのでお酒はがまん(えらい)。

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ネタの分厚さがすごい!シャリも大きめなので1皿の満足度が高い。

tabelog.com

さっそく今晩の宿泊先・鉄輪温泉の宿に荷物を置こう。アドバイスいただいた方には「柳家がいいですよ!」と教えてもらったんですが、この日は予約がいっぱいだったので別のところへ。母親が「貸間体験した~い♡」と言い、「双葉荘」へ。ぜんぜん料金鯛もタイプも違うんですが、ここが、超よかった。

www.owl.ne.jp

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鉄輪温泉内の立地のいいところ。老舗貸間(自炊できる安価な民宿。湯治宿)。

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中庭に地獄炊事(「地獄蒸し」と呼ばれる温泉熱で食材を蒸す調理)。24時間湯気がもうもう。

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宿泊料金は驚きの1泊3,800円(税別)!台東区民としては「山谷のドヤより安い(白目)」驚きの価格だが、部屋は6畳で2人で過ごすならちょうどいい。

「双葉荘」の女将さんがいい方で、「あらぁお母さん足悪いの?じゃあ1階にしようね」とか「地獄蒸しはいつでもしていいよ。食材は近くのスーパーが安いよ。なんてったって、温泉は24時間沸いてるからねぇ」と親切にいろいろ教えてくれた。

私は「日本ボロ宿紀行」初段ですが、双葉荘はその見た目の古さと値段、HPのクラシカルさとは裏腹に、とても過ごしやすい宿だった。建物は古いので冬は隙間風が寒いかな。エアコン有料なので真夏もきついかも。でも、1階の窓を開けたら地獄炊事が見えるロケーション(JIGOKU VIEWING)はここにしかない。

さて、車を置いて温泉めぐりスタート。ここからはノンストップ。すっぴんで失礼・・。

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第1湯「すじ湯温泉」。鉄輪温泉の泉質は「食塩質」。年季の入った加水なしの共同風呂。きれいに整備されていて、お湯の温度が絶妙だった。100円。

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別府のおふろには神棚がある。一礼をして入らせていただきます。

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第2湯「鉄輪むし湯温泉」。8畳の石室に石菖という薬草が敷きつめられていて、その上に8分間寝そべる。びっくりするほど汗をかく。湯上がりの冷たい牛乳が嬉しい。レンタル浴衣別途で510円。

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第3湯「上人湯」。鉄輪温泉のメインストリート「いでゆ阪」沿いにある。向かいの喫茶店等で入浴札をもらって入る。100円。

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第4湯「熱の湯温泉」。名前にふさわしく熱め。仕事終わりのお母さんたちが数人いらして、コミュニティになっていた。皆さん歓迎してくれた。無料!

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第5湯「双葉荘」の内湯。1日目はここまで。ギシギシ鳴る廊下を渡り、小さな共同風呂場に出る。どこもそうだけどドライヤーはないので注意。

8月25日(日)鉄輪温泉→湯布院→別府街中→明礬温泉

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第6湯「地獄原温泉」。2日目の朝、「双葉荘」から徒歩数十秒。いつも言うけど「起きて最初に考えることが、どこの温泉行こうかな~なのが最高」。

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朝ご飯は昨夜の残りと地獄蒸し半熟卵、野菜、ソーセージなど。私は地獄蒸しの才能があるのか、どんな食材もちょうどよく美味しく蒸せる。

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第7湯「渋の湯」。別府のなかでは今回ここが一番熱くて、腰まで浸かれなかった。朝イチは熱いのかな?100円。

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第8湯「塚原温泉 火口ノ泉」。別府ではなく湯布院だけど、秘湯感あっておすすめ。日本三大薬湯と言われるくらいお湯が良くって、1時間はいってた。つるんつるん。

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鉄輪温泉→湯布院→別府まちなか。ジェノバジェラート食べるよね。何回食べてもラムレーズンが好き。バケツで食べたい

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第9湯「竹瓦温泉」。別府の顔、明治12年創設の老舗温泉。唐破風造が格好良い。砂湯もあるよ。100円。

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第10湯「駅前高等温泉」。別府駅から走って数分で温泉に入れる。モダンな建築が可愛い。泊まれるらしいので気になっている。

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第11湯「岡本屋旅館」。明礬温泉を代表する旅館。前日の双葉荘とは打って変わって豪華なお宿。エントランス入った瞬間からエエ匂いがして、若いイケメンスタッフさんが荷物持ってくれて、うっとりするような良い宿だった。温泉も当然よくて、露天風呂が艶やかだった。

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夕食。「大分旬会席プラン」で1泊2食つき16,200円/人。別府では高級宿だけど、この値段でこのクオリティは安すぎるのでは。お食事どれも美味しく手が込んでて、自炊(地獄蒸しもそう)では絶対できないプロの技だった。プリンが売店で食べるよりもっと美味しくて感動。

8月26日(月)明礬温泉→堀田温泉→大分空港

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朝ご飯もボリュームたっぷり。大分は米もうまい。高級旅館で朝ご飯がフツーの旅館飯だったらガッカリしちゃうけど、ここの朝ご飯はかなり気合い入ってた。

岡本屋旅館、予約数日前に確認の電話くれて、駐車場の案内やチェックインの案内を丁寧にしてくれた。「お母様がお足が悪いとのことですが、当旅館は階段多いのでご了承いただけますか・・?」と尋ねられて、できれば入り口に近いお部屋でーとお願いしたけど、全然平気だった。車椅子の方や高齢者はちょっと心配だけど、美味しいものや楽しいことや気持ちいい温泉が待っているなら、人はルンルン歩くのです・・。すごく感じの良い旅館だったので、また行きたい。お風呂のアメニティもクオリティが高く、海外の横文字ホテルに負けないサービスが提供されていました。(シャンプーとか石けんとか枕とか鞄、売店で売ってます)

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第12湯「鶴寿泉」。明礬温泉もテクテク歩いて温泉に行ける。やっぱり泉質がいい。無料!

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第13湯「奥みょうばん山荘」。別府八湯のなかでも奥地にある秘湯めいた温泉。500円で貸切。気の良い温泉オタクのお兄さんが運営してて、興味深い豆知識をたくさん教えてくれた。需要のないサービスショット!!

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第14湯「堀田温泉」。これで別府八湯中4種類制覇。館内広くてきれい。210円。休憩室でマッサージサービスもやっていた。

温泉めぐりは以上。母親はこの後も一人でまわり、「天空湯房清海荘」「春日温泉」「野上本館」「海門寺温泉」「不老泉」などに行ったと報告があった。そして、別府市役所に行って「移住の手引きパンフレット」を手に入れたとのこと。「資格を活かした職探ししよっと☆」と行動が早い。別府を気に入ってくれて何より。

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別府、街歩きが好きな人には絶対おすすめなんですよ。もくもく湯気が香る鉄輪温泉の渋さ、秘湯めいた明礬温泉の神秘さ、明るく楽しい別府温泉の猥雑さ。

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街中に、ちょっとタメになるほうろう看板(大好物)の案内があって、ニヤニヤしながら歩くのも楽しい。

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温泉地には猫がよく似合う。猫も温泉はいるんだろうか?ま、海際で魚や残飯にありつけるのだろう。別府の猫は毛艶が異様にいい。

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昭和レトロが流行っているけれど、生半可な昭和風情じゃなくガチな昭和生活が息づいている。こういうエイジング、つくりもんじゃ表現できないんだよな。

別府で温泉に入りまくり、Twitterで温泉めぐりを実況していたら「湯あたりしないの!?」と聞かれたけど、意外と大丈夫だった。長湯はせず(塚原温泉は例外)、適度に休憩を挟み、しっかり水分と食事を取って、夜はぐっすり寝る。具合が悪くなるどころか、温泉ひとつ入るごとにどんどん健康になっていくようだった。何食べても美味しいし、どこまででも歩ける気がする。「東京帰りたくねぇ・・」大分空港から飛びたつ時泣きそうになって、羽田空港から浜松町に降り立った時に心底げんなりした。なんて空気が悪く、よどんで、暗いんだろうって。ああ、別府に帰りたい。
2兆円は降ってこないので、次なる別府行きの機会を虎視眈々とねらっている。※今年のin beppuに行くため、近々行く計画を立てています。

 

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今回は泊まれなかったけど、教えてもらったおすすめ宿。次回以降に泊まります。

beppu-yanagiya.jp

yamadabessou.jp

www.newtsuruta.com

www.hotel-arthur.co.jp

www.hanabeppu.jp