盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

「ジョジョ・ラビット」を観て、川崎の酒場を放浪する

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今年に入ってから最新作の映画のアタリをよく引きます。「男はつらいよ お帰り寅さん」、「パラサイト」など、制作者の情熱と狂気に拍手を贈りたい映画が連続する。ホラー映画を愛する私もトラウマになった「ヘレディタリー/継承」のアリ・アスター監督のヤバイ最新作「ミッド・サマー」がもうすぐ公開されるので楽しみすぎます。(アリ・アスター監督には日本の怖い風習や言い伝えをテーマにした映画を撮ってほしい)

さて、金曜の夕方、映画「ジョジョ・ラビット」を観に川崎TOHOへ。

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これは、「ジョジョの奇妙な冒険」の映画ではなく、第2次世界大戦下のドイツを舞台に、ジョジョ少年の日常を描くヒューマンドラマ。

ジョジョは時代柄立派な軍事教育を受け、国を愛し、ユダヤ人を憎み、ヒトラーを空想の友人に持つ少年。立派なナチ思想に染まった子どもなんだけれど、たまたま訓練中の事故で心と身体に傷を負ってしまうところから物語が始まる。麗しのお母さん役にスカーレット・ヨハンソン様。主要人物たちの役者も粒ぞろい。

WW2がテーマの映画と言えば、血と硝煙薫る戦場映画か、アウシュビッツの記憶が痛ましい歴史映画もあるけれど、この映画は「淡い美しい色」と「感性に響く映像美」が特徴。映画内では、ほとんどの時間が戦時中だったけれど、クスリと笑えるコメディやハッとするような美しい描写がたくさんあり、基本明るく、辛くはならない。

反ナチ映画では、クエンティン・タランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」が痛快で大好きだけど(マシンガンをぶっ放せ!)、別の角度から反ナチを訴える、新鮮なつくりの作品だった。WW2経験者が少なくなり、ナチの悪行を知らない世代が増える中、驚くべきことに、アウシュビッツは存在しなかったという言論をする人もいる。(戦争の歴史修正は欧米では禁止されています)だからこそ、何故ナチスの考えは間違っていたのか、あの戦争で何が失われたのか、何度でも繰り返し伝えていかなければならない、のです。

いわばドイツ版「この世界の片隅に」とも言える映画。「この世界」は太平洋戦争時の呉が舞台で主人公は女性なので、好対照かも。どちらも、幼い目線から見た、戦争の高揚ムードと、それに抗う良心と知性を育むことの大切さが切実に伝わります。ラストシーンは涙なしには観られない。好きな人と踊りたくなる映画だった。

あ、時系列が前後するけれど、映画の前に「丸大ホール」へご出勤。気の合うひとと、明るい時間からワイワイ呑む酒は最高だ。テーブル席で一緒になったご夫婦と話しながら、ガラが悪かった川崎の昔話を聞いたりして、うっとりするような時間が過ごせた。

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お湯割りをもらって、ヤリイカの沖漬け、ねぎぬた、アナゴの天ぷら、ぶりのあら煮などをチビチビつまむ。丸大ホールに勤めて〇十年、テレビにもよく出演するという看板娘「まちこちゃん」に注文をせっつかれながら、店内にみっちりと貼られた大量の短冊メニューとにらめっこするのも楽しい。こういうオアシスがいくつかあるだけで、都会暮らしにも潤いが出るってモンよ。

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映画の後は、心地よい余韻を携えて路地裏へ。前から気になっていた「大衆酒場おなじみ」で肉を焼いた。まずはキムチで小手調べ。焼き肉屋はキムチの質で店のレベルが分かると父から教えられたものだ。よし・・いい感じ。レモンサワーも甘くなくて良いぞ。ハラミとホルモンと大動脈近くの「イカスジ」を頼んだ。どれも新鮮だし、イカスジはコリコリした食感が良い。ごま油に漬かったにんにく焼きもパワフルで好き。(ふつうはデートで頼むものではないけどね)

すっかり気分良くなって川崎ステイ。大きな浴槽に浸かってお酒を抜いて、おやすみなさい。次記事に続く。