盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

今週は映画7本観ました~神保町シアター「珍品堂主人」等

今週はほぼ毎日映画を観て過ごした。是非観てほしい映画からそうでもない映画まで、玉石混交の1週間となった。3ヶ月ぶりに神保町シアターのスクリーンで観られたのは嬉しかったな。やはり、映画は大衆娯楽です。

なお、参考のためAmazonなどのリンクを貼っていますがアフィリエイトはやっていないので、このブログ経由で誰かが何かを買おうが私には一銭も入りませんのでご安心ください。はてなブログ無料ユーザーなので広告出ますが同様です。

 

1.「珍品堂主人」(1960年、原作:井伏鱒二、監督:豊田四郎

珍品堂主人 - 増補新版 (中公文庫)

珍品堂主人 - 増補新版 (中公文庫)

  • 作者:井伏 鱒二
  • 発売日: 2018/01/23
  • メディア: 文庫
 

名画を観て餃子を食いながら感想を語り合う「映画と餃子の会」の会長と鑑賞。「森繫と淡島コンビ観ない?」と粋な誘い、相変わらず痺れるぜ。二つ返事でGO。「映画と餃子の会」の入会基準は、「邦画の黄金期は1960年代」という熱い信念を持っていることです。現在のところメンバーは、会長と私の2人です。

ちなみに、神保町シアターは入館時の消毒、チケット売り場にビニールカーテン設置、座席の1つ飛ばし、館内はマスク着用などコロナ対策はしっかり。(キャパシティー半分で経営大丈夫だろうか?上映本数かなり絞って頑張っている)

本作は、森繁久彌淡島千景がダブル主演。森繁演じる、趣味が高じて骨董鑑定士と認められて通称・珍品堂と呼ばれる男は、会員制高級料亭「途上園」の立ち上げに関わり、周囲にいいように利用され、かつ雇われ女将(淡島千景)にこき使われ、散々な目にあう。

淡島の色香に鼻の下を伸ばし、若い女中たちの尻を追いかけ、新橋の小料理屋で囲う妾を袖にし、骨董にのめり込んで破産しかける森繫の情けなさ、哀れさと言ったら。女性たちに振り回される珍品堂=男性は、最終的に悟りの境地(開き直り?)に至るが、「男ってのはこういう生き物なのサ・・」と井伏&豊田が格好つけているように思えた。

この映画では、全編通して、伊藤憙朔の美術が冴えわたる。どこまでがセットでどこからがロケかの区別が付きづらいほど見事な作りこみ。「途上園」の全体像が分かる図面が見たいな。連れ込み宿の通りも何処か特定したい。鶯谷か、内藤新宿か。

この物語は目黒「雅叙園」の話かと思ったけれど、どうやら永田町「星岡茶寮」がモデルらしい。ある時、後輩に「雅叙園の百段階段は素晴らしいから行った方がいいよ」と話したら「叙々苑?焼肉ですか?」と聞かれれたので日本の未来を憂いています。

この日の餃子は「揚子江菜館」で。「スヰートポーヅ」と「キッチン南海」の閉店がショック。名店は行ける時に行くべし。

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tabelog.com

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f:id:sakariba:20200626002018j:imageラピュタ阿佐谷も行かねば。

 

以下はAmazonプライムで無料鑑賞。

 

2.「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年、監督:マーティン・スコセッシ

ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

ウルフ・オブ・ウォールストリート (字幕版)

  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: Prime Video
 

金!セックス!!ドラッグ!!!179分間もの間、3分に1回、金かセックスかドラッグのシーンなので貴方の理性が狂います。朝起きたらドラッグキめて、勤務時間になったらセックスして、夜ごとに数億円浪費しまくるレオ様が観られます。「タイタニック」の美青年だった時代より、薄汚れて脂が乗りまくったレオナルド・ディカプリオの方が人間らしくて魅力的。本作でゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞。

原作は、株式ブローカーのジョーダン・ベルフォートによる回想録「ウォール街狂乱日記 『狼』と呼ばれた私のヤバすぎる人生」。実話なのかよ。ウォール街の証券マンが日々の数字を相手にどれだけ追い込まれ、緊張状態で働いているのかが伺えるので、絶対に金融関係にだけは勤めたくないという思いが強まりました。

豆知識ですが、作中で「FUCK」という言葉が500回以上使われており、ドキュメンタリー映画では世界一だそう。スラングもたくさん出てくるので英語の勉強にもなる。私も始業前に「FUCK!!!」と叫んで仕事始めようかな。

3時間もあるので観るのがためらわれるでしょうが、時間にゆとりのある今こそおすすめ。真面目に働くのがバカバカしくなって元気が出ます。スピード感ある映画なので案外あっという間です。できれば酒を呑みながら観ましょう。ドラッグはNO。

 

3.「スーサイド・スクワッド」(2016年、監督:デヴィッド・エアー

スーサイド・スクワッド(字幕版)

スーサイド・スクワッド(字幕版)

  • 発売日: 2016/11/23
  • メディア: Prime Video
 

マーベルよく知らないけれど、素直に面白いし、めちゃアガる。実は今月はマーゴット・ロビー強化月間。「ハーレイクインの華麗なる覚醒」をぼちぼち観たいので復習を兼ねて。ハーレイクイン可愛い!ビッチ!クール!ホットパンツから覗くムチムチの太ももとお尻がたまらんです。メイクやファッションもイケてるよね、うっかり真似たら事案なんですが。

一人でじっくりというよりは、気心知れた人と酒呑みながら雑に観るのが楽しそうです。マーベル知らなくても全然大丈夫だったし、正義のヒーローが鼻に付くタイプのひねくれものの方が共感できるかも。ドンパチ派手だけど重要なキャラクターはあまり死なないし絶対ハッピーエンドで終わるハリウッドは鑑賞TPO選ばなくていいね。

 

4.「フォーカス」(2015年、監督:グレン・フィカーラ

フォーカス(字幕版)

フォーカス(字幕版)

  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: Prime Video
 

冒頭10分間のオサレ映像はそれなりだったけれど後はチープでつまらない。少し観て「どうせ真実の愛エンドだろ?」とピンときた。勘は当たった。観なくてよろし。

 

5.「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017年、監督:チャン・フン

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版)

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~(字幕版)

  • 発売日: 2018/11/02
  • メディア: Prime Video
 

いま日本で暮らす人は観るべき映画。なぜならば、私たちの隣国の隠された歴史に光を当てた映画だからだ。1980年の光州事件時の実話を基に描いた映画。光州事件は、実は韓国現代史における最も重要な事件なのだが、世界史・日本史に詳しくない方は「何それ?」と思うかもしれない。知らなくても映画を楽しめるし、知らないほうが臨場感や実感が得られていいと思う。私も詳細は知らなかったけれど問題なかった。

光州事件とは、朴正煕元大統領が暗殺(1979年10月26日)された後の混乱期に韓国南西部に位置する光州というところで起きた事件。市民デモ隊と軍が衝突し、市民164人、軍人23人、警察4人が死亡した。韓国内ではこの事件を市民たちが起こした「暴動」として取り扱ってきたが、民主化後には事件に対する評価が見直され、現在は「光州民主化運動」と呼ばれている。さらに事件の犠牲者たちとその遺族たちは民主化の功労者として認められ、国家から補償金の給付、医療費、交通費、光熱費の補助、税金免除、就職や就学時の加算点の付与など、厚遇を受けている。

と、こう書くと重そうに思えるだろうが、エンタテインメントとしても素晴らしい出来。脚本、音楽、美術も申し分なし。当時の光州の街並み再現は目を見張るものがある。あと主演のソン・ガンホに主演男優賞を与えるべき。このレベルの作品、邦画では1年に1本出ればラッキーなのに、韓国では年に何本もリリースしているのが本当にスゴイ。日本、映画業界は完全に周回遅れです。じゃあ何の業界が勝っているんだと考えると、パッと出てこないんですが・・。

 

6.「母なる証明」(2009年、監督:ポン・ジュノ

母なる証明(字幕版)

母なる証明(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

観終わった後に放心した。恐ろしい、何もかもが恐ろしい映画。この物語を考えて撮った監督が何よりも怖い。感動とかなまっちょろいものではない。何かを語りたくても、言葉にすると核心から離れていってしまう気がする。それでもこの映画を観た人の感想が知りたくなる。万人に進められるものではないし、拒否感や嫌悪感が勝りそうだけれど、歴史に刻まれる秀作。カンヌ国際映画祭でも絶賛された。

凄惨な女子高生殺人事件を皮切りに、事件の容疑者となった知的障がいのある息子と、息子の無実を信じて真犯人を追う母の姿を追ったサスペンス。監督は2020年代を代表する映画監督になるであろう名匠ポン・ジュノ。主人公の母を「韓国の母」と称される国民的人気女優キム・ヘジャが演じ、その息子を「ブラザーフッド」のウォンビンが演じている。

障がい者の性と、暴力や犯罪との関係という、タブー領域に踏み込んだ映画だが、不思議とコミカルで暗くなりすぎないのは監督の手腕。息子は知的障がいという設定だが、作中ではっきりと障がいについて触れるシーンはない。すべては俳優たちの演技から読み取れ、分かりすぎるほど(個人的にはグレーゾーンだと感じたが、だからこそコミュニティのはみ出し者になってしまうのが余計に悲しい)。兵役後の復帰第1作ということもありウォンビンの熱演が光る。ストーリー的に、河合香織セックスボランティア」を連想した。

ネタバレになるが、作中では、母とは何か、何をすべきか、すべきでないか、という問いと答えが繰り返される。息子を愛しているからこそ、他人の息子すら殺す覚悟を決めた母の恐ろしさ。父と娘の愛を描いた「グエムル-漢江の怪物-」、母と息子の愛を描いた「母なる証明」、家族の絆を描いた「パラサイト」。私は、映画とはつまるところ「家族のかたち」の表象だと思っているが、現代の家族モノを撮らせたらポン・ジュノ監督を置いて右に出る者はない。

 

7.「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(2018年、監督:大根仁

SUNNY 強い気持ち・強い愛

SUNNY 強い気持ち・強い愛

  • 発売日: 2019/05/22
  • メディア: Prime Video
 

ゆるふわ90年代ノスタルジー個人的には食指の動きづらいタイプの映画。普段ならば積極的に自分から観ることはない。「母なる証明」を観終わって精神的にショックを受けて、何か気分転換できる映像を流したかったので適当に選んだ。

ハッピー☆能天気☆ミュージカル映画を想像していたので、意外と喧嘩(キャットファイト)やシリアスなシーンが多くて意外だった。まー、監督が大根仁なので納得。せっかく90年代に焦点を当てるんだから、もっと掘り下げようがあるだろうに。

ストーリーは、電話しながら流し見した程度だけど、大体理解できた。全体的に冗長。コギャルたちの通学風景が眩しいオープニング10分間と、20年後に再会したコギャルたちが踊るエンディング10分間だけでよかった。

 

ところで、丸の内TOEIほか全国で「仁義なき戦い」シリーズが上映されているらしい。日曜にでも行ってこようかな。名作は何度観ても名作だし、スクリーンで観たい。なんだかんだ文句言っても、好きです、邦画。

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