盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

特別な夏だけど旅に出よう①~長崎食いだおれ編

「特別な夏」いかがお過ごしですか。

もしタイムスリップして、去年の自分に「来年は”特別な夏”になるよ・・」と伝えたら、買ってもいない宝くじが当たって2億円をゲットできたり、上野の曲がり角で偶然出会った石油王と恋に落ちてドバイあたりでアバンチュールを過ごせたりする未来を想像していたと思います。蓋を開けてみたら、新型コロナウイルスは世界的に流行るわ、緊急事態宣言は出るわ、東京五輪は開催できないわ、SF作家も想定外のとんでもない夏がやってきたんですけれど。

まぁしかし、自分や家族、友人知人たちは健康だし、色々あっても今はどうにか暮らせているし、飼い猫たちは可愛いし、石油王じゃないけど数年ぶりに恋人できたし、結構楽しく元気にやっています。

そんなわけで?、7月の連休とお盆休みを使って少しばかり遠出をしてきました。元々はゴールデンウィーク辺りを予定していたのを延期しており、今回も情勢次第で中止するつもりでした。が、直前まで悩んで決行しました。リスキーな賭けでしたし批判もあるかもしれませんが、結果的には会った人たちは現在まで変わりないと聞いていますし、行った地域でも感染は起きていないのでほっとしています。

※コロナ禍下の旅行について、色々な考え方があると思います。個人的には、1人旅もしくは少人数や同居家族との旅行であれば、出発地・目的地の感染拡大状況や個人の体調・リスクを鑑み、マスク着用や消毒などの対策を取って密を避けられる場合に限り、自己責任で行くことは可能だと思っています。ただし、無症状感染をしている場合もあるので、目的地にウイルスを持ち込まないよう、旅行前は1~2週間ほど厳しめのステイホームを行った方が安心かもしれないです。私の場合はテレワークをさせていただき、不要な外出や劇場行きを自粛していました。

約5ヶ月ぶりの長距離移動、すみません、端的に楽しかったです。ステイホームをしている期間は毎日ほとんど景色が変わらないルーティンを行っていたため、すでに記憶が曖昧なのですが、今回の旅先で出会うもの、食べるもの、知るものはすべて鮮烈でカラフルに感じました。「また旅に出るため、引き続き健康維持やステイホーム頑張るぞ」という気力も得ました。「コロナ鬱」という言葉もありますが、Withコロナは長丁場になることが予想されるので、可能な範囲でリフレッシュすることも必要だと思っています。

さて、旅の話です。この旅は長崎からスタートします。予め言っておきますが、本記事はほとんど飲食の話しか出てこないのでご了承ください。

移動手段は、今回はANAを使いました。お盆時期だというのに当日まで割引運賃の空席があり、チケットも無料でフライト変更ができるというビックリ仕様。出発の日、羽田空港はいつもより人出がなく、あっという間に搭乗手続きが終わりました。機内では「約3分で機内の空気がすべて入れ替わります」などの安全対策のビデオが放送されていました。機内サービスを極限まで減らし、あっという間に目的地に到着。お昼着の便だったのでお腹が空きました。ホテルに荷物を預けて、めしにしましょう

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新地中華街「会楽園」のちゃんぽんから始めます。いつも「江山楼」ばかり行くのでたまには別の店を。あっさり系で食べやすい。店によって味がまったく違うのが面白いです。

夜まで時間があったので、グラバー園に行きました。王道の観光地ですが庭園の大きさや展望の良さは目を見張るものがありますし、楽しいです。ハート型の敷石を探したり、長崎くんちのダイナミックさに驚いたり、土産物屋を物色したりしましょう。

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グラバー園の麓にある土産物通り。普段は旅行者や修学旅行生でごった返している通りだが、写真のように閉めている店ばかりだった。当然、客はほとんどいない。

グラバー園付近を散策し、ホテルに帰って少し昼寝。暑い中歩くのは体力使うし、夜も長いので。泊まったホテル「ビクトリア・イン長崎」は新地中華街と思案橋へのアクセスが良い、クラシック風味のシティホテル。お盆期間中でも1泊3,000~4,000円と安くなっていました。

www.victoria-inn.jp

ちなみに、旅行中にお金を遣うであろう「レジャー」「飲食」「宿泊」「移動」において、「宿泊」つまりホテル選びは私にとって最も重要度が低くこだわりがない(ホテルに泊まるのが目的の旅行を除く)ので、ロケーションと金額のバランスが良いシンプルな施設を機械的に選びます。だって、どうせ夜出かけるし寝に帰るだけだもん・・。

夕方、親と合流して「松ふじ」で夕食。地魚と郷土料理が美味しい、地域の人御用達の気さくな割烹です。ここに行く場合、刺し盛りとバッテラを絶対頼んでください。

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思いのほか早々に解散したので、とりあえず「雲龍亭」に長崎餃子でも食べに行きましょう。

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長崎に来て「雲龍亭」の一口餃子を食べなければ餃子好きの名が廃る。皮が薄めのパリパリで美味しいです。半熟のニラ玉もおすすめです。

餃子を食べてようやく人心地つきました。まだ早い時間だし、偵察がてら軽く呑みに行こうか、とBAR NAVIに掲載されていた「arcana Mixology&FlairBar」へ。ミクソロジーとは、フレッシュなフルーツや野菜、ハーブなどを使うカクテルらしいです。へぇー。小さな店ですが来店人数を絞り、換気をしながら営業していました。今年の4月オープンしたばかりだそう。

bar-navi.suntory.co.jp

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季節のマスカットを使ったショートカクテル。一口飲んで確信します。ここ、好き。

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彼が頼んだシャボン玉カクテル。食べられるシャボン玉を使い、中にはフレーバーのついた煙が入っています。独創的。ストローをぶっ刺して飲みます。

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旬の果物や野菜を使ったカクテルも見事でしたが、スパイスやハーブ遣いに唸りました。アールグレイに漬けたジンのソーダ割りも素晴らしかった。全メニュー制覇したい。

小1時間で3杯呑んでお会計。あまりの安さに「え?計算間違ってないですか?」と聞き返してしまった。合ってました。コスパも良いですが、マスターの感じも良く、絶対また行きたい店です。ノンアルコールもやっているので、お酒が飲めない方やお一人様でも大丈夫です。旅先で素敵な店に出逢うと嬉しくなりますね。

ホテルに戻って寝ます。初日から飛ばしすぎないことが、旅を長く楽しむコツです。2日目からはフリープランで進行です。

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朝ご飯は東洋軒の「サラダパン」と変わりパン。おっぱいパンは彼チョイスです。思案橋の「ぱんのいえ」で購入したら、キャンペーン中だったらしくサラダパンがもう1本もらえました。

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午前中のうちに、昨日のうちに予約しておいたヘリテージクルーズへ。遊覧船で内海をめぐり、明治日本の産業遺産である三菱ドックや、女神大橋、島々を船上から見物します。

www.kankomaru.net

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出島ワーフでトルコライスを食べました。ピラフ、豚カツ、スパゲッティをひとつの皿に盛り合わせたハイカロリーな長崎名物です。実はこれまでバカにしており、初めて食べました。美味しかったです。

午後は出島見学です。出島は、日本が鎖国をしていた時代の約200年間、唯一西洋に開かれていた貿易の窓口と言われています(諸説あります)。19世紀、島内には住居や料理部屋、蔵、番所など49棟もの建物がありましたが、現在そのうちの25棟を復元させるための事業が進んでいます。頑張って復元していますが、埋立によって「島」感は薄いので、いっそのこと、周囲の土地を買い占めて出島完全再現してくれないかなぁと密かに願っています(無理です)。

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観終わったあたりで、暑さに弱い私は体力切れて寝始めたので、また昼寝をしにホテルに帰ります。この頃、加齢で無理がきかなくなってきたのか、引きこもりすぎたのか、急に身体のブレーカーが落ちてどこでも寝始るようになりました。

夕方起きて、平和公園へ。原爆投下日、終戦記念日が近いことからロウソクによるライトアップが行われていました。神妙な心持ちで、世界平和と鎮魂を祈ります。

稲佐山からの夜景も見たかったのですが、意外とあれは行き来に時間がかかるので、次回にまわします。公園付近を散策してお腹が空いたので思案橋に戻ります。「よこはま」のちゃんぽん食べましょう。

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店の軒先で客寄せをするにゃんこ。長崎には地域猫がたくさんいます。尾曲猫が多いです。

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「よこはま」のちゃんぽんと餃子。ミルキーだけどあっさりスープでするする食べられます。ここの餃子も皮が薄くて瞬殺です。

浜の町アーケードを通って、涼を取りに老舗のバー「セラー・ランプライター」へ。長崎で一番古いバーとして知られ、他地域から訪れるバー好きも多いとか。店内所狭しと飾られた様々なお酒グッズのコレクションは一件の価値あり。私はトリスグッズが好きです。

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ジントニックを作ってもらってから、ホワイトレディ。軽快な飲み口。

あー、生き返ったー、とようやく涼しくなってきた夜の入り口を喜びながら、明日以降の予定を検討。何があるか分からなかったので、すぐに旅程を変更できるように飛行機は行きしか予約していなかったのだ。このまま旅を続けても問題なさそうな雰囲気だったので、2日目の夜にして考え始めた。行き当たりばったりです。

結論として、かすみ玲ちゃんの乗っているニュー道後ミュージックに行くことを目的に、長崎→松山の移動ルートを長崎→福岡(小倉)→広島→松山に細分化することにした。福岡は繁華街を避けて、小倉泊。ええ、分かる人は分かるでしょうが、ストリップ劇場巡礼の旅になりました。

そうと決まればサクッと各地のホテルと帰りのフライトを予約。どこもすんなり取れました。ネットが普及して、本当に旅がしやすい時代になったものです。翌日の長崎→福岡の出発時間だけ決めて、あとは長崎の最終日の夜を堪能しましょう。とっておきのバー「アージョ」にご案内。

tabelog.com

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「Agio Bar&Cafe」店頭はこんな感じ。

一見、入り口が分からない店ですが、本棚を押すと隠し扉が開きます。秘密基地みたいで、初めて行くと盛り上がるので、女性を口説くのにピッタリです。・・もちろん男性も。店内はムーディーで落ち着いていて、ずらりと並んだ酒瓶がキラキラ輝いています。誰か大切な人(酒呑み)と長崎に来たら寄ってほしいお店。

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いちじくのカクテルを作ってもらいました。夏らしいフローズンカクテルです。ここもミクソロジーカクテルを出していたので、長崎で流行っているのかもしれません。

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マッカランの飲み比べ、という贅沢なメニューがありました。12年、18年、クラシックカットの3種で2,500円だっけな?安い。初めて飲んだクラシックカットがとても美味しかった。

長崎は美味しいもの、楽しいところばかりなのですが、アジアからの訪日観光客や修学旅行生がゼロに近くなった結果、街はガラガラに空いています。いつもなら予約をしないといけないお店も空いています。このままだと続けていくのが難しいお店も多そうです。都心で暮らしていると分かりづらい観光業や飲食業の状況を見て、どうやったらこの事態を打開できるのか、頭を抱えてしまいました。行ける人は、行けるうちに、行きたい場所へ行くしかないような気がします。

とは言え、いい夜です。旅はまだまだ続きます。