洪福寺松原商店街でナゾ野菜を買って調理した
昨夜から降り続けていた雨は雪には変わらず、横浜市内では昼過ぎに降りやんだ。天気予報によれば夕方からはまた小降りになるらしい。その雨間を縫って散歩に出かけることにした。
まだ歩いたことのない、黄金町駅の北側、藤棚浦舟通りを直進してみることにした。横浜は山を切り開いて宅地開発をした地域が多い。山と谷の境目が分からなくなるようなアップダウンをいくつか繰り返した先に、昔ながらのアーケードが可愛らしい藤棚商店街があった。日曜日だからかコロナ禍だからか、営業している店よりもシャッターを閉めた店の方が多かった。「横浜天晴」という屋号の餃子屋があったので反射的に生餃子を買おうとしたが帰りに買おうと諭された。確かに散歩の前半に生物を買うのは愚かだ。
静かな商店街を通って、相鉄線の西横浜駅が現れた。相鉄線には、大和ミュージック劇場に行く時にしか乗ったことがないので馴染みがない。それも特急や快速ばかりなので、各停の駅の名前はほとんど認識していなかった。車両基地にもなっているらしく、新旧車両が並んでいた。
しばし歩いた。冬らしく気温は低いものの湿度のおかげでそこまで冷え込んでいない。ほどなく街が開けてきた。洪福寺松原商店街の入り口に立った。
ハマのアメ横と呼ばれているらしいが、上野のようなアジアの雑多は雰囲気はなくどことなく品の良さを感じる。上野のアメ横は足を踏み入れた途端に魚の臭いやケバブの焼ける煙、チョコレートを叩き売る男の声、輸入品を高値で販売する店に誘導する黒人たちの声に包まれる。ハマのアメ横は、せいぜい韓国食品店でキムチを売っている程度で、しかも福富町のキムチ屋よりも清潔そうだ。ただ、青物市場の相場は値頃で下町らしい活気がある。「いきな下町」のキャッチコピーで知られる横浜橋商店街のよりも下町らしいと思った。
団子屋でみたらし団子を買って食べた。香ばしい醤油の匂いと柔らかい団子が美味しかった。昔ながらの商店街には団子屋が欠かせない。店先で団子を頬張る私の姿を見た子どもが、隣にいる父親に団子をねだった。客寄せに成功した。美味そうに食べる客がいる店に惹かれるのが人情だ。
食べ終えて商店街探索に戻った。ローカルなスーパーマーケットがいくつかあったが、店先に切り花や珍しい野菜類を並べた「BIZEN MERCATO」が気になって入店した。ディスプレイが凝っていて、パリのマルシェのようなワクワクする気配を感じた。
店内には輸入食品や色とりどりの野菜類が陳列されており、やはり見たことのない青果が気になった。店内を流して「デストロイヤー」なるジャガイモを見つけた。
破壊者…?ジャガイモに随分と深刻なテーマを背負わせている。赤紫色の皮が毒々しく、スーパーマーケットで売っていなければあまり食べようと思わない見た目だ。オススメの食べ方は、肉じゃがやシチューらしい。案外普通だ。
後にインターネットで調べると、デストロイヤーという名前はプロレスラーから引用したらしい。白覆面の魔王と呼ばれ、力道山やジャイアント馬場らとも戦った。
そう言われたら似ていなくもない。ひとまずデストロイヤーをカゴに入れて店内を散策し、酒売り場で足が止まった。
見たことのない輸入ビールが並んでいた。宝石のようにキラキラと輝いている。カルティエのジュエリー売り場に立った気分だ。美しい缶のパッケージに見惚れた。どれもいい値段が付いているが、ひとつずつ買って試してみたい。
日本酒の品揃えにも力が入っていた。下手な酒屋よりも品数が多いだろう。ワインも同様に面白い品揃えだったが、ウイスキーにはほとんど気を配っていないのが面白かった。
会計を済ませて店を出て、やはり山と谷を越えて帰宅した。家から片道1時間以内で行ける楽しい場所を見つけられて嬉しかった。帰り道、餃子屋に寄るのを忘れなかった。
早速、デストロイヤーを使った夕飯に取り組んだ。メインは肉じゃがならぬ肉デストロイヤー。
皮を剥いたら鮮やかなレモンイエローが現れた。この時点で美味しそうだ。肉じゃがの肉は関西と関東で牛派・豚派に分かれるらしい。どちらでもいいが、なんとなく関西流に牛肉の切り落としにした。絹さやは省略した。
デストロイヤーはサツマイモとジャガイモの中間のような味わいで、ねっとり甘い。煮崩れしにくいので煮物に最適だ。通常のスーパーマーケットではお目にかかる機会はまだ少なそうだが、是非リピートしたい美味しさだった。
ほか、先日パナソニック汐留美術館の帰りに寄った愛媛物産館で買った鯛めしの素を使って鯛めしを拵えた。さっき買った餃子を焼いて、汁物代わりに湯豆腐を添えた。餃子はニンニクが効いていて好きな味だ。我ながら、甘から酸っぱいのバランスが取れた献立が出来て満足した。日曜の夜にきちんと夕飯を作ると、月曜からの仕事も頑張れそうな気がする。ハマのアメ横、またナゾ野菜を買うために行きたいな。