盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

日ノ出町「たつ屋」で豚骨ラーメンを食べる

九州の仕事があった頃は食べまくっていた豚骨ラーメンも、関東地方にこもっているとあまり食指が動かない。それでも月に一度くらいは、あの白く濁ったスープに会いたくなる時が来る。今日がその日だった。きっと、夜寝る前にインターネットで「本物の豚骨ラーメンは甘い。関東の豚骨ラーメンは偽物だ」という誰かの呟きを見たせいだ。

午後の出社前、お腹に何か入れておきたかった。職場近辺では納得のいく豚骨ラーメン屋は出会えていない。

tabelog.com

何度か目の前を通っていたので、日ノ出町駅前に豚骨ラーメン屋があるのは知っていた。えいやぁと飛び込んでみた。スーツ姿のサラリーマン、作業着を着たおじさんたち。店内は7割ほど埋まっていた。いいじゃない。昼前にワーカーが駆け込みたくなるような店ってことね。

さて、自動券売機の前でにらめっこ。初めて行く店では、注文は緊張の一瞬だ。しかも食券システムの店では、長々と券売機を占領するわけにはいかない。一撃必殺だ。

「豚骨ラーメン全部のせ800円」にも惹かれるけれど、ランチ時の強みを生かして「豚骨ラーメン650円」に「ランチサービス90円」にした。ランチサービスは、味玉、ネギ、のり、メンマ、替え玉などからトッピング2品を選べる心意気だ。せこいランチでも選べる楽しみがあるのが嬉しい。味玉とネギをオーダーした。セルフサービスの水を注いで席についた。

隣のお兄さんに「豚骨ラーメン全部のせ」が提供された。味玉、のり5枚、大ぶりのチャーシューなどが威勢よく乗っけられてボリューミー。おいしそう。しまった、あっちにしとけばよかったか?

いやいや、「足るを知る」ことが肝心。

間もなく着丼。

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いい面構えだ。味玉の半熟具合は憎らしいくらい完璧。しかしよく考えたらネギは無印ラーメンにも乗っているんだから、トッピングのネギは余計だったか?

そんな雑念は、スープをひと口飲んで吹き飛んだ。塩辛くなく、甘い。博多で食べた豚骨ラーメンと限りなく同一。臭みもなくまろやかな味わいは、とても優しい。フランス人は豚骨ラーメンの麺よりもスープが好きだと言う。今ならばその気持ちがよく分かる。フレンチのフルコースの前菜として豚骨スープを出してもよいのではないか。

自家製麺は細麺でスープがよく絡み、小麦粉の豊かな香りが鼻腔をチュルチュルくすぐる。ネギの軽やかな歯応えは豚とダンスを踊っているよう。シャキシャキのキクラゲがマラカスを鳴らしてムードを盛り上げる。味玉の黄身は官能的に濃い。カウンターで「ご自由にどうぞ」と待ち構える高菜は激辛だから入れすぎ注意。

胃の中が一気にパーティー状態になった。飛び込みで入った割に、どストレートにおいしい豚骨ラーメンを食べることができた。満足して、水を一気。ラーメンを食べた後の水って、世界で一番おいしい水だと思う。摂り過ぎた塩分は夕食で調整しよう。

昔の人は塩を舐めながら働いたそうだ。よし、今日も働くぞ。