久しぶりの別府に行こう~温泉&バーホッピングで整いまくり
年末年始は都内の実家に行ったり、横浜でのんびりしていたらあっという間でした。とはいえ相当長期で休みを取った。クリスマスから6日までという堕落ぶり。ゴールデンウイークやお盆期間にあまりまとまった休みを取らなかったので、有給が溜まっていたのです…。社会復帰できるか心配なレベルですね。
年末はあっという間に過ぎ、お墓参りや初詣をしていたら3日になっていた。通常の社会人は4日から仕事だと言う。早すぎん?
いやしかし、今年の私は一味違うぞ。なんと4日から1泊で別府に行ったのです。大好きな別府。毎年最低1回は行っていた別府。コロナ禍で約2年ぶりの別府。オミクロンの脅威迫る中、ギリギリのタイミングで行けました。
別府に最初に行ったきっかけは「BEPPU PROJECT」のアートイベント鑑賞だけのはずなのに、その土地柄や温泉の泉質、住人たちの優しさに魅了され、今や移住したい県ナンバーワンの座をほしいままにしております。私にとっての癒しスポットでもあり、自分らしくいられる地域でもあります。
朝イチの飛行機で羽田空港に行き、大分空港でリムジンバスに乗ったら昼には別府市街に到着。機内はお正月帰省が終わって空いていた。大分に来たぞと頭では分かっているけれど、あっという間すぎて身体が追いついていない。
まずは腹ごしらえですね。新年だし、景気よくお寿司スタートといきました。別府到着即、電話予約をした「大和田鮨」へ。通常は予約の取れない人気店です。
店内は写真NGなので様子は伝えられませんが、関あじ・関さばをお造りでいただきつつ、数の子のつまみ、カワハギのお刺身(肝あえ)あたりをオーダー。休日らしく昼間っからお酒もいっちゃいましょう。
まずは瓶ビールで喉を潤して、地魚に合わせて地酒の和歌牡丹、西ノ関、知恵美人を。そしてここぞというタイミングで特上にぎり。ご、極楽…!わずか1時間の滞在でしたが、口と胃で別府の祝福を浴びることができました。新鮮な海の幸と緑酒を口にして、ようやく今別府にいるという実感を持てた。
明るいうちから散歩しよう。夜には一変する景色。日本一の湧出量を誇る観光地・別府は、夜の街としても人気が高いのです。
今では貴重なピンク映画館もあります。昔はストリップ劇場もありました。別府は猫の街としても有名で、何気なく撮った写真に猫が映り込むこともしばしば。
いつ見ても写真に撮りたくなる「エッチ美容室」。迎春仕様だった。そこの人、回春とか言わないの。
駅前は再開発が進んでいますが、路地裏に情緒が残っていて、昭和の片鱗を探すのも楽しい。国際民宿というのは、訪日外国人をお迎えできる資格を認められた宿に与えられているもの。コロナ前は日本全国で訪日外国人をお迎えしていましたが、そのずっと前から別府は広く開かれていたんですね。
商店街に突如現れる「やよい天狗」。すごく立派でご利益がありそう。写真撮影者が「ちょっとそこで手をあげて」と言うので言う通りにしたら、なんか卑猥な感じに…。
お腹を満たしたので、いよいよ温泉に入りましょうか。まずは、レトロな建築も魅力的な「駅前高等温泉」へ。駅前かつ街のど真ん中にある温泉です。白壁に緑色のトンガリ屋根。大正浪漫をまとった姿。ぬる湯・あつ湯は各200円。今日はぬる湯気分だ。
さっと衣服を脱ぎ捨てて、生まれたままの姿になって湯船に浸かった。とろんと滑らかなお湯が肌に優しい。少しして妙齢女性が入ってきた。「こんにちは」と挨拶してくれ、短い時間世間話をした。これ、湯浴みケーションとでも言うべき別府文化。街の住人だろうが観光客だろうが、一緒にお風呂に浸かっている間は関係ない。相手が誰だろうと挨拶して、「今日は寒いですね」とか「湯加減大丈夫ですか」とか話しながら、いつの間にか晩の献立や最近観たテレビ番組の話なんかをしているんだ。「先に出ますね、ごゆっくり」「これからですか、楽しんで」行き交う人々がかけ合う言葉のあたたかいこと。
のぼせる前に上がって瓶の牛乳を飲む。湯上りに飲む冷えた牛乳って、どうしてこんなに美味しいんだろう?別府の湯は身体の芯まであたためるので、湯から出てもまったく冷えない。いつまでも汗がひかないので難儀するくらい。だから別府は冬がいい。
ちょうどチェックインの時間になったので今晩泊まるホテルへ移動した。駅前から歩いて2〜3分ほどにある、2021年12月にオープンしたばかりの「アマネク別府ゆらり」へ。
コンクリート打ち放しの外装、屋上にはインフィニティ温泉プール、最上階には展望大浴場・露天風呂を配し、伝統工芸である竹細工をモティーフにした洗練されたデザインが特徴。
ホテルのコンセプトは「地域活性化」らしく、旅館にありがちな囲い込み(チェックインしたらホテルから一歩も出ない密室滞在)はなく、積極的に街に出て行ってもらうことを重視している。温泉はもちろん夕飯も街に行くことが前提で、カードキーを使って街のお店でツケ払いができる「HEYAZUKE(部屋付)」システムを世界で初めて導入したそう。商店街を巻き込んだホテルづくりって面白い。
1階のロビー・ラウンジではウェルカム・ドリンクがふるまわれており、スパークリングワインもいただけた。
別府の街並みが一望できるビュー。浴衣やスリッパはSHIPSが監修したお洒落なデザインだった。
屋上にはインフィニティ温泉プールがある。シンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」ならぬ「マリーナ・ベップ・サンズ」…。別府市街から別府湾そして自然豊かな山並みを一望できる、別府屈指の眺望が広がる。温水プールと言えども冬場のプールサイドは寒いので、春から秋の方が楽しめるかな。子どもたちが喜んで泳ぎまくっていた。
このホテルは九州のテレビや雑誌で紹介されているのかな。大浴場で話した宿泊者たちは「一度泊まってみたかったの」「出来たばっかりのうちに行きたくて」と口々に言っていた。確かにいいホテルだった。まだオペレーションが完璧でない部分もあるけれど、次もここに泊まりたいと思った。別府って、意外と宿泊場所に困るからね。民宿とリゾートホテル、ビジネスホテルがはっきり分かれすぎていて、痒いところに手が届きにくいから。夜は飲み歩きたいから寝るだけの設備でいいけれど、折角なら部屋はお洒落で過ごしやすく、寝起きに浴衣で行ける大浴場もほしいじゃない。
ホテルの温泉も楽しんだので、夕飯に出かけますか。ノープランだったけれど、ダメ元で郷土料理が美味しい「ろばた仁」に電話したら予約できたので駆け込みで。みんな大好きな地元の居酒屋「チョロ松」は改装工事中のためお休みでした。
ブランド牡蠣の「国東オイスター」を初賞味。小ぶりだけどきれいな海の味がした!
特産「かぼすブリ」サッパリしているのにねっとり甘くて美味しかった。かぼすを含んだエサで育てられているらしい。おすすめ。
牡蠣好きなのでフライでも。揚げたて最高。タルタルソース美味しい。
お酒は端っこからどんどん飲みます。焼酎の国らしく良い銘柄が揃っております。そして安い。1時間くらいしてひと通り名物をいただいたところで、店内は満席。予約なしで突撃するお客さんがどんどん断られて出て行く。長居せず席を譲ろうかということにして、次の店に移動。外はすっかり真っ暗で酔客がちらほら見える。
「喜界島くろちゅう会館」のように面白いテナントビルが多くある。後ろに座ってるおっちゃん、何してるんだろう…。
2年ぶり、絶対行きたかったバーへ移動。もちろん「峰 シティパブリック」!
「別府に行くんだ」と知り合いに言うと、結構な確率で「峰には行くべし」と言われるし、私も人にそう言っている。別府が誇る老舗バーなのである。なんと70周年!
見てよこの瀟洒な店内。数十年前から時が止まったかのような空間が広がっている。バックバーの所せましと並べられたオールドボトル。このボトル群を見るために「峰」に来るバーテンダーさんも多いんだとか。感染対策のビニールですらインテリアに見えてしまう格好良さ。「峰」は御年86歳くらいのマスター・赤嶺さんが一人で営業している。その昔、アメリカ進駐軍相手にカクテルを作った経歴をお持ちで、日本のバー文化を築いてきた、時代の生き証人。
彼の作るカクテルは、ほろ苦い現実を忘れさせるくらい強烈に甘い。1杯1杯丁寧に、心を込めてステアする様に思わず合掌したくなる。
撮った写真は自由にSNS等に使っていいとのこと。赤嶺さんは「峰がまだ営業していること、全国の人に知ってほしい。あと何年カウンターに立てるか分からないから早く来てほしいですね」と言っていた。コロナ禍はほぼ1年間休業したんだとか。その前は事故や病気で入院する等、営業も不定期だった。今はほぼ通しで開けているとのことなので、この機を逃さずに訪れてほしい。
初めて見るバーボンをいただいたり。コーンウイスキーの強さはガツンときた。
「峰」にはカラオケ設備があるが、これまで歌ったことはなかった。せっかくなので記念に、中森明菜の「セカンド・ラブ」を歌ってみた。昭和な空間は歌謡曲が切なく響く。居合わせた方々、あたたかい拍手をいただきありがとうございました。
赤嶺さんとパチリ。昔から変わらない、赤チェックのベストがよく似合う。70周年記念のマグカップもいただいてしまった。大切にします!そしてまた来ます。
「峰」を後にしてフラフラと。ノープランでネオン街から商店街へ散策をする。別府は来るたびに新しい店が出来ていて、しかも若い移住者が始める店なんかも多いので、行先を決めずに気の向くまま歩いて、ピンと来る店にお邪魔するスタイルが合っている。
北浜通りを歩いていたら、「HELL(地獄)」と書かれた看板を見つけた。「THE HELL」というミュージックバーらしい。店内を覗くと、陽気なディスコソングで男女2人が踊っていた。楽しそう。入ってみよう。
地獄という店名とは裏腹に店内は小綺麗で、さわやかイケメンな男性店主(ケンゾーさん)が一人で営業していた。良い意味で別府っぽくない、どちらかと言うと中目黒っぽい雰囲気のお洒落なお店だ。
自家製のシロップや果実酒を使ったサワーはどれも美味しかった。バイブス効いたレコードを聴いて、眼鏡男子のケンゾーさんとアートの話をしながら飲むサワー…うん、まごうことなき中目黒だ。
ケンゾーさんは別府に惹かれて移住してきたクチで、前は都内なんかでデジタルマーケティングの仕事をしていたそうな。喋ってみると別府の共通の知り合いも多く、同い年なことも判明した。こういう新しい感性と才能を持った若者がいる限り、別府の未来は明るいと思える。
さっきまで踊っていた男女もほぼ同い年で、東京からやってきたと言う。Facebookを交換し合っていたら、カウンターの端にいた20代ヤングが「Facebook…?古くないっすか」と呟いていた。そうか、もうFacebookでつながるのは古いのね…。今はインスタとTikTokが主流なのかと軽くカルチャーショックを受けました。こうして人は老いを実感する。
もう1軒くらい行ける時間だ。スナックもいいけれどさっき歌ったし、初見ではどの店に行くべきか判断つかないので、やっぱりバーに行くことにした。夜道をふらふら歩く。
「スナック黒人」の店名にビビる私。一押しの別府スナックをご存知の方はご一報願います。
で、素敵な外観に惹かれて「元町バー」に行った。バックバーと天井画が壮観の隠れ家的スポット。
https://www.instagram.com/beppumotomachibar/
ここに来て正統派ギムレットにありつけた。こちらの男性店主も、趣向を変えたイケメンヤング。別府には魅力的なバーテンダーさんがたくさんいる。早く閉める店が多い中、深夜3時まで営業しているのは酒飲みの強い味方だ。喧噪から離れた静かな空間に癒された。今夜もいい〆。ホテルに戻って即寝。
翌朝は朝寝坊できるのが旅の醍醐味。朝風呂で目を覚まし、朝食のラストオーダーに滑り込み。ここは朝食が人気らしい。どれどれ。
お分かりいただけるだろうか?お米がピンピンに立っております。1膳ずつ炊き立てを用意していて、ご飯のお供として別府名物やお米に合うオカズを何でも食べ放題。このお米がびっくりするほど美味しくて、つい食べ過ぎちゃう。アマネクに泊まる方はご覚悟あそばせ。
さて、チェックアウトして、フロントに荷物を預けていざ出陣。夜のフライトまでたっぷりフルで時間があるわけですが、どこに行こう?
ま、あれこれ考えるのは後にして、別府に来たら外せない竹瓦温泉へ。どうよ、この痺れる格好良さ。
湯上り牛乳は幸せの味。別府では一日に何べんも温泉に入るので、最初からすっぴんでいたほうが楽という結論に至る。髪を乾かすのが面倒なので、今だけはショートヘアになりたいところ。食事→温泉→食事→温泉→酒→温泉→酒という無限ループが楽しい。たくさん食べて、温泉入ってお腹空かせて、たくさんお水飲んで、温泉入って汗かいて、ビール飲んで、食べて、眠る。2日間いるだけで身体中の水分が入れ替わったんじゃないかってくらい、水を飲んだし出した。コンビニで買うペットボトルの水じゃなくて、水道水の水で十分美味しい。
さて、そろそろ「SELECT BEPPU」が開店する頃だ。普段あまりお土産らしいお土産を買わない私だけど、別府に来たら必ずチェックするのがここ。「別府のまちのセレクトショップ」をコンセプトに、アートでクリエイティブなオリジナル雑貨が揃っているのだ。
築100年を越える長屋を改装したお店は、街の中にすとんと溶け込んでいる。
2階で展示しているマイケル・リンの襖絵も必見。
お目当て買えました。大分県国東市に工房を構える「よつめ染布舎」さんの2022年のカレンダー。温かみのあるデザインに惚れ込み、毎年このカレンダーを使っているのだ。今年もお世話になります。
天気もいいし、バスに乗って鉄輪(かんなわ)温泉に行こう。青空に湯けむりが立ち上る景色を心に焼き付けよう。
街のあちこちからもうもうと立ち昇る白い煙!大丈夫、火事じゃありません。全て100度に近い源泉からの湯けむりです。鉄輪温泉は別府に8つ点在する温泉地、いわゆる「別府八湯(はっとう)」の1つ。海と山に挟まれ、南北に長く広がる別府市のほぼ真ん中に位置する傾斜地にある。
周囲には白池地獄や鬼石坊主地獄など、噴気や熱泥、熱湯が噴出する「地獄」を活かした観光スポットがあるほか、大型の温泉リゾートや和風旅館にまじり、昔ながらの湯治宿、貸間などの宿泊施設が点在している。別府八湯めぐりについては、2年前に書いたこちらもよければ。
今回、このタイミングで別府を訪れた理由は「in BEPPU」の鑑賞のためでもある。
「in BEPPU」とは、毎年1組のアーティストを別府に招聘し、地域性を活かしたアートプロジェクトを展開する個展形式の芸術祭。6回目を迎える本年は、世界的に知られる服飾デザイナーの廣川玉枝さんを招聘した。彼女の作品はレディー・ガガのMVでも使われているし、私もSOMARTA(廣川玉枝さんのブランド)の服を数着着たことがある。女性用ストッキングがおすすめです。
今回の「in BEPPU」のテーマは「祭り」。廣川玉枝さんは、異界から訪れた神「まれびと」として火、風、水、土など6役を想定し、それぞれの衣装をデザイン。祭り当日は、市民ら12人が「まれびと」に扮し、鉄輪地区を練り歩いた。100年続くかもしれない祭りの1回目が2021年にスタートしたのだ。通常のアートイベントでは考えられないスケールの大きさにゾクゾクする。当日の様子は下記リンクの動画からどうぞ。必見!
「鉄輪むし湯」が「in BEPPU」仕様で恰好良くなっていた。青空に濃い赤が映えること。
館内も彩られ、働くおねーさま方の衣装も廣川デザインに。ちょっとアイヌっぽい。
しめ縄にテンション上がりますね。ここのむし湯は独特の形式をとっており、1m四方の木戸を開けて中に入ると約8畳ほどの石室がある。温泉で熱せられた床の上には石菖(せきしょう)という清流沿いにしか群生しない薬草が敷きつめられていて、その上に横たわる。8~10分間かけて蒸され、身体がすっかり石菖の香りに包まれたら石室から出て、源泉かけ流しの温泉に浸かる。
石菖は発汗作用が高く、特に気管支の病気に効果があると言われている。蒸し湯の中は75℃とかなり暑く、耐えに耐えて石室を出た時の解放感ときたら!
蒸された女。肉まんや小籠包の気持ちになりました。むし湯のベランダで全裸外気浴をしたら、この世のすべてがどうでもよくなります。別府の空気と水と光と大地が身体に染み込んでいく。今さえよければすべてオッケー。地獄は極楽じゃ。
お腹いっぱい朝ごはんを食べたはずなのに、すっかりお腹がすきましたよ。地獄を散策していたら、地獄蒸しができる施設を見つけました。「里の駅かんなわ」で、足湯に浸かりながら地獄蒸しを食べました。足湯がかなり高温で、アチアチ言いながら。何はともあれ、湯上りビール最高。
緊急速報で、東京に大雪警報が出ていることを知った。別府はこんなに晴れてて暖かいのに、東京は大変ねぇなんて思いながら。帰りの飛行機は無事に飛ぶだろうか。
夕方に差し掛かる16時頃、またバスに乗って別府市街に戻った。商店街のトキハに寄ってお土産散策。だいぶテナントが抜けたようで少し寂しい。
大概の居酒屋が17時スタートなので、15時からやっている「海鮮 居酒屋 海山」で最後の晩酌を。「りゅうきゅう(地魚の漬け)」や「とり天(鶏の天ぷら)」、「団子汁」、「太田のギョロッケ」などを食べながら別府を惜しんでいたところ。
これから乗る予定だった飛行機が欠航するという情報が入った。
調べたところ、都内は10cmほど雪が積もり、軽くパニック状態になっているそうだ。Twitterは阿鼻叫喚状態。ホットなキーワードは「大雪警報」「帰宅命令」「電車運転見合わせ」「帰宅難民」…。そんな状態なら、当然羽田空港にランディングできないよねー。
よし、もう1泊しよう!(決断まで10秒)
「明日から仕事初めの予定だったんだけどな(真実)、仕事したかったんだけどな(本心)、帰れないなら仕方ないよね(苦渋の決断)」と言いながら、笑顔でアマネク延泊と翌朝の飛行機を手配。
延泊となると、まだ別府に滞在できるってことで、17時以降オープンの店がすべて候補として立ち上がってくるぞ。昨日行っていないバーにも行ける。盛り上がってまいりました…!ピンチはチャンス。トラブルはラッキー。こういう時あまり動じずにポジティブな発想しか出てこないのは得な性分だな。1分1秒でも長く別府にいられてハッピー。…雪で往生していた皆様には申し訳ないですが。
じゃ、そうと決まれば温泉に行こう。近場の「梅園温泉」へ。1916年創業。
ここは2016年4月の熊本大分地震で被災し、取り壊しに。地元の人たちと温泉愛好家たちの尽力により、2018年12月にリニューアルオープンとなった。再建費用の一部をクラウドファンディングで募集したことから話題を呼び、目標金額500万円を大きく上回る約620万円が集まった。別府の温泉愛を感じられる地域の名湯です。
湯上りぶらり。
ジェラートが美味しい「ジェノバ」で恒例のラムレーズンを。季節限定のラフランスも美味しかった。一度ホテルに戻って再チェックイン。荷物を部屋に戻して、今夜の計画を考える。
軽く食べたからひとまず食事はいいとして、結構歩いたし明日帰京することを考えると、マッサージに行って身体を労わる時間があってもいいね。
アマネク内にあるマッサージサロン「たまゆら」で、60分間コースの「湯治頭ほぐし+湯治足つぼ」を即予約。これが良かった!店内はきれいで、セラピストの腕は良くて、最高の癒し時間でした…。
体制を整えて20時半頃街に繰り出す。翌朝早い便で戻るので、23時頃にはホテルに戻って寝たいね。2時間弱のランデブーに勝負をかける。
気になっていた「Bar井ノ上」はお休みなのかやっていない。「HELL」のケンゾーさんに薦めてもらったバー「ラ・プリエール」も正月休みのようなので、次回に期待。
それでは、北浜・トキハ裏にあるバー「LEFT ALONE」へ。重厚感ある扉にドキドキ。
入口近くにはテーブル席、奥には長いカウンター。店内のモニターにはサントリーのCM集(マスターが編集したそう)が流れていて、「ウイスキーがお好きでしょ」と歌が聴こえる。メニューブックを開くと、細かくルールが書かれていた。酔って騒ぐな、みだりに客に話しかけるな…。ふむふむ、気をつけなきゃ。
1杯目はジンリッキー。温泉&マッサージを経て、まるで今日初めてアルコールを飲んだような新鮮な気持ちです。
「ウイスキーがお好きでしょ」のフレーズを聞きすぎたせいか、隠れていないサブリミナル効果(ダイレクト・マーケティング!)のおかげか、ハイボールを注文してしまった。「ハイボールと唐揚げで”ハイカラ”!」と言う菅野美穂を見ていたら、つい唐揚げも食べたくなる。どうにか我慢して、オイルサーディンをいただいて事なきを得た。ショートカクテルもいただきたいところだったが、もう1軒行きたいのでまた次回。
ラスト・バーを飾るのは駅前のバー「Blue Point」。2018年頃にオープンしたらしい。福岡のホテル・バーで腕を磨いた男性マスターはホスピタリティにあふれていて心地よかった。
丁寧に丁寧にステアされたマティーニ。優しい味がした。美しいステアをする人の指ってセクシーだなぁと見惚れた。
「ブルーポイント」という店名に合わせてブルームーン。高級感ただよう薄紫の色合いと、パルフェ・タムールの駄菓子みたいな味わいのギャップが昔から好き。
季節ごとにフルーツを使ったソルティドッグを提案しているそうだ。今はイチゴ。塩のエスプーマ(泡)がモコモコ浮かぶ。泡風呂みたい。甘酸っぱくて美味しい。
今更ながら別府駅。「ピカピカのおじさん」こと油屋熊八像を拝みます。油屋熊八は、別府では知らない人はいないであろう有名人。何しろ、別府を観光地&温泉地としてブランディングした張本人なんだから。また別府に来られますように、楽しい旅をありがとうという気持ちで見上げます。次回は別府の高架下も行かなきゃね。
小腹が空いたので、「じんで」で〆うどん。ラーメンでなく、うどんなのでヘルシー(ということにしましょう)。
2日間狼藉した胃に染みる、かきたまうどん。つるつるふかふかな茹でたて麺に、かつお出汁とふわふわ卵、シコシコかしわがベストマッチ。腹の底からポッカポカ。遅い時間なのに続々と地元の人がやってきてうどんを啜っていた。ラーメンだと重すぎるから、別府の夜には優しいうどんが似合う。湯気をふぅふぅと吹いて、熱い器を抱えて夜を超える。
翌朝、朝風呂でシャキッと目覚めて空港へ向かう。都内の雪は昨夜のうちに止み、飛行機は無事に飛ぶようだった。
帰京したらまた忙しい日々が始まるのだろうか。湯から湯へ、バーからバーへと自由に渡り歩く時間がすでに恋しい。フライトを待ちながら、Kindleで途中まで読んでいた本のページを捲る。
この本、とても興味深い考察がなされているのでシェアしたい。様々なストレスで心のバランスを崩した歴史学者が、どうして現代人は心を病みがちなのかということを、歴史学を用いて、そして自身の体験をもとに考察している。
本の中で、色々な要因があって言葉と身体の均衡が崩れると、うつ病や双極性障害、統合失調症などの症状として表出するのではという試論をしている(超大雑把にまとめていますので詳細は本を読んでください)。言葉に偏りすぎても、身体に偏りすぎても生きづらくなるのだと言う。
日頃から言葉に偏りがちな私には耳の痛い教えだ。なんせ、言葉を使う仕事をしているにも関わらず、息抜きでブログを書くくらい言葉に囚われていて、常に言葉に触れていた方が落ち着くという活字中毒ぶりなので。
頭の中に常に言葉が溢れていて、書き言葉として整理整頓することでようやく憑き物が落ちる感覚がある。言葉を美しく配置することに快感を覚える。
言葉が脳のストレージいっぱいになるとフリーズを起こす。だから定期的に吐き出したり、「何もしない&考えない」時間を作らないと処理落ちしてしまう。けれど「何もしない&考えない」ってどうやったらいいの?と長年疑問に思っていた。
今回、別府に来て、そして「知性は死なない」を読んで、その疑問が少し解けた。ポイントは言葉(思考)と身体(感覚)のバランスだ。日常で言葉に偏りがちならば、意識的に身体を使えばいいじゃない、と。そう、お分かりですね、温泉です。
強制的に何も考えられなくなる時間。身体の感覚にリソースをすべて持っていかれる気持ちよさ。頭からつま先まで、積もり積もったアレコレをきれいに洗い流せる場所。現代人がサウナにはまるのも、身体の感覚を取り戻したいからなんじゃないかとも思える。もちろん私もサウナが大好き。
温泉入って五感を研ぎ澄まし、美味しいもの食べたり、知らない路地を歩いたり、飲んだことないお酒の香りを嗅いだり、人々の生活音を聞いたり、海風を感じたり、今・ここにある身体の生の感覚だけに集中しよう。煩わしい理性を全部手放したら、自分が本当にしたいことが見えてくるはず。
身も心もすっぴんになれる街、それが別府。老いも若きも別府に行って整おう。別府にのぼせろ。
※この記事は別府市等のPRとは何の関係もありません。筆者は単なる別府ファンです。ですが、一人でも多くの人に別府に行ってほしいので、別府に関する書き物でしたらいつでも依頼をお待ちしています。