盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

ナンバガ再解散ライブ「NUMBER GIRL 無常の日」(ぴあアリーナMM)に行った

またひとつ青春が終わりました。

いや、とっくの昔にアオハルとは無縁の人生なんですが。

 

追っかけているバンド、NUMBER GIRLが解散しました。(20年ぶり、2度目)

numbergirl.com

 

NUMBER GIRLことナンバガは日本のオルタナティブロックグループです。知っている人は知っていて、知らない人は知らない。よければYoutubeで聴いてみて。

ナンバガは1995~2002年に活動して解散し、2019年に突然再結成しての2022年にまたも解散宣言。再結成の理由は、北海道のフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に出演したいから、とボーカルの向井秀徳は言っていた。

 

「2018年初夏のある日、俺は酔っぱらっていた。そして、思った。またヤツらとナンバーガールライジングでヤりてえ、と。あと、稼ぎてえ、とも考えた。俺は酔っぱらっていた。俺は電話をした。久方ぶりに、ヤツらに。そして、ヤることになった。できれば何発かヤりたい」

natalie.mu

 

幸運なことに、コロナ禍の復活ライブへ行くことができた。密を避けて、マスク着用、着席、ノー発声という、騒ぎたいロック好きには半ば拷問に近いスタイルだったものの素晴らしい時間だった。ちらっと昔書いていた。

sakariba.hatenablog.com

 

復活してからの3年ちょっと、彼らはワンマンライブやフェス出演を精力的にこなした。すべてに足を運ぶことはできなかったものの、行ける時は現場で、そうでない時は配信で応援した。2022年になってからは、コロナ禍が落ち着いてきて社会生活が急激に早回しになって多忙が続いていたため、ちゃんと追いかけることが難しくなっていた。復活したしいつでも行けるでしょ、という甘えもあった。これがよくない。反省。

 

いつまでも あると思うな 親とバンド

 

2022年8月、向井がふたたび解散宣言を発した。

 

「2019年に再結成したNUMBER GIRLはふたたび解散します。再結成において大きな目的のひとつであったライジングサンロックフェスティバルへの出演を果たし、これを区切りとして各自の音楽活動に戻ります。

ライジング含め公演中止や延期などが立て続いたこの4年間でありました。この中、時を超えて集まったメンバーと鳴らした音は、やはり時を超えていました。そして聞いてくれた皆さんとも時を超えることが出来た。とても楽しかった。申し上げます。ありがとう。

私は稼ぎてえ、と切望しておりました。ひとりの取り分として結局1LDK築20年の中古マンションの購入価格くらいになっただろうか。計算しておらんがいずれにせよ私としてはこの目的を全くもって果たせていない。目的とは金銭のことである。これはくやしい。いや、プライスレスのヨロコビがあったではないか。そういうことだ。そういうことなのだ。

2022年12月11日(日) ぴあアリーナMM公演をもってNUMBER GIRLは解散します。 また稼ぎてえと思ったら、何度でも時を超えて我々は集まり、福岡市博多区からやってまいります」

 

「稼ぎてえ」という理由で再結成して、解散時に「ぜんぜん稼げなかった」とぶっちゃけるロッカーがかつて居ただろうか。いや、居ないんじゃないかな。「稼ぎてえと思ったらまた再結成するわ」と言ってるし。向井の言動にファンは振り回されてばっかりである。

 

ラストライブは「NUMBER GIRL 無常の日」と題され、12月11日に神奈川・ぴあアリーナMMで行うことも明かされた。

腕を組んでいるのがThis is向井。どこで撮ったんだろう。

 

これはとんでもないことですよ。

キャパシティ約1万(着座)のコンサートホール。再結成時の豊洲PITは、スタンディングで約3,100名、着席で約1,500名のキャパだった。(一般的には)マイナーなオルタナティブロックバンドがヤれる規模・レベルの会場としては最高峰じゃないだろーか。

NUMBER GIRLの公式Twitterのフォロワー数は約6万人。休眠アカウントやなんやかやを入れても、だいたい6分の1の確率で行ける!!と意気込み、親兄弟、少ない友人知人、はては同僚上司に頭を下げて同伴者候補とさせてもらい、チケット獲得に全力を懸けた。これまでの人生でライブのチケットのために「一生のお願い」を10回以上しています。応援の言葉よりあなたのアカウントをくれ。同情するなら抽選に参加してくれ。

 

そんなこんなで、最終的にはぴあのクレジットカードを作ってもらい、見事当選し、同行者枠として行くことができたのでした。その人はナンバガ聴いたこともない音楽好きでしたが、ライブのために聴きこんでもくれました。本当にありがとうございました。

「楽器の音が大きくて、ボーカルが何言ってるか全然わかんない」と言ってましたね。ボーカルを聴くためにボリューム上げて、文字の小さい歌詞カードを凝視するのがナンバガ登竜門ですよ。

 

桜木町駅から歩いて向かう道中、クリスマスイルミネーションがきらきらと輝いていた。キャッキャウフフしているアベックに混ざり、黒っぽい恰好で暗い顔しているひとりもんは全員ナンバガのライブに向かう人に見えた。狂った街かどきらきら・・・

目の前は何度も通っていたものの、ぴあアリーナMMの中には初めて入った。入口近くには「チケット譲ってください」の紙を持った人たちがいた。当日になって機材席が解放されたものの、見届けられないファンも多くいただろう。

入場列は長く出来ていたものの、案外あっさり入れた。身分証明書の確認は結構しっかりしていた。電子チケットより紙チケットの方が早く入場できた。

会場は想像以上に広く、きれいで、座りやすい座席で助かった。ドームや武道館は尻に優しくない。

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17:30すぎ、ほぼ定時で始まった。なお、開始直前になって向井がナチュラルに舞台袖から顔を出し、観客をぐるりと眺めて戻るという珍シーンがあった。この時点で、フツウじゃないライブになりそうな予感がビンビンしていた。

 

セットリストをまとめてくれた方がいたので、ありがたく拝借。

  1. 大あたりの季節
  2. 透明少女(1回目)
  3. OMOIDE IN MY HEAD
  4. ZEGEN VS UNDERCOVER
  5. 鉄風鋭くなって
  6. EIGHT BEATER
  7. DESTRUCTION BABY
  8. NUM-AMI-DABUTZ
  9. CIBICCOさん
  10. 桜のダンス
  11. 水色革命
  12. TRANPOLINE GIRL
  13. YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING
  14. delayed brain
  15. MANGA SICK
  16. U-REI
  17. 透明少女(2回目)→休憩(ブレイクタイム)
  18. BRUTAL NUMBER GIRL
  19. 裸足の季節
  20. 喂?
  21. 排水管
  22. 転校生
  23. 日常に生きる少女
  24. 透明少女(3回目)
  25. TATOOあり
  26. タッチ
  27. I don’t know

アンコール

  • はいから狂い
  • IGGY POP FAN CLUB
  • TRANPOLINE GIRL

Wアンコール

  • 透明少女(4回目)

 

 

ライブ直後のTwitterのトレンドに「透明少女4回」が入ったように、彼らは「透明少女」という代表曲のひとつを4回演奏した。バージョン違いとかじゃない、同じ曲だ。前代未聞だ。

これまでの再結成ライブでも2回(本編とアンコール)演奏することはあったので、今日も2回はヤってくれるんだろ~なと予想していたが、まさかの4回。

3回目は「えっ!?また『透明少女』?ヤってない他の曲も聴きたいな」と思ったが、4回目になると笑いしかなかった。観客が「聞き飽きたよ」「一生分聴いたよ」と思うくらいヤってくれたのか、コロナ禍で中止・オンラインに切り替えたワンマンやフェスでヤるはずだったリベンジ演奏をしているのか、真意は分からない。でも4回目の「透明少女」で会場の盛り上がりは最高潮に達していたように感じた。客側もノり方分かってくるしね。隣に座る初ナンバガライブの知人も、楽しそうに腕を振っていたし。

 

最高のセットリストに、最鋼の演奏。キめるところをしっかりキめてくれて、解散を見届ける機会を与えてくれた彼らには感謝しかない。

1曲1曲丁寧に選んで、心を込めて弾いてくれていた気がする。どの曲も今のナンバガで弾くのは最後になるから、それぞれの方法でお別れをしているようだった。

 

まぁ、向井だけは相変わらず自由だったけど・・・。

 

曲の途中で急にギターを置いて、他のメンバーに「そのまま続けろ」とジェスチャーして、自分はビールをのんびり呑んで、タバコくわえて、しかも4本一気吸いして、葉巻まで吸い始めちゃって、びよーんと伸びる人形で遊び始めたんだよ。

並みの神経じゃできないっしょ。自身のバンドの解散ライブで、1万人以上の観客が一挙手一投足を見守る状況で、誰もが理解不能の行動をするって。アサヒスーパードライは4缶空けて、ライブ直前にメンバーと盛ったプリクラ撮ってそれを休憩中に流すし。向井半端ないって。そんなんできひんやん普通…。

 

そういえば以前の配信ライブでも、急に紙袋から何か取り出して、それがモデルガンだったことがあった。今年は安倍さんの事件があったから銃はやめたんだろうな。しかしなぜスーパーマンの人形に・・・?とFUSIGIでしたが、向井のツイートでナゾが解けました。

 

解散については終盤まで向井は口にしなかった。

マスク越しの発声が許されていたので面白いヤジが多発していたのだが、「解散すんなよ」「待ってるよ」という声もあった。「やっぱ解散やめるわ」と言ってくれたらどんなにいいか。

でも向井はあっさりと「今日の日の公演をもちまして、我々NUMBER GIRLは解散いたします」と述べた。観客に悲壮感はなく、妙なスッキリ感だけが残った。繰り返される諸行無常

 

「無常の日とはなんだったのか」

解散ライブに行った人たちと酒飲みながらえんえんと語りたい。私にとって、これ以上なく楽しくて幸せなライブだったことは間違いない。

 

17歳の頃の自分にもし何かひとつ伝えられるならば、「生きていたらそのうちナンバガが再結成して、復活・解散ライブに行けるよ」と教えてあげたい。きっとその言葉を頼りに、日々をつないでいけるだろうから。

さて、明日から何を頼りに生きていこう。10年後くらいの自分が急に現れて「そのうちナンバガが再結成するよ」と教えに来てくれないものだろうか。待ってるぜ。