盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

シアター上野6月頭~休館前夜、2021年ラスト興行を見届ける

当ブログでも度々紹介してきた魂のホーム劇場・シアター上野が、2021年6月11日より8ヶ月間休業することとなった。その衝撃ニュースがストリップファン界隈に駆け巡ったのは、6月7日夜のことだった。

そもそもの発端は新年度になって間もない2021年4月のこと。4月14日の昼過ぎ、シアター上野に警視庁の捜査員が入り、公然わいせつ罪容疑で関係者が現行犯逮捕された。当日の状況は各種報道や有志のnoteなどで伝えられている。

www.yomiuri.co.jp

note.com

全国で数ある劇場の中でシアター上野がターゲットとなった理由やタイミングについては、東京都内がまん延防止等重点措置開始直後だったことや東京五輪を控えたナイーブな時期だったこと、新年度で警視庁の人事異動が影響したなどの憶測が流れているが、真偽は不明なので口を挟むつもりはない。重要なのは、その処罰の方だ。

逮捕された関係者は4月末までの数週間拘留され、その間劇場は休館し、釈放後すぐ5月1日から再開した。公然わいせつの刑罰は、刑法174条で「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金、拘留、科料」と定められている。今回は、8ヶ月の営業停止処分で決まったらしい。

上野では5月にも風俗店が摘発されている。ピンクサロン「マジックバナナ」でバナナを出した客と従業員が逮捕されたそうだ。こう連続して同地域でガサ入れが行われると、浄化作戦のための見せしめではないかと疑われても仕方が無い。

mainichi.jp

 

シアター上野の休業を知った翌日の昼、上野駅に降り立った。いてもたってもいられなかった。行政処分が確定してしまった今、ストリップ劇場の客である自分にできることは、残されたわずかな時間も客であり続けることだけだった。入場料を払って、ショーを楽しんで、劇場の収益になる活動をしたかった。

劇場に着くと、困ったような苦笑いをする従業員さんたちが迎えてくれた。検温、消毒。何を言えばいいか分からず、言葉少なに場内に入ると、平日1回目とは思えない人数が座っていた。みんな、同じ気持ちだったのかもしれない。とりあえず来るしかなかったのだ。(常連客のおじいちゃんたちはインターネットやってなさそうだから、何も知らずに来ていた可能性もある)

いつも通りに開演。1回目担当の投光さんの噛みっぷりもいつも通りだ。上野らしいマイペースさが、今はほっとする。場内を見渡すと、来週からの香盤表が撤去されずに貼り出されていた。単に撤去するのが面倒だっただけだと思うが、何となく、「敢えて撤去しない」という意思をくみ取ってしまうのは、こんな状況だからだろう。その香盤が3日後に実現することがないことはみんな分かっているけれど、この場内にいる限り、夢見ることができる。

この週は平日2回で終了することが多く、1日通して5人しか来場せず、その中でも2人しかデジを買わなかった日もあったと聞いた。それが休業が知らされた翌日にはほぼ満員に変わった。当然3回まわしだ。青天の霹靂、急転直下。かくいう私もその1人なのでゲンキンだと思うが、いつ何時も悔いの無いように、行きたい場所に足を運ばないといけないなとつくづく実感させられた。(コロナ禍、それはかなり難しいけれど)

やっぱり駆けつけてよかったと感慨にふけり、「今年はこれで見納めかな、楽日は予定が詰まっているから再訪は難しいな…残念だな」とぼんやり考えていた3回目、虹歩さんのステージをヨシダッチの投光で観た時、気が変わった。あ、これ楽日も来なきゃダメなやつだ。この人たち、まだまだ進化させる気だ。きれいに予定調和でしんみり終わらせるつもりないし、舞台があって営業できる限りは面白く楽しく足掻くつもりなのかも。そう直感した。ステージは生き物で、まだ死んでない。

 

そんなわけで、6月10日の千穐楽、終業後に3回目駆けつけました。コロナ前の日常を思わせる満員御礼。他の劇場でも魅力的な香盤そろい踏みなのに、上野好きの猛者たちが集まった。マスク越しでも分かる久しぶりの顔ばかりで嬉しかったな。満足におしゃべりすることもできない状況なので、コロナが収束したら全員と乾杯したい。米寿のおじいちゃんが来てて、「次は卒寿をシアター上野で祝うぞ」と意気込んでいた。いい話だ。

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せっかくなので、簡単にステージの感想をば。問題があればご指摘ください。

ここだけの話ですが、場内の様子を書いている以上、当局が当ブログを見て摘発の参考にした可能性はゼロではないと思っています。ただ、文章化する際には諸々念頭に置いて表現するように当初より心がけています。ストリップ劇場が無くなってほしくないので今後も気をつけますが、一人でもストリップに興味を持つ人、劇場に行く人が増えたらいいなと思ってブログを続けています。なので、ステージの描写は、私の琴線に触れた事柄や、みんなに知ってほしい良さ・楽しさだけを伝えられるよう精進してまいります。

 

[シアター上野、2021年6月1日~10日の香盤](敬称略)

1.一条ダリヤ

2019年11月デビューで芦原ミュージック劇場所属の踊り子さん。お名前はたくさん拝見して評判も聞いていたのですがタイミング合わず初見でした。「瞳にキッス」「約束」を拝見。むっちむちの太ももと白く艶やかな肌、しっかり鍛えられた体幹、サラサラの黒髪、キラキラの笑顔が素敵な期待の新人さん。温泉場でガッツリしごかれたのでしょう、お客さんを楽しませようとするサービス精神と魅せ方が素晴らしく、新人らしからぬ肝の据わりっぷり。お酒が入った状態だと気持ちよくなっちゃうであろう選曲だし、オナベ中の表情がとってもエッチだし、ポーズを決めたままウインクされた日には、たとえ一見さんでも射抜かれちゃうと思います。末恐ろしいおじさんキラー。

 

2.鏡文杏未

観る度、女優だなと思う踊り子さんが数人いて、彼女もその一人。演目ごとに確固とした世界観・物語が構築されていて、私たちはほんの数シーンを垣間見させてもらっている感じ。この方の舞台は、展開するストーリーを想像させる余地…自由があって、物語に引き込む力がかなり強いと思う。とは言え小難しくなく、にっかつロマンポルノみたいな快活なエロなので嬉しい。あと選曲がいつも激シブで好き。和服演目で、傘や小物さばきが巧く、流れるような日舞に惚れ惚れした。前回観た時から色気が増している気がした。

 

3.悠木美雪

TSミュージックが誇るイケメン踊り子。今、抱かれたい踊り子ナンバーワンなのでは?びっくりするくらい小顔で手足が長いので、同じ人間とは思えない。妖精族だと思っている。もしくはフィギュア。演目は「護森人」「華詩人」「神片想イ」。足を上げるポーズを決めた時、太ももからつま先まで180°真っ直ぐなのが本当すごいと思うんだ。膝がボコッとしたり、ちょっと歪んだりするのが普通の人体なのに、どういう構造なの?トップモデル並みの美しいお身体だと思います。拝ませていただき感謝。

 

4.翔田真央

「コギャル」はちょっと前の渋谷にたむろしていた女子●生演目で、健康的に日焼けした彼女によく似合う。雑誌「egg」を愛読して、ラルフローレンのカーディガン着て、かがんだらパンツが見えるミニスカで、ソックタッチでルーズソックス留めて、薄汚れたぬいぐるみのついたピッチを手放さず、通学用のスクールバッグを背負っちゃう女の子。健康的にエロくて、勉強は嫌いだけど学校はちゃんと来てて、体育は得意で、他校の先輩と付き合ってる噂があって、もう処女は捨ててるっぽくて、頼んだらやらせてくれそうで、でも以外と純なところがある、隣の席の女の子。そんな感じ。(後半は妄想です)あ、もう一つの演目の立ち上がり曲が「彼女は夢で踊る」のあの曲で、広島を想起させて大変エモかったです。

 

5.虹歩

演目は「M●●●●」と「東●●●」。3月に23周年を迎えたベテラン踊り子のはずなのに、少女のように可憐でいつ見ても若若しい。ステージはいつも最先端で、挑戦的で、格好いい。最近ご無沙汰だったので久々に拝見したのですが、髪型が変わっていて素敵でした。ちょっとシャギー入れてアッシュな色で。

今回の虹歩さんの演目をさらに魅力的に魅せたのはヨシダッチの投光だった。舞台床面から照射するロアーホリゾントライトと、LEDピンスポットが良い仕事をした。

ホリゾントライトから照射された色とりどりの光は白いホリゾント幕の布に反射し、幕そのものを染めたように見せてくれる。晴れた日の抜けるような青空、草原の緑色、夕暮れの茜色、神々しい黄金色、官能的なピンク色。虹歩さんの激しいダンスを際立たせるのは、フォローピンスポットライト。

これは操作のキッカケが難しく、演出の内容を理解して何度も練習しないと上手くいかない。こうした照明効果によって舞台に奥行きが出て、小さな舞台のはずなのにいつもより広く見えてくる。

シアター上野は、巷では場末のストリップ劇場と思われているかもしれない。まぁそういう良さもある。でも、こんなにも複数の照明を同時に操作できて、立体感のある舞台を演出して、女性の美しさを際立たせられる空間、なかなかないと思う。

 

急に決まったシアター上野の休館、虹歩さんはその前週のトリを務めることになり、実質的に2021年の上野のトリを飾ることになってしまったわけで。客側も驚いたけど、踊り子さんたちはもっと驚いたし、ショックだったと思うんですよ。予想外に2021年ラスト興行となったことで、少なからずプレッシャーも感じたはずなんですよ。そのつもりで演目持ってきてないし。6月中以降の職場がひとつ減ってしまったことも痛いだろうし。

でも、踊り子さんたちはお客さんにはそんなそぶりをひとつも見せず、全力で楽しませようとしてくれた。プロだと思った。今できるステージで、最高のパフォーマンスを披露してくれた。最終日の最終回、ステージの照明が消えるその瞬間まで、惜しまずに出し切ってくれた。

躍動する肉体に負けないよう、照明と音響も全力で頑張って、クリエイティブがバチバチにぶつかって火花散ってた。お客さんも、そんな舞台をしっかり最後まで見届けようと必死に応援して、すごく良い雰囲気だった。粋だった。

 

すべてのステージが終了して、場内が明るくなった。虹歩さんがステージからお辞儀をして、みんなで盛大な拍手をした。その後、投光席とスタッフたちにも惜しみない拍手がおくられた。誰も席を立たず、もしかしてフィナーレするんじゃないの、ひょっとしてこのまま4回目突入するんじゃないの、って雰囲気すらあった。ヨシダッチが口火を切った。

「本日のステージ、今週の公演はこれで終了です。明日以降、シアター上野は8ヶ月休館いたしますが、再開後はまたのお越しをお待ちしています」

終わりの時間が来てしまった。けれど、みんな笑顔で「また来年ここで会おう!」「再開後のトップバッターは虹歩さんだな」なんて話していた。再開したら必ず行くと宣言する客がこんなにいるんだから、絶対に営業を続けてほしい。

湿っぽさなんてみじんもなくて、最後までいつも通りの上野だった。笑って、楽しんで、散って、集う。

また、集おう。

攻めてるマンション「デュフレ横浜石川町」見学してみた

今年入って半年経つけど、緊急事態宣言が出てない日数って一ヶ月くらいだよね、なんて話をすることが増えてきた。街中では夜間もお酒提供営業し出す居酒屋も続々出ている。イセザキ・モールはますます無法地帯めいてきて、週末には楽しそうな声があちらこちらから聞こえる。真面目に自粛した方が損をする、なんて呟きも聞く。そう思うのも仕方ない。海外のロックダウンのような強制力がない、人々の良心と相互監視に頼った緊急事態宣言は、去年の1発目の数ヶ月しか効力が発揮できなかったのだろう。

ま、それでも当面は大人しくステイホームを続けます。ワクチンが普及するのを大人しく待ちます。やっぱりコロナに罹患したくはないし、人にうつしたくもない。ひとり遊びも在宅も性に合っているのか今の暮らしにストレスはあまりない。苦手な大人数の飲み会に行く必要もないし、地獄の通勤ラッシュに巻き込まれない今の暮らしは、正直なところ、かなり居心地が良い。猫たちとのんびり寝起きできる家と、ひと気の少ない街角散歩の機会と、気心知れた身近な人としっぽり飲食できる場所と、ふらりと映画や舞台を観る時間があれば、精神の安定が図られることが分かったことは、コロナ禍の収穫だったようだ。シンプルライフ

とは言え、一番大きいのは引っ越しによるクオリティ・オブ・ライフの向上だな。何だかんだ、家の居心地が良ければ外出しなくても色々楽しめる。おうち最高!光通信にしたのでWi-Fiも飛ばし放題!ふかふかのダブルベッドはいつまででも寝ていられる!

今は、まだまだ続きそうなステイホームライフをさらに向上させたくて、高みを目指したいと思っている。そんなわけで、マンション見学に行ってみた。や、引っ越したいとかマンション買いたいとかの意図はない。近所におもしれー物件ができるので見てみたいという好奇心はあった。一番の目的は、そのマンションが取り入れているデザインやインテリアの工夫、暮らしやすくなる機能がどんなもんかを知って、真似すること。

学ぶことは真似ることから始まる。世阿弥の「風姿花伝」を愛読する私は、優れたアイデアがあれば積極的に真似して自分のものにしたいと常々思っている。もちろん盗作はNO。

で、行ったのはこちら。石川町駅から徒歩4分の新築マンション「デュフレ横浜石川町」。マンション見学は初めてなのでテンション上がった。

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100%冷やかしは営業担当者に失礼なので、ちょっとは真剣に検討しましたよ。でも、両親転勤族で同じ家に5年以上住んだ経験が1回しかない(それも社会人になってから)人間にとって、終の棲家を持つことはいまいちピンと来ないのです。将来何があるか分からないのに長期ローンで何かを買うことへの抵抗もある。あと持ち家の実家あるし。

しかし、そんな賃貸派の私ですら魅力的と感じた物件がこちらだったのです。

まずね、ロビーがすごい。マンション内にコワーキングスペースがある。NURO光が通っていて、通話できる個室もあるし、印刷もできる。接触にも力を入れていてセンサー入りのカードを持つだけで自動ドアが開くから、いちいち取り出してピッとする必要がない。時間貸しレンタサイクルのポートもマンション内にあってちょっとした利用にも便利そう。

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まるでホテルみたいなロビー。一部屋分削ってまで天井の高さを確保したらしい。

公式】THE LIGHTHOUSE(デュフレ横浜石川町)|株式会社サジェスト

 

居室内もすごいぞ。ドア前の「デリストレージ」は置き配配達に便利だし、アウトドア用品やトランクなどかさばる荷物を収納できる。「DEN」なる在宅勤務に特化したスペース、女性デザイナーが開発したクローゼット、色や素材を無料で選べる壁・タイルなどの自由度の高さ。「ベンチ・コンサバトリー」という日なたぼっこができる空間。

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SUUMO】デュフレ横浜石川町(THE LIGHTHOUSE) | 新築マンション・分譲マンション物件情報

価格も思い切った。2LDK3,200万円台が標準。今は住宅ローン減税やペアローンなど充実しているから、共働き家庭DINKSにはうってつけの物件と言えるだろう。しかも「住みたい町ランキング」で常に上位をキープしている横浜市に住めて、中華街やハマスタに歩いて行ける中区市民になれる。が、しかし、物事には理由がある。こんなに素敵な物件なら即完売御礼になるし、この価格は成立しない。

なんと、ドヤ街ど真ん中に立地しているのである。横浜市民なら地名を聞いただけで多くの人が察する、寿町エリア(松影町)である。寿町と言えば、弊ブログでも度々紹介している気がするが、かつての港湾労働者の住処で、現在は住民の8割が生活保護受給者という福祉の街。晴れた日にはおじちゃんたちが道ばたで酒を飲んだり寝ていたりする平和な地域だが、反社会的な方々の事務所も多くある危険地帯でもあるので、横浜市民は用事がなければ決して足を踏み入れることはないエリアである。かつては「当たり屋を恐れて地元タクシーは決して通らない」とも言われていた。道や川を1本隔てるだけで異世界ワンダーランドに行けるのが横浜の面白いところだ。

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ちなみに、このマンションのコンセプトは「THE LIGHT HOUSE」、つまりは灯台だ。「光を当てるのはこれからの価値観です」とのメッセージを翻訳すると、「現在は日本三大ドヤ街だけど、生活保護受給者の高齢化も進んでいるし、2020年代関内駅周辺で複数の再開発が予定されているから、長い目で見たら寿町エリアも様変わりする可能性がある」という感じか。

マンションを販売するデベロッパーも、この点は誠実に話してくれる。そもそも見学に行く前の電話で「この地域の特性はご存知ですか」とジャブをかましてくるし、営業担当者は「ウキウキして現地見学に行かれた方の9割が暗い顔でお戻りになります」とぶっちゃける。

再開発によって地価が高騰し、街の住人が強制的に入れ替わることを「ジェントリフィケーション(都市の高級化)」と言う。このエリアの再開発や、このマンションが誕生することによって寿町のイメージを一新させたいという大いなる意思があることは間違いない。そして、将来のポテンシャルを期待してこの物件を購入する人たちは、(当人の意図の有無にかかわらず)ジェントリフィケーションの尖兵として送り込まれることになる。

makitani.net

私は寿町の歴史や文化を面白いと思うし、色々な事情があって寿町に辿り着いた現住人たちはこの先もこの地で暮らしたいと思うのではないかと考える。将来的に変化を強いられることはどんな土地でも避けられないけれど、ゆるやかにマンションの住人たちと共存できる手立てがあるといいな。生活保護受給者の死や立ち退きを願いながらこの地に居住するのだけはやめてほしい。

・・・と、つい寿町に対して熱を込めてしまったけれど、本題はそうではなく、このマンションの良さを今の暮らしに活かすことですよ。真似したい点と惹かれた理由を考えてみよう。画像はすべてデュフレ横浜石川町のHPから引用しています。

 

①ロビーのテレワークスペースが、気分転換できて便利そう

部屋で仕事できるなら部屋でいいじゃん、という身も蓋もない意見もあるだろう。そーだけど、気分が乗らない時は人目があった方が捗るのも事実なのだ。Wi-Fi環境と机とついたてと電源さえあればPCが開けるので、徒歩で行ける近所に逃げ場があると嬉しい。

[解決策]家の近所のテレワークスペースを見つけよう。ミーティングがないならファミレスや喫茶店も使ってみよう。

 

②自宅のテレワークスペースを格好良く使いやすくしたい

今はダイニングテーブルにPCを置いて、キッチンをバックに仕事をしている。食事用のテーブルなのでPCは出しっぱにできず、毎日棚に移動している。できれば固定して電源処理もしたい。テーブルに猫が乗るので圧を感じる。明かりは天井の照明だけなのでもう少し照度を上げたい。

[解決策]テレワーク専用のテーブルを設けてみようかな。デュフレ横浜石川町のようにPC用のテーブルを壁付けにしてもいい。ダイニングテーブルの椅子とは分けて、ちゃんとしたオフィスチェアの導入も検討してみたい。

SUUMO】デュフレ横浜石川町(THE LIGHTHOUSE) | 新築マンション・分譲マンション物件情報

③リビングダイニングのレイアウトと照明計画を見直す

空間の雰囲気は照明と什器で様変わりする。思えば、引っ越した時に置いた家具の位置は適当だったか?図までの広さはないものの、もっと効率的にスペースを使える気がする。図の中でカーテンでなくブラインドを使っているのも明るくて面白い。我が家はサンルームがあるので、カーテンがなくてもいいわけで。あと、ダイニングではヨガやZUMBAやリングフィットをするから、ワークアウト用の道具を仕舞う棚も必要がも。

[解決策]②で書いた通り、ダイニングテーブルとテレワークスペースを分離する。照明を増設する。カーテン以外の遮光方法を検討する。家の中にグリーンを増やす。

SUUMO】デュフレ横浜石川町(THE LIGHTHOUSE) | 新築マンション・分譲マンション物件情報

 

④窓辺の空間を過ごしやすくする

前述の通り広めのサンルームがあるのですが、猫の王国&洗濯干し場&物置と化しています。それでもいいけれどベンチくらい置いても悪くない。ただ、下図のような読書場にするには猫のトイレの臭い問題を解決せねば。

[解決策]前の家から持ってきた粗大ゴミ(ゴミ箱)をいい加減捨てる。猫餌や猫砂などの猫グッズの収納を再考する。猫と話し合う。

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書き出してみると、案外少ないし解決可能だ。現住居の立地はデュフレ横浜石川町以上に申し分ない便利さで、そのほかの機能はあまり遜色ない。我が家以外の多くは分譲住民なので治安もよく、24時間ゴミ出しや管理人の常駐などの恩恵を受けている。床・壁・天井の色や素材はカスタマイズするほどこだわりがない。あとアップデートできるのは家電くらいか。寝室もまだまだ何かできそうだ。・・・結果的に我が家最高説が高まってしまった。

運良く今の家が見つかったから良かったものの、横浜市内駅近で猫2匹飼えて2LDK以上で家賃抑えめの賃貸物件なんてほぼゼロなのよね。たまにSUUMOで検索してもロクな物件出てこないし、見つからなかったらマンション買わざるを得なかったのかも。むしろ現住居のマンションを分譲してほしいくらいだ。つくづくご縁に感謝。できるだけ長く住めるよう、大事に暮らしていこう・・・と改めて誓ったのでした。

神保町シアターで「鬼の棲む館」を、シネロマン池袋で「美加マドカ 指を濡らす女」を観る

神保町シアター「生誕百年 映画監督・三隅研次と女優たち」特集で「鬼の棲む館」を観た。大好きな女優のひとり、新珠三千代が出演していた。

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恐らく公式ポスター。この新珠さん、仲間由紀恵さんに似ている気がする。

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主演であるはずの勝新を差し置いて、ポスターの画面1/3を佐藤慶が占めるバージョン。吸われているのは新珠さんの乳です。

S44('69)/大映京都/カラー/1時間16分

■監督:三隅研次

■原作:谷崎潤一郎『無明と愛染』

■脚本:新藤兼人

■撮影:宮川一夫

■音楽:伊福部昭

■美術:内藤昭

■出演:勝新太郎高峰秀子新珠三千代佐藤慶、五味龍太郎、木村元(木村玄)、伊達岳志(伊達三郎)、伴勇太郎、松田剛武、黒木現

南北朝の頃、盗賊が情婦と暮らす荒寺に現れたのは…。谷崎戯曲の映画化で、敵対する女を演じた高峰と新珠が火花を散らす異色時代劇。

谷崎は結構読破したと思っていたけれど、これは読んでいなかった。相変わらず冒涜的な物語で、女性上位の願望ダダ漏れである。出演陣やスタッフが豪華で、高峰さんと新珠さんに勝新が完全に食われているのが良かった。新珠さんは「洲崎パラダイス赤信号」で魅せた薄幸美人とは打って変わって、「白拍子(男装の舞妓とされているが、作中では娼婦のように扱われていた)」を演じるファム・ファタル的悪女も似合うというのが発見であった。当時としてはかなり大胆な脱ぎ(上半身ポロリは当たり前)&絡みのシーンが多かったが、カメラワークは首から下のみが目立ったので、スタントを用意したのだろうか。

続いて、にっかつロマンポルノ

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当代随一のアイドルストリッパーがロマンポルノに出演するとあって、上映時は相当な話題を呼んだらしい。

■配給:にっかつ

■製作年:1984

■監督:神代辰巳

■キャスト:美加マドカ 内藤剛志 広田行生 丹古馬鬼馬二 北見敏之 上田耕一 よしのまこと 麻生うさぎ 蘭童セル 藤ひろ子 高橋明 白山英雄 大江徹 庄司三郎 志水季里子 三戸部スエ

■脚本:斎藤博 神代辰巳

ストリッパーの未来まゆみ(本名・徳永君代)は蒸発した男との間に出来た赤ん坊がいる。まゆみは二枚目の舞台俳優、俊一郎と同棲しているが、彼は旅公演が多い。俊一郎がまた旅に出ることになり、いない間、まゆみの身の回りの世話をするために、彼の友人の勇次(内藤剛志)が来ることになった。肉体的には俊一郎を愛しながら、精神的には勇次を好いているまゆみ。二人の男の間で君代の心は微妙に揺れ動く……。

鬼才・神代辰巳が手がけた日活ロマンポルノ晩年の作品。神代は製作の前年1983年に肺気胸で入院し、片肺の機能はほとんど失っていたそうだ。酸素ボンベを携えての撮影だったとか。1970年代は年に4本程度ロマンポルノを撮っていたが、この時期は年1本程度にまで減っていた。そのせいか、作中のムードはどことなく暗く、退廃的で厭世的だ。

美加マドカについて知っている映画人はそう多くないと思う。ストリップ界隈に詳しい方ならばこの名前に聞き覚えがあるかもしれない。彼女は岐阜市出身の元ストリッパーで。1982年に神戸、新開地にあった「新劇ゴールド(現在は閉店)」にてデビューした。WIKIの引用だが、「十日間の興業が客が入りきれなくて二十日間延長になるという前代未聞の状況も引き起こし」たほどの伝説的な踊り子だ。TVやラジオにも引っ張りだこで、歌手デビューを果たすなど人気を誇ったが、1989年5月浅草ロック座にて引退。その後、故郷・岐阜市の柳ヶ瀬でスナックを経営しているとのこと。

こんな2人が組んだのならば、同じくストリップをテーマにした「一条さゆり・濡れた欲情」のような名作に仕上がったに違いない…と意気込んで観ると拍子抜けしてしまうかも。美加マドカのステージシーンは期待よりも短く、物語の中心ではないからだ。どちらかと言うと主役は内藤剛志だった。

内藤剛志といえば「科捜研の女」「警視庁・捜査一課長」など人気ミステリー&刑事ドラマの顔的俳優だが、当時の駆け出し俳優にありがちな話だが、彼もまた若い頃はロマンポルノに出演していたのだ。うん、確かに演技力は光るものがあった。今度「科捜研の女」で彼を見かけたら、美加マドカに言いように使われて行き所の無い青い性を持て余す姿を思い出し、胸がジンとしてしまいそうだ。

横浜市立金沢動物園に行き、蕎麦屋で酒を啜る

大人になってからますます動物園が好きになった。別にゾウとかキリンとかスターアニマルでなくてもいい、トリとかサルでも何でも、毎日見ている人間とネコ以外のいきものが動く姿を目撃できるだけで驚くほど楽しい。

私だって人の子なので、子どもの頃は家族で動物園くらい行った。国内だけでなく国外の動物園に行った記憶もある。しかし獣医だった父親は「大抵の四つ足動物は殺したことがある」と言い、新しい動物のコーナーに行くたびにその殺し方を教えてくれた。しかも、動物由来の感染症に関する研究者でもあったため、その動物が伝播するウイルスや病気、寄生虫に関する情報も伝えてくれた。ウサギやモルモットに触れる「ふれあいコーナー」に行けば「屋外にいる動物には決して触らないように。健康そうに見えても、実は人にうつる病気を持っている可能性がある」と厳しく言われた。おかげで衛生観念は人並み以上に身についたが、異性とデートに行ってふれあいコーナーで「キャーカワイイ!」とウサギを抱えて映える写真を撮ってもらうチャンスは永久に失われた。病気の心配がない動物の骨格標本は触ることが許されたので、骨フェチになった。

横浜に越して良かったことのひとつに、すぐ行ける動物園の選択肢が多いことが挙げられる。徒歩で行ける野毛山動物園は無料だし、京急線ですぐの横浜市立金沢動物園、世界中の動物が集まるよこはま動物園ズーラシア、万騎が原ちびっこ動物園などがある。市区町村単位では国内最多だ。なぜ横浜市で動物園が充実しているのか、横浜が誇るメディア「はまれぽ」がその謎に迫っていた。

hamarepo.com

記事内では、横浜市長の思いが強いからと結論づけられているが、個人的には、横浜に動物園が多い理由として、港町なので動物を海外から運びやすかったこと、戦前戦後に多数開催された博覧会の目玉だったことなどが思い浮かぶがどうだろう。同じ理由で神戸にも魅力的な動物園が残っている。

ま、そんなわけで金沢文庫からバスに乗って金沢動物園へ。

www.hama-midorinokyokai.or.jp

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なんと動物園の導入展示がある。ディズニーのイッツァスモールワールド的世界観だ。

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キリン。柵がなくのびのびと生活している。野毛のキリンは窮屈そうなので、こっちのキリン人生の方が当たりだと思う。

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オカピ。お尻がキュートである。動物との距離が近く、いろんな角度から見ることができる。

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寝ているカンガルー。けだるそうに起きて、ぴょんとひと飛びしてくれた。

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サル。貴志祐介の小説「天使の囀り」のせいで、万が一ジャングルでお腹が空いてもサルの脳だけは食べてはいけないと学んだ。

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日本で1番大きいとされるインドゾウ。奥の個体「ボン」は牙がマンモス級の長さだと有名である。

のんびり歩き、2時間ほどで見終わった。日が傾いてきたので植物園の方はまた今度。BBQコーナーがあるので、コロナが落ち着いたら試してみたい。

小腹が減ったので、金沢文庫の駅に戻り、商店街の奥にあった蕎麦屋「壱」に立ち寄った。

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洒落た佇まい。注意しないと見逃してしまいそうな小さい入り口だった。

tabelog.com

初めて行った店だが「当たり」だった。肴が充実していて、安くて美味い。日も高いうちから蕎麦屋で軽く呑むことが楽しいと知ったのはいつだったか。軽いつまみを何品かつまみながら酒を啜って胃をあたため、最後にきゅっと冷えた盛り蕎麦で「締める」のが乙である。

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ビールで喉を潤したら、お酒にうつりましょう。長いも千切りに海苔をたっぷり乗せて、おまけに新鮮な卵黄を。擦りたてのわさびとともにいただきます。良い海苔を使っているのだろう、香りが立ってとても美味しかった。

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お猪口と焼酎を同時に持つ不届き者。蕎麦屋ではそば焼酎そば湯割を呑むのが好きです。

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締めのもりそば550円。庶民価格なのが嬉しい。つるつると喉越しよく、何枚でも食べたくなる美味しさだった。

蕎麦はいつ食べても美味しいし、関東ならば割と何処でも食べられるのが素敵だ。ワンコインで腹を満たせる駅蕎麦がそこら中にある日本は最高の国だと思う。かといって、箱根などのリゾート地で1食2,000円くらいする蕎麦は駅蕎麦の4倍うまいかと問われると納得できないが。どこまでいっても庶民のファストフードであってほしい。

大学在学中、貧乏に喘ぎ苦肉の策で友人と「Amazonの激安蕎麦」を共同購入したことがある。二八蕎麦が数キロ入って1,000円ちょっとだった。めっけものだ、これで次のバイトの給料日まで一ヶ月凌ごうと思ったが、うまい話には落とし穴があるもので「小麦粉2:蕎麦8」の二八ではなく「小麦粉8:蕎麦2」の八二蕎麦だった。ほぼうどんじゃん。来る日も来る日も不味い八二蕎麦を食べ、めんつゆの味に嫌気が差して袂を分かち、ペペロンチーノ蕎麦や蕎麦ラーメンにチャレンジするも撃沈し、最終的にはヤフオクでオタクグッズを売って生活費の足しにする際に荷物の緩衝材として使い切った。

蕎麦にはそんな苦い思い出があるだけに、自分の稼ぎで食う蕎麦の美味さも感慨もひとしおなのである。

神保町シアターで永井荷風原作の映画「裸体」を観る

このところシネコンはご無沙汰で、映画を観るためには名画座にしか足を運んでいない。007やエヴァンゲリオンの新作など楽しみだった作品が悉く上映延期してしまったので、行く理由が見出せないのだ。しかし役所広司主演の『すばらしき世界』はちょっと観たいなと思ったので、TOHOのポイント消化のために行こうと思う。鑑賞した方から「葛飾区による、葛飾区のための映画だった」という面白い感想を得たし。

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そんなわけで、絶大な信頼を寄せる神保町シアターの「生誕135年 谷崎潤一郎 谷崎・三島・荷風―耽美と背徳の文芸映画」特集で『裸体』を観ました。

「映画と餃子の会」の課題映画として選んだのですが、「『裸体』観ませんか」という誘い文句に「『裸体』観たいッ!」と返してくれるオジキの懐の深さよ。

『裸体』(1962年)原作:永井荷風、監督:成沢昌茂、出演:瑳峨三智子、川津祐介千秋実杉浦直樹長門裕之山田五十鈴

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公開当時のポスターですって。「暖房完備」という惹句が泣かせます。シュミーズに透ける裸体、当時はセンセーショナルだったのでは。画像はネットの拾いもの。

オープニングでぶったまげたのは、音楽が武満徹と岩佐譲治のダブルスタッフということ。豪華すぎる。途中でバトンタッチしたのかな。

主演は、山田五十鈴の娘・瑳峨三智子。なんと親子共演です。嵯峨は、肉体を武器に生きる若い女の逞しさ・したたかさ・愚かさを好演。

ストーリーはこんな感じ。

船橋ボーリングセンター付近の船着場で、女給と三助の間に生まれた主人公(嵯峨)。番頭や釜場の掃除をしながら漁師の男たちに肉体を値踏みされる生活に飽き飽きし、銀座の税理士事務所に勤め始めた。しかし、その社長・千秋実と連れ込み宿で関係を持ち、妾となる。

社長を「パパ」と呼び、猫なで声でおねだりをする嵯峨は、男を手玉に取る悪女の才能を開花し始めた。煌びやかなファッションや高価なジュエリーに囲まれ、アパートでの文化的な暮らしにもうんざりしてきた頃、社長が横領で逮捕され、急転直下、無一文に。家賃を払うため、通っていたバレエ教室の講師の伝手で、秘密の売春クラブのバイトを始め、彼女を気に入った大物政治家と一夜の契りを交わす。得た大金で豪快に遊び回る嵯峨。一晩中酷使した肉体を洗い流すため行った銭湯で故郷を思うも、Uターン帰省する気にもなれず、東京でのモダン生活を引き続き謳歌する。

そんな中、売春クラブで出会ったストリッパーの舞台を新宿「人世座」(原作では浅草ロック座)で観て、感銘を受ける。鼻の下を伸ばした男たちで満員の場内で、肉体をさらしながら歌い踊り、光り輝く踊り子。観劇を通じて「男は可愛い馬鹿野郎だよ」「男は女の肉体が好き」「自分の肉体は芸術的」という確信を得、立ちんぼが並ぶ夜の街で、学生風の若い男を逆ナンパ。売春クラブで政治家に言われた口説き文句「君はエネルギーに溢れてる。君のエネルギーで僕のロケットは打ちあがる」を使うも、あっけなく振られ、ひとり夜の街に戻される。厚く口紅を塗り直し、終演。

改めて書くと結構悲惨なんですが、映画自体は明るくコメディちっく。朝ドラにも出演した浪花千栄子の入浴&お色気シーン、嵯峨のマテリアル・ガールっぷり、女性たちの健康的な腕下・腋毛(当時は官能的だったんだと思う)、すけべなオヤジたちの哀愁などが入り混じり、自然と笑いを誘う。テンポはゆったりめで、情緒ある演出…ともすれば冗長になりがちなんだけど、落ち着いたカメラワークと本編を邪魔しない程度にムードある音楽のおかげで、見応えバッチリ。原作・永井荷風へのリスペクトを十分に感じさせる作品に仕上がっています。

嵯峨演じる主人公は、天性の(魔性の)肉体と、天真爛漫な性格、貞操観念が欠落した進歩的価値観、過去を顧みない若さによって、裸一貫、コンクリート・ジャングルを生き抜いている。しかし、歌や踊り、ストリップなどの芸を磨く努力をするわけではないので、どこに行っても誰に抱かれても長続きしない。若さと処女性が失われた途端に破綻するだろうなァという予感ぷんぷんです。現代のパパ活とやってること変わらないね。しっかし、永井荷風は、こういう女性の悪魔的魅力も、それに翻弄される男性の下心も、それらを掌握して稼ぐネタにする大人たちのずる賢さも、冷静に観察して克明に描写するので怖いくらい。根底に「弱き者への愛情」を感じられるし、根本的に女好きなので憎めない作家なんですが、全部見抜いて書いちゃうような容赦ない厳しさも持ち合わせていると思う。女性を理想化して神格化する谷崎潤一郎とは違うスタンスだなと思うわけですよ。

タイトルが「裸体」ってのも意味深。「裸(Naked)」と「裸体(Nude)」は全く違うってことを大学院の美術史ゼミで習ったことをおもいだした。「裸」は単に服を脱いだ状態を指す言葉で、「裸体」は美的に鑑賞する対象という話だった。となると、本作の主人公は船橋の野暮ったい田舎娘として描かれた当初は、自分の肉体を単なる「裸」としてしか見ていなかったけれど、都会の荒波に揉まれて他者に価値付けされることによって、値段の付く「裸体」を手に入れたという解釈も出来得るのではないか。ストリップに感銘を受けるシーンなんてまさにそうだ。すると、逆ナンして男を買おうとするラストシーンは、自分が男性たちにされたことのアンチテーゼとして男性の裸をも裸体として支配しようとする意図があったのではないか。結果的に、この時代には先進的すぎた発想だったのか失敗に終わっているものの、もし現代にリメイクされることがあれば逆ナン成功してお持ち帰りできていたよねとも思えます。

嵯峨美智子の出演作品はあまり観ていないけれど、改めてWIKIPEDIAを観たら映画並みに壮絶だった。彼女は、金銭トラブルや薬物中毒など度々トラブルを起こし、芸能界復帰と失踪を何度も繰り返したとのこと。瀬戸内晴美の小説『女優』のモデルらしいので、読んでみようかな。あと声が可愛かった。

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鑑賞後、餃子を食べながら感想を述べあう時間もまた楽しい。映画を観て、映画を語って二度美味しいのですよ。神保町シアター正面の町中華「天鴻餃子房」が毎度お馴染みなんですが、ついに店員さんに覚えられ「いつもありがとうございます」と言われるようになった。

自粛生活&Amazonプライムのおかげで週5本くらい映画を観ているけれど、近現代の映画を観るのは劇場に限る、と思う。暗闇に包まれた場内で、映画という光を追う匿名観客の一人になることができる快楽。映画を観るためだけに使う集中力、スクリーンに没入できた時の感動は自宅では味わえない。隣のおばちゃんがクスっと笑うリアクション、音を立てないように飲む水の味も乙である。なんというか、作品と真剣勝負できる気がするんだよね。せっかく映画会社や役者、スタッフたちが一所懸命作って現代まで遺してくれたんだから、こちらもそれ相応の覚悟と姿勢でもって臨みたい。ということで、頑張って営業を続けてくれる名画座・インディペンデントの映画館にもっと行きましょう。心地よい文化空間をこれ以上無くしちゃいけないのですよ。

銀座でリッチな週末を~アーティゾン美術館「琳派と印象派」から資生堂のバーへ

ミュージアムが好きなので、年間の企画展はすべて行くようにしている館が都心にいくつかある。その中には開館以来欠かさずに通う館もある。まずは森美術館、そしてアーティゾン美術館。旧ブリジストン美術館(愛称・ブリ美)から現アーティゾン美術館(愛称・ゾン美)に生まれ変わったのは2020年1月のこと。あっという間に1年経ったのね。

そんなわけで「琳派印象派 東⻄都市文化が生んだ美術展」へ。

www.artizon.museum

本展は、日本とヨーロッパ、東⻄の都市文化が生んだ天才画家たちの作品を通して、大都市ならではの洗練された美意識の到達点を比較しつつ見渡そうとする、新たな試みです。当館コレクションの核となる印象派の名画と、初公開となる琳派作品を軸に、国内の寺院、美術館、博物館から代表的な作品を加えた、国宝2点、重要文化財7点を含む約100点の作品で構成されます。

ここは自前の所蔵品が豊富なので写真撮りやすいのがありがたいですね。展示も格好良く、良い設備がそろっているのでとても勉強になります。

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低反射ガラスを使ったであろうウォールケースはとても見やすい。密にならない空き具合がもったいないけどありがたい。

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ガラスに貼ったキャプション、シールの境目が見えづらい。気泡を入れないプロの技。

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今回一番のお気に入りは、大好きな酒井抱一の《夏図》。かさおばけの表情がチャーミング!いつまで経っても見飽きない作品だった。掛け軸の柱や中回し(本紙の周囲の部分)の絵も素晴らしい。

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鈴木其一《藤、蓮、楓図》も素敵だった。スポットライトを浴びて金色の縁取りがキラキラと輝いている。こういう視覚的な仕掛けによる悦楽は、図録では味わえない。

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モネの《睡蓮》もじっくり眺められる。結界を守りつつ、ぎりぎりまで近くで…。絵の具の盛り上がりが立体的。これも図録ではわからない。

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密な掛け軸。ぎゅうぎゅう狭そう。日本美術と西洋美術を同時に味わえるのが楽しい企画展なんだけど、個人的には琳派が団体優勝です。

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俵屋宗達風神雷神図屛風》は撮影NGなんだけど、これはドガの踊り子《右足で立ち、右手を地面にのばしたアラベスク》を撮影した写真です。踊り子360°。

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センスが良い扇子の屏風。

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いつも屏風が展示されている特大ウォールケースの展示室にオリエントのガラスが収まっていた。ブリジストンはガラスも手広いのね。謙遜しているキャプションあったけど、結構なコレクションだと思います。

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チケット代以外に貢献したくて毎回ミュージアムショップにも行くんだけど、欲しいグッズがあまりないのよね。ほしい絵葉書もあまりなくて…。誰が買うんだろうと不思議に思った重そうなネックレスが売っていた。

良いもの見せてもらった満足感に包まれたまま、銀座方面へ。横浜へは新橋から帰ろう。

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昼ご飯は八重地下のエリックマサラ。どれも美味しかった。渾然一体の美味。

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「ポーラ ミュージアム アネックス展2021」に立ち寄った。伊佐治雄悟さんの作品(プラスチック製品などをバーナーで溶かして一体化させたもの)は、猫がキャットフード吐いた時に見るアレと限りなく似ていた。ちょっとだけ元の形状が残ってて、でも溶けて固まってて…。

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ギンザ・グラフィック・ギャラリー「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」前期展に立ち寄った。都現美の企画展と被る部分は多いものの、こちらは撮影可。

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石岡瑛子さんのエネルギーはスゴイ。資生堂入社直後の新人にも関わらず、デザイン原画に赤入れまくる度胸と信念は見習いたい。字に迷いがない。

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さすがに歩きっぱなしだったので、密を避けて休憩。まだ日も高いうちですが資生堂最上階「バーエス」で乾杯。休日に銀座で飲むシャンパンは幸せの味わい。ちょっと背筋が伸びるようなリッチな体験は、たまにするから感慨深い。

この1ヶ月で、資生堂名誉会長・福原義春さんの著作を何冊か読んだ。新書の『美-「見えないものをみる」ということ』に「ものごとはすべてリッチでなければならない」という資生堂初代社長・福原信三さんの言葉が書かれていた。リッチとは何か。それは、金銭的な価値ではなく、心の豊かさ、心の贅沢といった、広がりのある本質的な意味。自由に使える一日。好きな本を読む時間。美しいものに触れるひととき。美意識も感性も磨き続けなければくすんでしまうよ、というメッセージを心に刻む。私のナイフは鈍っていないか、自分に問いかける。美しいものを観たいのも、美味しいものを口にしたいのも、己の感度と想像力を試されるからだと思う。作品や食にふれて思うことは、その時の体調や精神状況と連動していると思う。心をはかる天秤。

福原さんてばエライよな、すっかり親戚のおっちゃんに接するような距離感である。今かの会社は経営的岐路に立たされているけれど、資生堂の空間も商品も広告も、すべてひとつの哲学によって支えられているから信頼している。クリエイティブを応援したい。

暗くなるからそろそろ新橋から帰ろう。と思ったものの、商業施設ウイングの中に変な店があって気になってしまった。

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ウルトラマンに登場する怪獣たちにフィーチャーされたパブらしい。空いていたので、市場調査と称して一杯だけお許しを。

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店内に飾られた怪獣たちに萌える。メニューも怪獣を思わせるラインナップ。基本的には他愛もないんですが少年心(を持つオッサン)に刺さるよね、こういうの。

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コイン怪獣カネゴンの「カネゴンの繭」を頼みました。綿飴が付いた紅茶サワーで、私には甘かった。繭を食い散らかした。前日に猫に引っかかれたので傷跡が痛々しい。

美味しい!という店ではないけれど、雰囲気は面白かった。課金するオタクと徴収するプロダクションというえげつない関係性を、ノスタルジーとロマンでまろやかに包み込むような空間だった。客は8割型ウルトラ初期世代。若い店員さんたちはどう見ても怪獣ファンには見えなかったけれど、天才デザイナー・成田亨の造形に囲まれて過ごす時間は少しうらやましいと思った。これもまた、ジャパニーズ・リッチな空間のだろう。なんちゃって。

日ノ出町「たつ屋」で豚骨ラーメンを食べる

九州の仕事があった頃は食べまくっていた豚骨ラーメンも、関東地方にこもっているとあまり食指が動かない。それでも月に一度くらいは、あの白く濁ったスープに会いたくなる時が来る。今日がその日だった。きっと、夜寝る前にインターネットで「本物の豚骨ラーメンは甘い。関東の豚骨ラーメンは偽物だ」という誰かの呟きを見たせいだ。

午後の出社前、お腹に何か入れておきたかった。職場近辺では納得のいく豚骨ラーメン屋は出会えていない。

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何度か目の前を通っていたので、日ノ出町駅前に豚骨ラーメン屋があるのは知っていた。えいやぁと飛び込んでみた。スーツ姿のサラリーマン、作業着を着たおじさんたち。店内は7割ほど埋まっていた。いいじゃない。昼前にワーカーが駆け込みたくなるような店ってことね。

さて、自動券売機の前でにらめっこ。初めて行く店では、注文は緊張の一瞬だ。しかも食券システムの店では、長々と券売機を占領するわけにはいかない。一撃必殺だ。

「豚骨ラーメン全部のせ800円」にも惹かれるけれど、ランチ時の強みを生かして「豚骨ラーメン650円」に「ランチサービス90円」にした。ランチサービスは、味玉、ネギ、のり、メンマ、替え玉などからトッピング2品を選べる心意気だ。せこいランチでも選べる楽しみがあるのが嬉しい。味玉とネギをオーダーした。セルフサービスの水を注いで席についた。

隣のお兄さんに「豚骨ラーメン全部のせ」が提供された。味玉、のり5枚、大ぶりのチャーシューなどが威勢よく乗っけられてボリューミー。おいしそう。しまった、あっちにしとけばよかったか?

いやいや、「足るを知る」ことが肝心。

間もなく着丼。

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いい面構えだ。味玉の半熟具合は憎らしいくらい完璧。しかしよく考えたらネギは無印ラーメンにも乗っているんだから、トッピングのネギは余計だったか?

そんな雑念は、スープをひと口飲んで吹き飛んだ。塩辛くなく、甘い。博多で食べた豚骨ラーメンと限りなく同一。臭みもなくまろやかな味わいは、とても優しい。フランス人は豚骨ラーメンの麺よりもスープが好きだと言う。今ならばその気持ちがよく分かる。フレンチのフルコースの前菜として豚骨スープを出してもよいのではないか。

自家製麺は細麺でスープがよく絡み、小麦粉の豊かな香りが鼻腔をチュルチュルくすぐる。ネギの軽やかな歯応えは豚とダンスを踊っているよう。シャキシャキのキクラゲがマラカスを鳴らしてムードを盛り上げる。味玉の黄身は官能的に濃い。カウンターで「ご自由にどうぞ」と待ち構える高菜は激辛だから入れすぎ注意。

胃の中が一気にパーティー状態になった。飛び込みで入った割に、どストレートにおいしい豚骨ラーメンを食べることができた。満足して、水を一気。ラーメンを食べた後の水って、世界で一番おいしい水だと思う。摂り過ぎた塩分は夕食で調整しよう。

昔の人は塩を舐めながら働いたそうだ。よし、今日も働くぞ。