盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

また韓国に行こう②エドワード・ホッパーに会いにソウル編

後半のソウル編です。前半はこちら。

sakariba.hatenablog.com

 

チェジュからソウルに入り、いつも通りノープランです。お買い物してもいいけれどこれといって欲しいものはないし、目的の展示は明日万全の状態で観たいので、午後はまったり過ごすことに決めた。

シーシャでも吸いに行くか、と仁寺洞へ。そういやキムチミュージアムに行ったことなかったので寄ってみようか。
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開館何周年かの記念で入館料無料だった。ラッキー。キムチの展示でどんな内容なのかしら。おお、エントランスからの導入凝ってるね。基本は韓国語のみで、英語にちょっと日本語がある感じ。観光客向けに頑張ってるのかしら。
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と思ったらこの後の展示は盛り上がりどころなく…。

聞こえる、「キムチだけでミュージアム作るのは無謀だって!」の声が。キムチ自体の歴史は長いけど、ニンニクや唐辛子を使うキムチが普及したのは18世紀頃だもんね。食品メーカーの企業ミュージアムでもなさそうなので深掘りが難しそうなテーマな気がする。

普通に食いたい、いろんな野菜のキムチ。
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キムチづくり体験ができるコーナー(要予約)もあった。こういうのはいいね。ま、無料だから文句は言うまい。
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さてシーシャへ。透けカーテンが洒落ていていい感じ。明るいうちからチルっちゃちましょう。
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空と仁寺洞の大通りを行きかう人たちを眺めながら煙をくゆらせる。靴脱いでぼぅっと、甘い果実のフレーバー香る白煙だけが動きのある空間。
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しばらくすると暗くなって、街の灯りがともり始めた。日本を発ってからずっと動き回っていたし、休暇だというのに忙しなかったね。中日でこういう時間を設けるのは大事。

海外でシーシャはドバイ以来。料金体系は同じくらいだけど、お店のレベルは日本>韓国>ドバイだな。中東はシーシャ本場のはずだけど、フレーバーの種類の多さと炭や器具類の管理の丁寧さは日本がダントツでした。

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夕飯どうしよ~とチェジュの友達にお勧めを聞いたら徒歩で行ける距離だったので向かいます。食べログ的なネットの評判よりも生成系AIの適当なアンサーよりも、胃が合う友のレコメンド。

土曜の夜は繁華街が賑やか。オープンテラスの席もいっぱいで楽しそう。
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来ました。イイダコを辛く炒めた料理。貝のスープ、チヂミとのセットがあったので頼んでみた。

「辛さはどうする?マイルドとオリジナル、激辛があるよ。結構辛いからマイルドを頼む人が多いけど、開店以来の味のオリジナルも人気。でも辛いよ」とのことなので、迷ってオリジナルに挑戦。「マジで!?」と驚かれたけど、えっ人気なんでしょ。

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まずは一口。あ、全然甘くない。韓国料理って真っ赤な料理で一見辛そうと思っても甘辛味が多いんだよね。これはしっかり唐辛子だね。辛さは、うん、大丈夫なレベルかな…と思ったら、後から来るやつ!だいぶ辛い!辛さはかなり得意な私でもギリギリな!ビールはアカン!

ということでソジュ。ソジュの甘さとタコの辛さがベストマッチ。辛いの苦手な人には勧められないけれど、韓国らしい料理が食べられて大満足。ほかの料理もおいしかったです。
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歩いて明洞へ。半年前より明らかに外国人が増えている。空きテナントも大分戻ってきたんじゃないかな。
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まだ夜も更けてきたばかりだし、バー探し。ソウルではあまり飲んだことないのでバー詳しくないです。目についたところから入って行こう。
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ドラマに出てきそうなお店は内装がおしゃん。外国人も多く、ホテルバーよりもずっとカジュアルに入れる、でもしっかり高級感はある店でした。デート向き。酒の種類はそんなない。
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移動してミクソロジー系のフルーツカクテル専門バーへ。入口が一見分からないようになっている遊び心ある店。冷蔵庫を開けて入ります。ここかなり良かった!
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内装好みだわ。このプリズム風照明ほしいんですがどこで買えるでしょう。
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注文は、店内の公衆電話を使って地階のカウンターへ。
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電話用のコインは横に置いてあり自由に使っていい仕組みでした。謎の凝りよう。注文は英語でも大丈夫です。
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メニュー読んでも味が想像つかないのでフィーリングで頼んだら美味しかった。ドライフルーツがお通しなのもうれしい。

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ドライアイス入りの升にグラスが載ったカクテル。これもおいしい。Bar Prima思い出しちゃう。
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良い夜になりました。バーで美味しいお酒を飲めたら、何もドラマチックなことがなくてもその日は最高の一日ということで。

出口の扉に良いこと書いてあった。「すべての出口はどこかへの入口」その通りね。

「すべての道はローマに通ず」も好きだけど「EXITはENTRYでもある」って考えもポジティブでいいな。終わりは始まり。
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翌日、帰りのフライトは早朝便なのでこの日が実質最終日。悔いのないよう。いざ。
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朝ごはんは蒸し餃子でした。腹が減っては戦はできぬ。
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来た!ソウル市美術館。HP見たときは予約制じゃないとありましたが、受付に行ったら時間制の入場になってた。入口に結構な人数の若者が待ち合わせでたむろしていたのでびっくりした。10時開館に行って10時の回取れたので問題ないけどね。もっと混んできたら予約取りづらいかも。

sema.seoul.go.kr


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音声ガイドの貸し出しがあって、韓国語だけじゃなく英語もあったので借りました。500円。字幕付きというありがたい仕様。絵を観ながらヒアリングに集中するの疲れるし。

館内は広いので混んでなさそうに見えますが展示室は結構な人。絵の前には常に1列出来ていて、間近で観るにはちょっと並ぶかも。こちとらこの展示のために渡韓したので時間を気にせず過ごしますが。
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エドワード・ホッパーのコレクションを所蔵するホイットニー美術館とソウル市美術館の共催展。つまり日本は巡回しない(はず)。秋に東京で始まるデイヴィッド・ホックニー展もソウルからスタートだし、アジアのアートの中心地はソウルと香港になりつつあることを肌で感じる今日この頃…。

さて、企画展の副題は「都市から海岸まで」。このタイトルにどんな意味が込められているのか、韓国初のホッパーの個展でどのような展示構成になっているのか、知りたいことだらけではやる気持ちを抑えて、企画展示室へGO!この瞬間がいちばん滾るぜ!

 

は~~~~!!!最高!!!!!!

展示室内の写真は撮れなかったので画面で伝えることができず残念ですが、目に焼き付けることに集中できてよかった。

想像以上に展示品数多く、音声ガイドも1時間たっぷり(25項目くらいあった)で幸せすぎた。主催者メッセージがわかりやすくてよかったので翻訳。

2020年、イギリスの日刊紙ガーディアンは、「『今や我々は皆、エドワード・ホッパーの絵画だ:彼はコロナウイルス時代の芸術家なのか?』」というタイトルの記事を掲載した。1900 年代初頭のアメリカ人アーティスト、ホッパーは、孤立、断絶、疎外感が蔓延している今日、なぜ再検討されているのか?(中略)

彼の絵は風景を超えて内省的な自画像となっており、窓越しの誰かのシルエットも、高層ビルと対照的な低い建物の屋上も、線路に沈む夕日も、どれも私たちに似ている。

本展覧会では、作品の中にその痕跡が捉えられたパリ、ニューヨーク、ニューイングランド北部、ケープコッドに焦点を当てて、アーティストの65年の絵画キャリアを振り返る。彼はニューヨークの自宅と田舎、海岸沿いのさまざまな保養地の間を定期的に行き来しており、これらの場所はホッパーの芸術的視野を広げる上で不可欠な役割を果たした。

韓国語で「途中」を意味する展覧会タイトルは、ホッパーが自らのスタイルを確立してきた旅、それぞれの道がつながり、自分だけの軌跡となること、そしてホッパーと出会う瞬間を想起させるという意味が込められている。 この展覧会では、ホッパーの生涯にわたる270点を8つのセクションに分けて展示し、芸術家の生涯と芸術世界を忠実に概観する。この展覧会がエドワード・ホッパーについての理解を広げ、さまざまな意味で疲れている私たちに彼の作品が共感と慰めを与えることを願っています。

ホッパーの作品は現代人の孤独を描いていると思われがちだが、彼が歩んだ道は多様で奥深いもので、各地への旅や演劇、音楽、自然、愛妻との豊かな時間の積み重ねによって生み出されたものだったことが、展示を通じて示された。

「ナイトホークス」に代表される都市の片隅を描いた作品も大好きだけれど、今回初めて観た、美しく荒々しい自然を描いた作品も素晴らしいと思った。ホッパーの知らない一面を知ることができて本当に良かったし、展示をまとめあげるキュレーション力に感動したね。

「私にとって最も重要なことは、継続するという感覚です。旅をしていると、物事がいかに美しいかがわかります」

それな~~!今実感してるよ!

 

水彩の作品など、一部コーナーは撮影できたのでチラリと。モデルは奥さんです。

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ホッパーの絵に入り込める今風コンテンツもあったよ。f:id:sakariba:20230504112838j:image

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場内は若い男女が多くて、休日の朝っぱらから美術館に行く人が多いと関係なくても嬉しいね。韓国でアートが人気っての納得。
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ホッパーが演劇や舞台好きということも初めて知った。チケットを美しく残している。
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イラストレーター時代の作品も初めて観た。あ、ミュージアムグッズもオリジナルいっぱいあってめっちゃ良かったです。
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数年前、コロナ前(というか直前)にニューヨークへ行った。その頃色々あって疲れ果てていて、すべてを投げ出してしまいたい気持ちで日本から逃亡した。もう何もしたくないけれど、どうせなら好きなものを観てからこの先の進退を考えたいと思って、ホイットニー美術館を目指した。ホッパーの絵が常設展示されていたからだ。「ナイトホークス」のあるシカゴ美術館じゃなくてニューヨークなのは単純に行きたかっただけ。

ホイットニー美術館で気に入った「午前7時」という作品。静かな絵なのに人の気配がして、構図といいトリミングといい色調といい全部が見どころ。1時間くらいこの絵の前にたたずんだ。ソウル市美術館で再開した時は思わず涙がこぼれた。生きてこの絵にもう一度会えたことに感謝したし、頑張ってよかったと思う。

ニューヨークで念願のホッパーを観て、帰国後ロックダウンが始まった。その後のニューヨークはパニックとなっていてどこの美術館もしばらく閉館していたので、ほんとにギリギリセーフだった。こういう悪運には滅法強い。

「もしかしたら数年、海外に行けないかもなぁ」
そんな予感は現実のものとなり、海外どころか国内も行きづらい時期が続いた。それでもあんまり…というか大して辛くなかったのは、インドアが性に合っていたことと、土壇場でホッパーを観に行けたからだろう。仕事とは言え2022年頭にはドバイに行けたので、意外と2年で海外復帰できたのは意外でしたが。

 

ま、そんなわけで、私のコロナ禍はエドワード・ホッパーとともに始まった。そしてコロナが第五類になってマスク義務もなくなった今、やっぱり私はエドワード・ホッパーを観てコロナ禍を終えようとしている(たぶん)。ただの偶然なのか、ホッパーに縁があるのかはわからないけれど、出口は何かへの入口、そういうことなんだろう。何かが始まることを期待して。そして待ってろシカゴ美術館。行こうと思えばいつでも行けるけど、ふさわしい時に訪れるよ。ライフイズビューティフル。


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ハラヘッタ。ホテルに荷物を置きがてら遅めのお昼ご飯。5年ぶり?の平壌冷麺を食べに。
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冷麺には韓国式と北朝鮮式の2種類があって、日本に伝来したのは具材たっぷり色とりどりの韓国式。でもルーツはセピア色の地味な北朝鮮式冷麺らしい。モソモソした蕎麦粉麺に薄~~い牛骨出汁。味なら韓国式のほうがおいしいと思うけど、ごくたまに食べたくなる味。北朝鮮の暮らしの厳しさを疑似体験できる味。
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午後はホックニー展観ようかと思っていたが、ホッパーに満足しきっちゃったし、どうせ日本に来るしいいかと。せっかく時間があるので、絶対に来るつもりのなかったロッテワールドへ。安いチケットが売られていたので。
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ロッテ財閥による遊園地。空いてるように見えますが結構混んでました。コスプレ制服着た男女のつがいが大量にいた。
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シンデレラ城風の建物は入れません。
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絶叫マシン!フリーフォール系のこれが怖そうだな~と並んで待つ間、乗客のリアクションで心の準備をしようと思ったら、みんな降りるとき無言でやんの。あり?つまんない系?とタカをくくったらマジで怖かった。落ち始める瞬間、超高い上空でギャーと叫び、地上に戻ってくるころには放心状態になる。だからみんな真顔で降りてたのね。ハマって連続して乗った。
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昔は絶叫系を連続して乗ってもヘッチャラだったのに1時間遊んだだけで疲れた。普段出ないアドレナリンを出すから?これが加齢か。

アトラクションは一旦止めてロッテワールド内の民俗博物館に行った。テーマパーク内に博物館があるのが韓国らしい。

www.konest.com


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館内はかなり広く、ミニチュアフロアまであった。古墳を元に再現した模型やジオラマなどで遥か昔から近代までをリアルに覗くことができる。ロッテの御曹司がジオラマ好きなのか?引くくらい気合の入った博物館でびっくりした。
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王の政務および生活の場として用いられた景福宮での国王即位式は大勢の臣下がずらりと並び、圧巻のスケール。お見それしました。
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ロッテマートで買い物するかと思ったら休みでした。韓国では第二、第四日曜日が大型マートの定休日なのを忘れていた。観光客が忘れがちなやつ。f:id:sakariba:20230504113431j:image

じゃ、マッコリ飲みに行こう。気になっていた店に入ったら大正解でした。クラフトマッコリが大量にあって選びきれない。
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これが特に気に入りました。テイクアウトもできるとのことでお土産に持ち帰り。
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メニューはこちら。英語があって助かる。ドリンクはすべてクラフトマッコリ。説明文もクスリと笑えるものばかり。
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ソウル行くときはマストだな。何人かで来て飲み比べしたいぜ。
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焼肉食べ忘れていたのでカルビ納め。
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うーん、やはり韓国は食い倒れの国。どこで何食べてもおいしい。
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ホテルに戻る前、深夜もやってる東大門のファッション卸売市場をパトロール。可愛い服ばかりなんだけど、ちょっと若い女子向けなのよね。肩出しやヘソ出しが似合わなくなってきて悲しい。ゴテゴテしたモードよりもシンプルなファッションばかり似合うようになってきた。これが加齢。
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おやすみソウル。
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早朝、東大門の東横イン前発の高速バスで仁川空港へ。帰り道はバスが楽なので東横インがありがたいのだ。帰路も楽々チェックインでした。

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まだ居たい気持ちを我慢して帰国。おセンチになったのも束の間、爆睡して復活した。
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なんか早々に再訪する気もするけれど、いったんバイバイ。出会った皆様、ありがとうございました。