盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

映画「TAR ター」を観たり、ビール日和を迎えたり

ツラかった。この世に救いはないのかと夜空を仰いだ。風を切ってチャリで駆け抜ける横浜・親不孝通りのネオンが目に滲みた。

映画「TAR ター」をシネマ・ジャック&ベティで観終えた直後の感想です。映画「怪物」も後味ニガかった(若干のエグみもあった)けれど、「TAR」は殴られたようなエンディングでブツっと視界がブラックアウトした後、現実に返る帰路でじわじわニガみが広がってきた。誰かケイト様を幸せにしてくれ。

gaga.ne.jp

TARのあらすじはこんな感じ。

いまだ女性指揮者は珍しいクラシック界にあって、リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は別格だった。米国の5大オーケストラでタクトを振ったのち、ベルリン・フィル初の女性首席指揮者に就任。ちかぢかマーラー交響曲第5番を録音し、マーラーのBOXを発売する予定だ。作曲家としても大活躍で、エミー賞グラミー賞トニー賞アカデミー賞を全制覇。自伝の刊行も控えている。のみならず、若手女性指揮者を支援する財団を設立し、ジュリアード音楽院でも教鞭を執るなど、後進の育成でも評価が高い。かくも飛ぶ鳥を落とす勢いのターだったが、ほんのちょっとしたボタンの掛け違いから、転落が始まる──。

TARは権力とハラスメントの問題を描いている。しかし終始ター目線なので、彼女のどこがいけなかったのか、なぜこのような目に遭わないといけないのか、視聴者は終盤まで理解ができない。それこそが、ハラスメントをする側の視点なのかもしれない。

VRハラスメント」とでも言ってみようか。

権力こわい。権力なんか、手にするもんじゃない!

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ジャック&ベティの壁がター一色になっていた。すごい。ポスターこんなバリエーションがあるんだ。どれも素敵。

 

それにしても、語り尽くされた問題ではあるが、個人の才覚と社会的道徳感は一致させないといけないのか。あるいは作品の素晴らしさと作者の倫理観が不一致の場合の処し方について。マネージャー的第三者やよほどできた家族がフォローし続けることが必要なんだろうなぁ、現代においては。

不祥事を起こした俳優が出演した作品はお蔵入りしないといけないのか?世の中を騒がせた人物は一定期間干されなきゃならないのか?個人の声が大きく拡散される社会だからこそ、作品や才能の重さが疎かになっていないか。うーん、たぶん私は芸術至上主義に偏っているんだろうな。

 

モヤモヤしたままでは締まらないので、伊勢佐木町つながりで、最近の良い思い出。

梅雨明け前なのに30℃超えの日が続いて、昼間は一歩も家から出たくないこの頃ですが、さすがに土日とも家に籠もりきりだと勿体ない気がしてくる。そこまで湿度が高くない、カラッとした空気の夕方。ビールが飲みたくなった。

お酒がめっぽう好きな人間に思われがちですが、一人では基本飲まないし、実は人に誘われない限り飲みに出かけることは少ないです。あったかいお茶や白湯が好きなので、家では映画見ながら湯気の立つホカホカしたノンアルH2Oを飲み続けています。(たとえ観ているのがホラーだとしても)

そんな私ですが、たまに自分から無性に飲みたくなる日があります。最近は、年に何日もないかもしれない。そんな日があった。

夕方、習っている踊りの帰り道。全身汗だくになるくらい1時間激しく踊った後、ミント入りの汗拭きシートで全身を拭い、新しいTシャツに着替えて、足をガクガクさせながら駅に向かった。電車を待つホームで、いい風が吹いた。微温い風にさぁっと全身をなでられて、汗拭きシートのミント効果ですぅーっと涼しくなった。その時、「あぁビールが飲みたい」と思えた。

今日は絶対ビールが美味しいぞ。エビスとかサッポロじゃなく、アサヒでもなく、オリオンのようにさっぱりと薄味のもの…いや、東南アジアのビールの気分だ。チャーンだ、絶対チャーン飲むぞ。

 

たまらず、友達にメッセージを送った。

「きょう、ビール飲みたくない?」

すぐ返ってきた返事はYES。1時間半後に集合することになった。

 

帰ってお風呂に入って汗を流し、さらにビール・コンディションを高めた。汗をかけばかくほど、ビールを美味しく感じる。これは真実です。(健康には悪いかもしれないけれど。ちゃんと水分補給はしております)

 

行ったのは、真金町のタイ料理居酒屋「ソムタム」。ラブホ街が裏にあって、横浜橋商店街の近くにある横浜・ド・ローカルな店である。

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取るものも取りあえず、チャーンをオーダー。瓶もグラスもよく冷えている。

コポコポ…カチン、ごくり、ごくごく。

 

 

…消えた!?

今グラスに入れたビールが蒸発したぞ!だめだ、入れても入れても蒸発してしまう!おねいさん、もう1本チャーンください!
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そんな調子で3本を秒殺し、その後も欲望のままチャーンだけを飲みまくりました。


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何を食べても美味しい。メニューがとにかく多く、1皿もボリューミーなので3人以上で来ることを推奨する。店名になっているソムタムも色んな種類があって選びきれない。結構辛みも本格派なので、お子さんがいる場合は手羽先(はちみつタレ)がおすすめ。

これまでタイ料理はJ's Store一択だったけれど、これからはソムタムに通っちゃうなぁ。かなりローカルなメニューに、絶妙に日本人好みの味付け。

 

友達と2軒目に。この近くのバーといえば阪東橋の「アポロ」でしょう。

横浜にアポロあり。この一帯では一番古い店と聞いています。風俗街ど真ん中、右も左もピンクなお店ばかりの通り沿いなので、なかなか近寄りがたいかもしれないエリアです。1階にメンズ・リラクゼーション「アロマ倶楽部 カサブランカ」があり、その2階にアポロがあります。勇気を振り絞って階段を上ってみよう。80代のマスター・チャンさんが優しく出迎えてくれます。ちなみに隣の店は店舗型ヘルス「クラブFG」です。


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ウイスキーソーダ割り(濃いめ)を飲みながら、マスターの話を聞くのが楽しい。100円3曲の現役ジュークボックスで名曲をかけて遊んでみてもヨシ。

 

あ、全然関係ないですが髪をバッサリ切りました。乾かすのが早くなり、便利です!