盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

まさご座3月頭、かすみ玲ちゃんのトリを観に行こう

「ストリップ劇場はどこが好き?」

劇場でよく会うお客さんたちからよく聞かれるけど、大抵「まさご座!」と即答している。そりゃあホームは上野(近いし落ち着く)で、売店込みで大和も大好きだし、池袋や渋谷や蕨や新宿や川崎や横浜も、もちろん浅草も、もっと言えば関西圏の劇場にも思い出がたくさんあるけれど、距離を一切考慮しなければ、まさご座に通いたい。

まさご座の雰囲気が好きだ。場内の広さやゴージャスさ、回転盆は大きくて光るし、天井や壁に貼られた鏡も幻想的だし、靴が脱げて飲食ができるアットホームなところ、明るめの照明(昔はLEDでなくハロゲンでもっとキレイだった)、常連さんたちのムード、周りの美味しい飲食店など、良いところを挙げればキリがない(しいて言えば女性トイレがほしい)けれど、何てったって、かすみ玲ちゃんを一番美しく観られるから。※一番というのは個人の感想です。もちろん他でも最高!だけど、かぶり席で見上げた時の神々しさは代えがたい。

そんなまさご座で、玲ちゃんが3月頭に久々にトリを務めるという。そりゃあ行くしかないでしょ!1月半ばあたりに本人に聞いた瞬間「絶対行く」と宣言し、さっさとホテル予約。何番目でも行きたいけど、だってトリですよ!「今週のトリを飾っていただくのは、かすみ玲さんです」のアナウンス生で聞きたいでしょ!応援して、盛り上げて、ちょっとでも売り上げに貢献して、直接おめでとうと言いたい。応援のかたちは色々あるし、人それぞれ行けない事情は当然あるだろうけど、「実際に観に行くこと」が何よりの踊り子さんへの応援になると思うので。スケジュールや金銭事情で行けないことも多いので、個人が出来る範囲で出来る時だけね。

というわけで、3月7~8日の土日にプチ遠征。いつか1週間制覇したい・・。

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【3/1-10の香盤】

1.ゆきみ愛

2.浅井ひなみ(初出演)

3.葵マコ

4.くるる(初出演)

5.かすみ玲

さて、かすみ玲ちゃんは、「桜」義経千本桜(牛若丸)」「羽根扇」「魔導士」の4個出し。気合入っております!まさご座のコース決まった時点で「何出そう~」と悩み、衣装を引っ張り出し、かなり入念に準備をしていた模様。先週の道後でも練習を重ねていたとのこと。以下、ちょっと長いですが演目の感想。

「桜」:2012年の「桜3rd」。大道具と衣装、演出が凝った不動の名作で、春先に観られると嬉しい作品。観ると寿命が延びる。大道具として、本舞台の上手と下手に桜の大きな枝ぶりを配置し、照明をつなぐ必要があるので、暗転しながらの準備時間を要し、進行が押している時はショートバージョンとなる。衣装は引き振袖で、明るい緑色の絞り柄が鮮やか。帯は黒地に色とりどりの花が咲いた華やかなもの。抱え帯は無地の濃い紫色で、振袖の緑色の反対色として色彩的にも考えられている(と思う)。振袖の袖口はピンクとオレンジの縁取りが、ふき部分(裾の膨らんだ部分)はゴールドの縁取りがアクセントとなりおしゃれ。胸元には筥迫と懐剣を差し、髪留めは大ぶりの花や凝った金属装飾がたなびく。頬紅はピンクを濃いめに差し、口紅も赤みの強いものを選んでいる(と思う)。

投光さんのアナウンスの後、照明がばっと点くと、これらの大道具と豪華な衣装に圧倒され、「これはすごいものが始まる」と誰しもが確信する。玲ちゃんは和も洋も似合うけれど、日本舞踊の心得があるし、プライベートでも歌舞伎が大好きなので、いつも非常にレベルの高い和演目を披露してくれる。

和風な1曲目は本舞台で舞い、アップテンポの懐メロ(この曲大好き!)で盆も使って笑顔でダンス、3曲目で振袖を脱いで大道具の桜をライトアップし、4~5曲目に桜の某名曲で濃厚なベッド、ポーズ。振袖の下は桜柄の艶っぽい襦袢を着ており、ほんのり桜色にほてった白い肌が照明に照らされると「桜の精」そのものに見える。ベッドでは、春の訪れを喜びながらも別れを惜しむような、繊細な表現・表情を魅せる。8日目、日曜の1・3回目では、ベテランリボン・タンバのまぁさんが桜を投げてくださった。ラスト曲の立ち上がりと去り際に、確か4投。正確な場所・タイミングで桜を降らせる匠の技。照明・音響もベストタイミングで、みんなで息を合わせて玲ちゃんのステージを作り上げている。こんなん泣くでしょ・・と、演目後に隣を見るとチビクロさんが号泣していた。分かる。

義経千本桜」は2020年1月の大和のお正月興行で披露した演目。何度も感想書いているけど、観るたびに表現が深くなり、進化を続けている。最初、元旦に観た時は牛若丸衣装の袖口のラインストーンチェーンが本舞台に吹っ飛んだり、笛が落ちそうになったりしていたけど、踊りやすいように色々な工夫をしている模様。3曲目のベッドで、凛々しい牛若丸から、麗しい静御前(夜桜の襦袢)に着替えた時の美しさと言ったら!

「羽根扇」は大きな白い羽根扇を2つ使った洋物演目で、玲ちゃんの美脚が堪能できる。まさご座の広い盆で羽根扇さばきを披露する姿は白鳥のよう。羽根から送られる風が良い匂いで、うっとりします。

「魔導士」はHIKARUさんからの継承演目。衣装や小道具、結構前に作られたもののはずなのに、全く古びないデザインで、しかもすごくキレイに保存されている。綻びや汚れも見えず、玲ちゃんが大事に手入れしていることが分かる。1曲目の衣装は装飾のついた白いマントで、大きなフードを深めに被っている。小道具は魔導士らしいマジカルなヘッドが付いた杖。ベッド時に盆で振り回すのが、大迫力です。蕨じゃ危険すぎて絶対できない・・というか杖どうやって郵送するんだろう。2曲目あたりで魔法を披露するであろうシーンで、照明が暗くなり、盆の照明だけが青く照らされる。まるで魔法陣のようでキレイだった。3曲目で魔法勝負に敗れ?衣装をはぎ取られながら盆の方で囚われる。ベッドでは、犯されているような動きに息をのむ。魔導士らしく、左腕にタトゥーシールを貼っているのが玲ちゃんとしては珍しいかも。演目の流れがドラマチックでハラハラし、そしてベッドがめちゃくちゃエロいので、HIKARUさんすげーということもよく分かる(天狗はないよ)。ちなみに、某後輩踊り子さんに衣装を譲るという話を小耳に挟んだので、そろそろ見納めになるのかな・・。

まさご座で玲ちゃんを観た全体の感想として、まず最初に思ったのは「身体絞ってる~~!!お腹周りがスッキリ鍛えられている!足腰もいつも以上に細い!」でした。ビールの量は変わってないはずなので、トレーニングを重めにしたのかな。本人に聞いたら「立ち上がりや写真撮影でたくさんブリッジしているから、ブリッジダイエットだね」とのこと。ブリッジダイエット、効果はんぱない。

そして4個出し(いつもは2~3個出しが多い)ということからも分かるように、華やかに立派にトリを務めようという意識が強い。トリは、毎ステージのクライマックスという大役。トリが誰かでその週の客入りも大きく左右するので、劇場側もコースを切る時にトリを中心に組み立てるはず。ちなみに、まさご座はトリ専用の楽屋があるそう。玲ちゃんいわく、大道具や衣装を置くために段ボールだらけだとか。トリを飾ることは、客側が思う以上に踊り子さんは誇りやプレッシャーを感じるのではないでしょうか。

 せっかくなので、一言ずつ他の踊り子さんの感想も。

1.ゆきみ愛

華のトップステージ。よぉしストリップ観るぞ~という気持ちにさせてくださるベテラン。いつ拝見しても格好いいし、安定感がある。ダンスからベッド、立ち上がりまでの流れを一息でやってるんじゃない?というくらい滑らかで自然で無理がない。盆で裸を見せるだけで圧倒的迫力を感じる、すごい人。MCも上手くて、初めましてさんや団体さんたちへの絡みが上手い。みんながほっとする空気をつくりだしてくれる人。

2.浅井ひなみ(初出演)

デビュー間もない新人さん。初々しいダンスと笑顔が可愛らしく、頑張り屋さんなのがよく分かるので、色んな経験を積まれると良い踊り子さんになるだろうなと思う。本人、笑顔をつくるのがまだ苦手・・とのことで、一所懸命さがある反面、力が入りすぎているように見受けられるので、もっと肩の力抜いて、自然体でいいんだよーと言ってあげたい。オープン曲が好き。客席の方まで来てくれるサービス精神豊かな人。

3.葵マコ

芸達者で泣ける表現をされるストーリーテラー。まさご座で拝見する率が高い。きっと色々な人生経験があるんだろうな、あらゆる人の心の弱い部分や挫折、葛藤などを包み込んで抱きしめてくれるようなステージをされる。彼女に救われる人も多いだろう。黒猫の演目で、少年のズボンに黒猫のワッペンが縫い付けてあったり、細かいところにもこだわりが見える。伸びやかなエアリアルが爽快。

4.くるる(初出演)

くるる、ってお名前、秀逸だよなー。くるるんとカールした前髪、くるるんと曲線が美しいスレンダーな身体、くるるんとアクロバティックなダンス。彼女以上に「くるる」が似合う踊り子はいない。アイドルっぽい演目が似合う、可愛らしくも可愛いだけじゃなく、可能性を秘める人。

7日目の土曜日は、関東館などでもよくお見かけする玲ちゃんの応援さんたちが多数いらしていた。やー、先週はどうも、来週はいつ行く?なんて話していると岐阜にいるのを忘れる。4回目のトリまで見届けて、終演後の飲み会に混ぜていただいた。

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tabelog.com

玲ちゃんや踊り子さんたちもよく行くという中華料理屋。初めて行ったんですがすごーーく美味しかった!焼き餃子や麻婆豆腐、麻婆茄子、エビマヨ、酢豚、バリメン、ラーメン、炒飯など何食べても全部味付けが違い、最高に美味しかった。中華で味を使い分けて飽きないようにするって、結構高度なのですよ。岐阜グルメ、奥が深そうだ。

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夜も更けて解散。一部の男性陣は柳ヶ瀬ナイト方面に進んで行った。私は明日もあるので大人しくホテルに戻る。連れ込み宿っぽい風情だけど、一泊3,000円という安さの割に設備がちゃんとしていた。

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ダンカンさんに、バレンタインデーのお返しで買ってもらったマスクなどを早速使いつつ、就寝。

翌朝はチビクロさんたちと開場前に合流し、岐阜ランチを教えていただいた。「丸デブ総本店」という老舗のラーメン屋らしい。店内でつじさんに遭遇して驚いた。え!今日はまさご座行かないの!1回くらい行こうよと煽りつつ、みんなでワンタンを啜った。薄ーいワンタンが蕎麦のような出汁感強いスープとマッチしていて、あっつあつで、とても美味しかった。

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その後、まさご座かぶりつき席で堪能。はるさんにも会えた。樹音さんの容態伺いつつ、また芦原乗るときは応援しに行こうねーと話す。

この日に帰るため、途中で離脱。それに、岐阜に来たら行かねばならぬ場所がある。「金津園」だ。

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金津園とは、中日本最大級のソープランド街。岐阜駅南口から徒歩3分、歴史は古く1888年に誕生した「金津遊郭」に端を発する。この場所に移ったのは1950年だったらしいけれど、最盛期は60軒以上の特殊浴場が立ち並んだ。今は、道路拡張工事の影響もあり、立ち退いた店も増えてきた。それでも店の駐車場は結構埋まっていたので、コロナ騒ぎのなか、濃厚接触したいお客さんは多くいるようだ。営業の邪魔にならないよう、さっと歩いて、必要に応じてボーイさんと話し、写真を撮らせてもらった。おごと温泉に行った時もそうだったけれど、人や特定できるものが写らなければ写真を歓迎してくれる店もある。いずれ無くなっちゃうから、記録残しておいてよ、と言われる。

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「想い出」は、連れ込み旅館の風情が残る老舗特浴で、好きな建物。玄関の柱タイルのなんと可愛らしいこと。調べたらリーズナブルだけど高評価なお風呂屋さんだった。私は客にはなれないので、誰か行って感想を聞かせてほしい。

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柳ヶ瀬商店街にも素敵な建物、横丁が多くある。夜は客引きが立ち並ぶ商店街も、昼間は閑散と眠っている。今作ろうと思っても、作れない建築や構造体ばかりなので、街場の文化遺産だと思うのだが。

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柳ヶ瀬本通りのアーケードを見上げると、5体の彫刻がいた。クリスティーヌ(平和な街に)、アントニオ(開運)、ソフィア(繁栄)、アリオン(常に学ぶ姿勢)、マリーヌ(感謝)を象徴するとのこと。

来るたびに色々な出会いや発見のある街、岐阜。今年は何回来られるかな。