盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

年末も映画三昧、「ラストナイト・イン・ソーホー」イン・トーホー!

2021年新作映画のランキングを先日書いたけれど、その後いくつか新作映画を観た。結論として私的ベスト1位2位に変動はないものの、どれも心に残る良い映画だったのでメモ。あと「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」の公開が2021年3月だったことをすっかり失念していたので、私的MVP賞を与えたい。庵野監督よくまとめたよ、よくやった!という気持ちです。すべてのエヴァにありがとうとさようなら。

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まずは「007 ノータイム・トゥー・ダイ」。周りの評判がそんなでもなかったのでつい後回しにしてしまったけれど、めっちゃ面白いじゃん!なんなら名作と名高い「スペクター」よりも構成が良かったし、ダニエル・クレイグへの壮大な鎮魂歌(レクイエム)としても満足のいく出来だった。オープニングにビリー・アイリッシュを起用したのも良いな。007ってこういう流行歌手も取り入れるのがうまい。

監督のキャリー・ジョージ・フクナガは初の007シリーズ監督とのこと。「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」などで培ったカメラワークやホラー演出が存分に活かされていた。3時間もの内容を、観客を飽きさせずに伝えきる手腕はさすが。そしてラストシーンには思わず落涙してしまった。

レイトショーで観たものの、終演後ダニエル・クレイグの弔いがしたくなりBar Primaへ。24時以降も気軽に行けるバーが近所にあって嬉しい。

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やっぱりヴェスパー・マティーニをオーダー。

バーテンダーのYさんが気をきかせて、007の作中レシピを参考に作ってくれた。とっても美味しい。「スペクター」ではマティーニを飲もうとしたら敵が現れてグラスを吹っ飛ばされていたので、本作では思う存分飲ませてもらっていてよかった。戦いながら強いお酒を飲むのが007流。

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ヘンドリックスでギムレットを作ってもらったら、ジンの苦味がちょうどよくマッチして感動。ヘンドリックスは癖のある味わいなので、今までロックかソーダ割りでしか飲んだことがなかったけれど、オーダーしてみるものですね。

ヘンドリックスは大好きなジンで、特に「ミッドサマーソルスティス」が好き。ミッドサマーとは夏至のことで、スコットランドでは夏至祭がしばしば行われる。映画「ミッドサマー」のように、花々の香りに包まれて、神秘的で儚い享楽に酔える。

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もう一作、2021年に一番楽しみにしていたと言っても過言ではない新作映画「ラストナイト・イン・ソーホー」を観た。公開当日、TOHO日比谷で。「ラストナイト・イン・ソーホー」イン・トーホー!と言いたかっただけです、はい。

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この映画は、「ベイビー・ドライバーエドガー・ライト最新作で、「クイーンズ・ギャンビット」のアニャ・テイラー=ジョイと、「オールド」のトーマシン・マッケンジー、今最も旬な2大女優が共演するという超注目作なのです。映画ファンなら問答無用で観なきゃいけないやつですね。

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1960年代のロンドンを舞台にするだけあって、ポスターも色々デザイン遊んでいて楽しい。

 

予想以上にサイコホラー要素強いので万人に勧められる作風ではないけれど、私は好きだな!エドガー・ライトの思いが詰まった選曲を大音量で、アニャちゃんの「強い顔面」をスクリーンいっぱいに観られる幸せ。娯楽映画ってこうじゃないとね。

この映画で「60年代ロンドンの華やかな暮らし&ファッションを楽しみたい♪」と思っていた観客たちは、割と早々に主人公と一緒に悪夢に引きずり込まれてひどい目に遭ってしまうんですが、その劇場の一体感が良かった。エドガーにまた騙されたぜ!

ま、でも「ベイビードライバー」も心を閉ざした少年の成長物語だし、「ラストナイト・イン・ソーホー」も夢見る田舎少女の成長物語ってことで、同じジャンルよね。ロンドンは怖いところだね、っていうオチだし。

裏テーマである「女性搾取の問題」は、今年色んな映画でも見られたテーマだった。「プロミシング・ヤング・ウーマン」「最後の決闘裁判」しかり。本作は男性監督らしい目線だったので、逆の立場でも語ってほしかった。欲を言えば、アニャ演じるサンディはもっとしたたかに逞しく描いてほしい。そうでないとオチの説得力(実は✖✖に✖✖を⁉)が弱まると思うので。

 

ちなみに、主人公が下宿する家の女主人は、ダイアナ・リグという女優さん。この人、「007ノータイム・トゥー・ダイ」でも大々的にオマージュを捧げられていた、「女王陛下の007」のボンドガール(ジェームズ・ボンドが唯一結婚した女性)ということを、観終わってから知って驚いた。全然気づかなかった!

あと、細かくて伝わらない話なんだけど、主人公の祖母(リタ・トゥシンハム)が妙に怖くて仕方なかった。稀代の名作「ヘレディタリー 継承」のトラウマが未だに残っています。白髪で痩せた高齢女性&主人公の祖母はみんな悪魔降臨するのではと身構えてしまう。

 

年末年始は何を観ようかな。毎年クリスマス時期に友人らに勧めるのは「グリーンブック」「東京ゴッドファーザーズ」です。

私は好きな映画を観返すことが多いので、やっぱり今年も「エクソシスト」「ヘレディタリー 継承」でオカルトナイトかな。…趣味の悪さは承知の上。

いいコにプレゼントを配る赤いサンタもいいけれど、悪いコにお仕置きをする黒いサンタの方が惹かれてしまう性質なのです。黒いサンタは、プレゼントの中身に石や石炭を詰めたり、ベッドルームに臓物をまき散らしたりするんですよ。

そんな悪いコたちが見る映画は「悪魔のサンタクロース 惨殺の斧」「サイレント・ナイト 悪魔のサンタクロース」「バッドサンタ」で決まり!皆様良い年末を☆