盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

伊勢佐木町の銭湯・利世館に行く

今週、テレワークに行き詰まった弟を数日泊めることになった。弟の会社も2020年春からずっとテレワークで、会社に行くのは月に何度かだと言う。自宅ではどうしても能率が上がらず、モチベーションが保てないという話だった。確かに、ワンルーム1人暮らし、デスクの背後にベッドがある空間で毎日8時間仕事するには限度がある。ワークとライフのバランスが崩れない方が不思議だ。独房ですら軽作業は別室で行うではないか。

そんなわけで、たまには環境を変えてみたらいいのではと提案し、居候させることにした。コロナ禍で他人との接触は避けたい状況だけれど、互いにほぼ在宅していて濃厚接触の可能性が低いならばリスクは低いと思った。家も都内と横浜の距離だし。

期せずして、ほぼ十数年ぶりに弟と生活を共にすることになった。私が大学入学時に実家を出て以来だ。ま、結果的に同じ大学に入学して近所に住んだので、よく行き来はしていたけれど。

ダイニングテーブルを挟んでの仕事は、互いに結構捗った。身内であっても多少の人目がある方が自分を律することができるみたいだ。休憩時間中にちょっとした雑談をしたり、一緒に朝食や昼食を作ったり、夕食の買い出しに行ったり、平日に小さなコミュニケーションを重ねることができるのはありがたい。下手したら1週間誰ともリアルで喋らないのがザラなので・・。夕食も、2人いると品数を作るのが苦ではないので栄養バランスが良くなる。

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昨日作った肉デストロイヤー(肉じゃが)の残り、鰯の梅煮、蒸し野菜、新玉ねぎとワカメの味噌汁を作った。スーパーマーケットには春野菜が並び始めた。

 

ある夜、行きたい銭湯があると言うので二人で訪ねた。伊勢佐木町のソープ街のど真ん中、「利世館」という老舗銭湯だ。石鹸の香りが漂う夜の街に、ひっそりとお風呂屋さんが存在していた。

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弟は風俗街の銭湯に行くのが好きらしい。飛田新地にも銭湯があったという。「利世館」の浴室は年季が入っていたがきれいに保たれており、レンガ調のタイルが横浜らしいと思った。地下70mから湧出した天然温泉を使用しており、ジャグジー・黒湯・水風呂・サウナがあった。この日の黒湯はとんでもなく熱く、台東区の燕湯(熱さで有名)で鍛えた私も長時間は浸かれなかった。大して水風呂は極寒だった。よぼど手練れの常連が多いのか。侮れない。

遅めの時間に行ったので、女湯・男湯ともに空いていた。女湯の先客はアジア系の外国人女性3名だった。どうやらタイ語で話しているようで、近所のマッサージ屋の同僚同士かなと思った。サウナのBGMは演歌の有線放送が流れており、タイ語のガールズトークと混ざると、次第に、ここがどこで、何年なのかが分からなくなってきた。今この瞬間のサウナ室のマジョリティはタイ人。まるで異国に来たようで面白い。私もタイ語が喋れたらよかった。

浴場を出て、更衣室で髪を乾かした。ドライヤーは4分20円だった。タオルドライをしっかりして、なんとか4分以内で乾かせた。受付で待ち合わせをした弟と、湯気と石鹸の香りを漂わせて帰宅した。弟と暮らして、一緒に自炊をして、また行きたい銭湯を見つけたというだけだけど、ちょっと良い1日になったと感じた。

リモートワークや孤食、ステイホームを長く続けていると、人とのコミュニケーションが恋しくなるのは、人間が社会的動物だからだなと思った。コロナによって、会社や所属コミュニティ、町会などへの帰属意識が薄れることで、なんとなくアイデンティティもぼんやりしてくる気がする。平たく言えば、ひとりぼっちは寂しいのだ。

他者があってこその自我形成。オンラインは発達しているけれど、帰属意識の醸成、他者とのつながり、経験の共有という視点ではまだまだオフラインに勝てないな。そんなことを考えつつ、芯まで温まったせいか、この日はよく眠れた。

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翌朝、早朝に大岡川沿いを散歩して「ちゃま珈琲」でモーニングを食べた。カレー風味のポテトサラダが絶品だった。店内には酒瓶やレコードが所狭しと並んでおり、パニーニなどの軽食も充実した様子で、落ち着いたら夜にも来たい雰囲気だった。ひとまずは、明るいうちに再訪しようと思う。