盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

閉館する油壷マリンパークに行ってきた

2020年から2021年にかけて、閉館・閉店する商業施設やテーマパークが増えている気がする。恵比寿の三越バーニーズニューヨーク新宿店、池袋マルイ等。渋谷の東急本館も閉まるとか。コロナ禍がどのくらい影響を与えたのかは分からないが、神奈川県民を震撼させたのは京急油壺マリンパークの閉館のお知らせだった。

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2021年9月30日をもって、53年の歴史に幕が閉じる。私は幼少期に数年間磯子に住んでいたので、その時に何度か訪れていた…らしい。残念ながら全く記憶にない。行ってみたら思い出すだろうか、ということで行ってみた。

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閉館間際の週末はさすがに人出があったものの、入場制限などはなく普通に行けた

油壷。あぶらつぼ。土地勘のない人はギョッとする響きだ。

地名の由来は、①湾内が穏やかで油を流した時の様に静かだという事から名づけられた説と、②鎌倉時代に三崎城が落城した際に、打ち破られた三崎氏の死体から流れ出る血が漂い、まるで油を水に落としたように漂っていたことから名づけられたという説がある。リゾート地としては①が由来であってほしいが、個人的には②も捨てがたい。

京急油壺マリンパークは1968年4月27日に開業した。もともとマリンパークは京浜急行電鉄の創立70周年記念事業として計画された。現在、東京都心・横浜方面からの列車の終点となる三崎口駅は7年後の1975年4月26日に開業を迎える。京急久里浜駅までは1942年に開通しており、同社による三浦半島の開発は戦後の1960年代に本格化した。

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マリンパークとは要は水族館。博物館学の授業に使えそうな素材がたくさんあった

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最初の通路は左手に水槽、右手に資料展示。多くの人は水槽だけを見て通り過ぎる。

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右手の資料展示は、館にゆかりのある研究者や人物の紹介。手作り感があって好きだ。

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水槽は結構遊び心がある。閉館したら魚たちはどこに行くのだろうか?

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水槽の裏に行くと記念写真が撮れるコーナー。手前の花のちぐはぐさに味がある。

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見どころは円形水槽コーナー。回遊魚が猛スピードで泳いでいた。サメもいた。

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魚たちのリアルタイムショーを一日何度か行うのが目玉。イルカとかが実演するアレの魚版。光で訓練をして、タイミングに合わせて輪くぐりや移動をする。ポップなセットと小魚のシルエットがシュールで良い。面白いのだが目を凝らさないと判別できない。

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ところどころ昭和感あふれる書体に出会える。ストリップ劇場みたい…

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屋外にはペンギンやアシカがいる。私の心をつかんだのはコツメカワウソくんたち。可愛い顔して肉食系なところに惹かれる。ついぬいぐるみを買ってしまった。

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屋上遊園地にいる奴らがいた。乗りたかったが、さすがに子どもたちを差し置いて三十路がフィーバーしてはいけないと思い我慢した。

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展望台から全景を眺めた。相模湾に面して自然に囲まれた水族館ということがよくわかる。空と海がつながるいいリゾート地だなぁ。閉館後の使い道はわからないけれど、この景観を活かした有意義なものになるといいですね。

マリンパークを後にして、横須賀中央まで足を延ばした。

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横須賀は夕暮れがよく似合う。街に灯りがつき始める時間帯が一番美しい。

クレイジーケンバンドの新アルバムにしてオールカバー楽曲で構成された「好きなんだよ」のキラーチューン「横須賀ストーリー」を聞きながら街を歩いた。山口百恵の原曲は、別れる寸前の男女の微妙な駆け引きが魅力だが、剣さんが歌うと軽快でこざっぱりしている。夜の店の女に騙されて、有り金つぎ込んでこっぴどく振られた男の歌にも聞こえる。

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この時は緊急事態宣言も明けていなかったので、ノンアルコールでおとなしく帰宅した。あと1か月持ちこたえてくれていたら、若松マーケットで呑んで〆ることができたんだけれど。

結局、幼少期に行った記憶は探り当てられず、私にとっての油壷マリンパークの思い出はこの日だけになった。ま、それもいい。できればこの先の30年くらい忘れずにおきたい。