盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

神奈川県民ホールギャラリー2022年度企画展「ドリーム/ランド」を観る

年の瀬。キリよく仕事納めが出来たので悠々自適の冬期休暇に入りました。この機会に積読を消化したり、朝から晩まで映画漬けになったり、昼間からストリップ鑑賞に耽ったり、溜まっていたブログ更新をしたりしようというワケ。

この機会に読みたかった本を20冊追加購入して、最近凝ってる音響装置から常時J-WAVEを流して、ふるさと納税で無農薬みかんを段ボール1箱分発注し、ネットスーパーで鍋の材料をたんと買い込んだ。エアコンと象印の加湿器で部屋は快適だし、もう1歩も家から出なくても1週間暮らしていけるだけの娯楽と環境は揃えた。猫も2匹いる。ここが天国だ。たとえ明日から緊急事態宣言と言われても余裕のヨっちゃんよ。

世間の皆様は忘年会や帰省といった外出イベントがあるようですが、こちとら社会的責任の薄い身の上なものでスケジュール真っ白けっけで気の楽なこと。ただ、そんな欲望のまま昼夜逆転生活をしていたらマジでアっという間に年を越してしまいそうなので、ひとつくらいイベントを設けようと気力振り絞って展示納めしてきました。

 

神奈川県民ホールギャラリーで開催中の2022年度企画展「ドリーム/ランド」

dreamlands.kanagawa-kenminhall.com

横浜の友たちは勿論、アート好きの界隈でもあまり知られていない気がする…が、私も県民ホールギャラリーでアート展示やってるなんてイメージなかったよ。しかも、ゴリッゴリの現代アートだし。

 

展示概要はこんな感じらしい。

ドリーム(夢)という言葉は「夢のような世界〈理想・楽しいこと〉」、「将来の夢〈願望・希望〉」など多様な意味合いを持ちます。油画、日本画、彫刻、刺繍、映像を制作する7人の作家によりこれらドリームがいかなる作品として展開するか?請う、ご期待。

 

「ちょっと何言ってるかわからんな(笑)」と首を傾げつつ、20年前に閉園した遊園地「横浜ドリームランド」に何か関連するのかもしれんという予感を持った。あそこは遠かった。

dreamland.yokohama

 

とにかく、神奈川県民ホールギャラリーで開催する現代アートの企画展は2014年以来らしい。出品作家を見るに一筋縄ではいかなそうでイイね。近いし軽い気持ちで行ってみよう。


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中華街は混んでいたけれど県民ホールまで抜けると閑散としていた。受付で入場料800円を払い、早速中へ。

 

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白い壁、白い床のホワイトキューブに散らばる1万円札とスーツケース。

 

よく見ると、一万円札は刺繍で出来ていた。青山悟さんの刺繍作品はいつ見ても精巧。
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本物の1万円札と並べてみた。そりゃあ紙と刺繍は質感は違うものの、妙な存在感がある。通貨を作品にするというのは、赤瀬川原平の「模型千円札」へのオマージュだろうか。
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制作過程のビデオも面白かった。
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ドル札は本物より大きめに作られていて、訴えられないように配慮していたのかな。
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次の部屋は悪夢のような光景が広がっていた。笹岡由梨子のインスタレーションらしい。法輪のような造形物にディスプレイがついており、映像投影されている人間の顔のパーツがレンチキュラーレンズで歪む。たまにキラキラモップが動く。コロナウイルスのワクチンを打った時、熱に浮かされながら見る夢はこんな感じかもしれない。f:id:sakariba:20221226214225j:image

この作品に限らず、「なんでこれを作ろうと思った!?」「どうやって作った!?」と驚くものが多くて、常識や定型をぶっ飛ばしてくれて良かった。

 

次の部屋が一番面白かった。林勇気の映像インスタレーション

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膨大な量の写真(公募したらしい)がプロジェクションで壁に投影されていて、宇宙をさまようデブリのよう。高い天井の効果もあって浮遊感があった。この広い空間をまるごと一人で使えるなんて、作家冥利に尽きるだろうな。
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映り込みがキレイなので白い服を着ていくのがオススメ。
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イマーシブミュージアムなどの「体感型デジタルアート空間」が流行った2020~2022年、「プロジェクターの解像度がいまいち」「音響が微妙」「この作品でやる意味ある?原画観たいんだけど」など難癖をつけてどれもノリきれませんでしたが、この展示は面白かった。作品自体の出来がイイのは前提として、なんでかなと思ったんですが、ひょっとしたら他の鑑賞者がいないからかもしれない。

没入するためには人目を気にせずウットリしたいじゃん。宇宙にぽつん、放り出されたような気分で映像の中に入りたいじゃん。贅沢な時間。そういう意味では、この展示は平日真っ昼間に行くのが狙い目かもしれません。

いずれにせよ、横浜美術館のリニューアル工事が遅れている今、ハマの大箱で現代アートを観る貴重な機会なので是非どうぞ。
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鑑賞後、産業貿易センタービルの地下のアメリカン・キッチュな雑貨屋を覗いたり、赤レンガ倉庫のスケートリンク場を横目で眺めたり、みなとみらい東急スクエアストアのフライングガーデンを冷やかしたり、みなとみらいの造船ドック跡地に誕生したシェアスペース「BUKATSUDO」に行ったりした。
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たっぷり3時間歩いたので水分補給。野毛のぴおシティ地下街で17時までハッピーアワーの「太陽ホエール」でメガハイボール(350円)をグビグビ。生ビールもレモンサワーも230円、餃子も1皿230円とお財布に優しいね。立ち飲みなら「じぇんとるまん」もイイけれど、今日は歩いたし席に座りたい。
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とりとめのない年末散歩。呑みながら駄弁るのはやっぱりヤマ・オチ・イミなしの垂れ流し四方山話。

昨日「Dr.コトー診療所」の新作映画を横浜ブルクで観た。ドラマ版から20年ぶん年を取った役者陣が集結していて、それぞれの役の事情(大抵は「老い」)と闘っていて良かった。心温まるハートフルストーリーは年末にピッタリだったものの、ちょっとバイオレンス成分が足らなかったので、アマプラで無料になっていた「ハーレイクインの華麗なる覚醒」を間髪入れず観たのは秘密だ。(マーゴット・ロビー最高!)

 

映画と言えば今年観て印象に残ったのは、旧作だけど「燃ゆる女の肖像」。新作ならば「偶然と想像」、「フレンチ・ディスパッチ」、「ハケンアニメ」、「RRR」がベストヒット。どれも何度でも観たい。

エンタメとして完成度が高くて感嘆したのは「トップガン・マーヴェリック」、「すずめの戸締り」、「ドント・ルック・アップ」。人には勧めないが個人的に好きなのは「NOPE/ノープ」、「ブレット・トレイン」、「TITANE チタン」。

 

小説だと、朝日まかての「ボタニカ」を読んで感動した。日本植物学の父・牧野富太郎の物語で、来年のNHK朝ドラのテーマにも選ばれている。瀬戸内晴美の「女徳」といい、桜木紫乃の「緋の河」といい、波瀾万丈な伝記小説が好みのよう。いつか書いてみたいな。

誰かの人生に憑依してその人の目線で世界を見てみたい。今年はそういう対象を数人見つけたので良い年でした。来年あたり、攻殻機動隊のように脳内ジャックVR技術がローンチしてもいいのではないだろーか。

 

1週間後には2023年を迎えている。残り6日間。もういくつ寝るとお正月。