盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

渋谷道頓堀劇場12月結・ささきさち3周年で渾身の「ベッドイン・ショー」を目撃する

ストリップ業界において2022年はどんな年だったか。

デビューする踊り子さんよりも、引退された踊り子さんの方が多いと感じるようになったのはいつからだろう。4月16日に蕨ミニ劇場で火災が発生し、本日に至るまで臨時休業が続いている。現役のストリップ劇場は、蕨ミニ劇場を含め全国で18館。どの劇場も頑張っている。頑張ってはいるが、10年後に果たして何館が現役で続いているだろう。この素晴らしい場所が、文化が、ずっと残ってほしい。だからこそ、行ける人は行ける時に行きましょうね。

 

さて、ストリップ納めは渋谷の道頓堀劇場で迎えました。大盛況でした。

f:id:sakariba:20221230160006j:image

 

【道頓堀劇場 2022年12月結の香盤】

1.萩尾のばら

2.蟹江りん

3.天咲葵

4.豊田愛菜(初来演)

5.ささきさち(3周年)

 

若手人気踊り子さんが揃った素晴らしい香盤ですね。華やかさとフレッシュさ、未来への希望を感じさせます。2022年を締めくくるのにこれ以上ないね。個人の意見です。

ささきさちちゃん、もう3周年かぁ。デビュー以来機会があれば拝見しています。昨年、同じ渋谷道頓堀劇場で2周年作を観た時もビックリした。少女のような可憐さと淫らな妖婦の一面を併せ持つ希少な人材です。

一言ずつ感想です。

 

1.萩尾のばら

先日シアター上野でも拝見しましたが、演目の振れ幅が大きくて毎回ワクワクさせてくれます。2021年1月デビューなのでもうすぐ2周年ですね。26日からは「ハート」、「箱庭」、「dokidoki」、「BAT」の4個出しでした。雪のように白い肌が眩しかった。萩尾望都の登場人物のような高貴さが素敵です。

 

2.蟹江りん

おかえり!休業・復帰して以来久々の拝見。完璧なプロポーションと弾ける笑顔は健在です。エモい邦楽のイメージが強かったので、ガンガン上がる洋楽尽くしの悪魔っこ演目が新鮮でした。渋谷のパキっとした照明とマッチしていた。セクシー悪魔衣装、似合いすぎィ!ダンスの切れ味がますますパワーアップしていましたよ。

 

3.天咲葵

2021年10月デビューなのでまだ1年ちょっとなんですよね。信じられない。「スノーサウンド」、「1周年作」、「スライガール」の3個出し。つやつやロングヘアと肉感ボディ(特におしりが最高!)でオナベ挑戦されてしまっては好きになるしかない。渋谷道頓堀劇場の人材の豊富さは何なんだ…。

 

4.豊田愛菜

渋谷初乗りおめでとうございます。「DONE」と「新作(ピンクモンスター)」の2個出し。可愛すぎる顔面、スレンダーかつグラマラスな国宝級ボディ、キレッキレのポーズにキャンディースマイル。あれ?アイドルのステージかな?と思うくらいキラキラしていた。2017年10月デビューなので、この香盤ではおねえさんとして圧巻の芸で会場を沸かせていました。

 

5.ささきさち

「touch」と「3周年作」の2個出し。もうね、何と言っていいのか分からない。「素晴らしい」――これは間違いない。「可愛い」――これも全会一致。「エロい」――そう、エロいんです。想像の100倍くらいエロかった。エロすぎた!!こんなにエロすぎていいんですか?いいんですね、ありがとうございます!

と、無性に誰かに感謝したくなるステージでした。

 

…何言ってるか分からないだろうなぁ。どれだけ言葉を尽くしても足らないし、あの場にいた観客だけが目撃したパフォーマンスなのは当然として、少しでもそのエッセンスを遺しておきたいと思う。んで、是非みんな観に行ってね!

 

今年は本業が多忙だったので遠征はほとんどできず、浅草ロック座の毎公演と数か月おきにシアター上野、大和ミュージック、渋谷道頓堀劇場、川崎ロック座、横浜ロック座、たまにアタミ銀座劇場に行くくらいしかできなかったんですが、なんとしても感想を書きたいと思ったのは12結の渋谷くらいかもなぁ。勿論どの劇場も最高に楽しかったですよ。でも、ささきさちちゃんの周年作はあまりに衝撃的だったので。。

 

まず「touch」。みんなが口ずさめるあの名曲から始まる、キュ~ト&コケティッシュな魅力満載の演目。動きの「止め」のキレが良くて、さちちゃんの体幹が桁違いにアップしていることが分かった。もしかしたらストリートダンスやヒップホップダンスをレッスンに取り入れたのかな。以前拝見した時よりもますます肩や肘の可動域が広がっていて、「音ハメ」のリズム感も抜群に切れていた。あと、表情の色気が増していて、流し目・伏し目・見下ろしの「キメ」の目線ぜんぶに射抜かれてしまった。

彼女の白目がきれいなんですよ。透明感があって潤んでいて。どこかに視線を移すたび、白目の軌跡が暗闇の中で光って見えた気がした。山本富士子原節子高峰秀子若尾文子京マチ子…私が好きな大女優たちは皆、目の演技、視線の置き方が美しく計算されている。

さちちゃんの視線の先に何があるのか。観客は固唾を呑んで確かめようとする。ダンスショーからベッドショーに移り行くころ、彼女の瞳に欲望の炎が灯る瞬間がある。愛玩したくなる小動物のような彼女が一瞬のうちに獰猛な肉食獣に変貌し、隠されていた鋭い牙と研がれた爪で獲物が捕らえられる。彼女に食われているのか愛されているのか判別もつかないうちに、傷口から大量の体液が流れ出て身体が冷たくなっていきそうだ。ベッドショーが始まったと思ったらいつの間にか終わってしまっている。悪戯そうな笑顔の残像だけが脳裏に残っている。その恍惚の表情といったら!

 

「3周年作」。これは、問題作です。一緒に観に行った友人は「ストリップの範疇を超えているよ。観客にとっては毒かもしれない。刺激が強すぎる」と衝撃を受けていた。エロさという観点では、これに対抗できるのは南美光さんのオナベ作品くらいじゃないかな。

識者に伺いたいのですが、これはジャンルでいうとオナベ?天狗?何でしょうか。いや、指の1本も挿入していないのでオナベではないのかもしれないし、挿入アイテムも使っていないので天狗でもないかもしれません。ジャンルで言うとパントマイム…なのかな。ひとつのお芝居を観たような感覚。尊敬の念を込めて「ベッドイン・ショー」と括りたいと思います。

 

どう書いてもネタバレになってしまうので、これから作品観る方に配慮しつつ記そうと思います。あとストーリーは私の勝手な解釈なので、全然違うかもしれません!

 

物語はプリンセスの降臨から始まる。愛されるために生まれてきたかのような百点満点のお姫様がステージに現れて、スカートに広がるたっぷりのフリルを揺らしながら笑顔をふりまく。その衣装の素晴らしさにウットリしていると、事態が一変していく。プリンセスは平穏な宮殿から離れて、戦場に赴き闘っている。豪華なドレスは一枚ずつ剥ぎ取られ、あっという間に戦士のような装いに。短剣を手に見事な武者ぶりを魅せ、やがて勝利を手にする(この戦闘シーンの力強さと彼女の必死さに心打たれてまず1回泣きました)。再び訪れた穏やかな時間、彼女が自分の力で勝ち取った平和のひととき。愛する人との逢引のため、暗色のケープを身にまといランタンを手に秘密の場所へと一人赴く。そして始まる、めくるめく睦事。

 

つまりはベッドショー=情事の表現=ベッドインなのですが、彼女の口と手を使った行為(あんまりこの言葉は好きじゃないんですが、分かりやすく言うと「ご奉仕」)や、まるで透明人間のパートナーと様々な体位で結ばれているかのような動きがスゴイ!

早く早くとディープキスをせがむ色っぽい表情、パートナーの口内に彼女の湿った舌先が侵入する繊細な動き、パートナーの衣服を下ろして舌を這わせ奥まで飲み込む表現、パートナーの上に馬乗りになって激しく腰をグラインドさせた時の喘ぎ声。そのどれもが美しく、とんでもなくエロかった。

ベッドショーの冒頭、劇場のスポットライトは勿論、ベース照明も落とされて、灯りはランタンのみ。洞窟か秘密の隠れ場で、禁断の愛が成就する瞬間を目撃しているかのよう。さちちゃんは細い腰を激しく揺らし、白い肢体を怪しくくねらせ、背中からは光る汗が滴る。吐息は熱く、頬は火照り、耳の先まで真っ赤に燃える。

「これは、演技じゃない」

…さちちゃんは本当に感じている、絶対そうだ。その場にいる全員にそう思わせる迫力があった。だって目の前にあるのは絶頂を迎えて痙攣する生身の女性の肉体だし、モニター越しで絡む男女のAVよりエロく真に迫っている。ただ、このステージはストリップでフィクションなので、演技以外の何物でもない。それは誰もが理解しているのに。事件はストリップ劇場で起こっている。

女。魔性の女。彼女は、尋常ではない集中力でもって、ステージ中に何かしらのキャラクターを「降ろす」憑依系のストリッパーなのかもしれない。さちちゃんの才能の得体の知れなさを、初めておそろしく思った。

 

蛇足ですが、なぜ彼女が今回こうした「疑似」ベッドイン・ショーに挑戦しようと思ったか、ちょっと考えてみた。

端的に言えば、彼女を応援するファンへの感謝の表現なのでは、と思った。周年作の物語の背景は明かされていないが、彼女のベッドのパートナーについての言及はステージ中一切ない。つまり、相手役(男性だと仮定して)は何者なのか、どんな姿かたちなのかは、観客の自由な想像に委ねられている。

彼女のパートナー役として、自分を想像する男性客もいたのではないだろうか。現実で彼女と交わることは不可能だけれど、約15分間のステージ上においては、観客の脳内においては、彼女に全力で愛されて結ばれることができる。もしかしたら現実のセックスよりも濃密で完璧かもしれない。ファンヘのプレゼントのようなステージだと思いました。

この作品を、彼女のホームの渋谷で観ることができてよかった。大勢の人が行き交う道玄坂、地下のシェルターのような劇場でしか体感できない、奇跡のような時間でした。誰かを心の底から愛すること、肉体ぜんぶ捧げて愛を伝えることは、人間が生きる上で一番幸せで大切な時間だということを改めて教えてもらったような気持ちです。彼女のステージを観ることで明日からの生きる活力を得たお客さん、たくさんいたと思う。

遅ればせながら、3周年おめでとうございます。これからもますますのご活躍を楽しみにしています。踊り子になってくれて、愛あるステージを見せてくれてありがとうございます。

 

さちちゃんを初めて観たのは2年前、2020年5月結のシアター上野でした。当時のブログを振り返ると生意気なことを言ってますが、当時から新人らしからぬオーラと可能性を感じていた模様。

ささきさち、三日会わざれば刮目して見よ!

実は初めて拝見したのですが、1ステージ観て確信。彼女は大物になる。いち客風情が偉そうなこと言って恐縮です。ただ、ものすごい集中力と豊かな感性をお持ちの踊り子さんだなと感じました。派手なパフォーマンスや豪華絢爛な衣装で観客を圧倒するというより、等身大の自分を包み隠さず明かすステージ。ありふれた日常のなかにある手のひらサイズの感動や感情、もしくは彼女がとても大切にしている秘密の宝物をそっと見せてくれるような、観ているこちら側の心があたたまるものです。ずっと観ていたくなるステージ。

sakariba.hatenablog.com

 

劇場を出て、いつもの「麗郷」で打ち上げ。しじみ、焼きビーフン、腸詰、焼き餃子、瓶ビール、紹興酒のボトルという黄金の布陣で、たっぷり3時間しゃべくり倒しましたとさ。

あぁ、良いストリップ納めになりました。2022年もありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

f:id:sakariba:20221230160002j:image
f:id:sakariba:20221230155939j:image