2021年公開の新作映画・私的ベストを考える
まだ2021年もあと1か月半ありますが、たぶん変わらないと思うので、今年観た新作映画の私的ベストを早々に決めました。それぞれ1位はまだどこかで上映しているので、未見の方は是非に。どちらも映画館で観るべき作品です。
【2021年マイベスト洋画】
次点「ノマドランド」か「オールド」
私の周りの映画好きも大体1位は「アメリカン・ユートピア」です。50年に一度の大傑作でしょうね。
これは、2019年に行われたブロードウェイのショーを映像化したライブ・パフォーマンスムービーで、まったく新しい形のエンターテインメントです。元トーキング・ヘッズのフロントマン、デイヴィッド・バーンと聞いてピンとくる人は全員友達、誰だそれ知らんという人はラッキーですね、これから知ることができます。
生演奏の音楽とライブな歌とダンス・パフォーマンスで、こんなに心に響く刺激的なメッセージを発信することができるなんて知らなかった。ジャンルで言うと、TEDの講演が近いような気がする。4回観て、毎回違うシーンで涙を流した。この世のすべてのクリエイターはこれを観て勇気づけられましょう。カメラワークと映像も完璧です。
結局のところ、「人がいちばん面白い!」ってことと「自分で考えて、自分で決めようぜ」というメッセージを伝えたい作品なんだけど、その伝え方が秀逸でめっちゃ新しい。新しい映像の世紀に入ったな、と実感した。Blu-ray予約したので、来年のテレワークは常に流していたい。この作品を観ることができただけでも2021年を生き延びてよかったと思う。
【2021年マイベスト邦画】
1位「ドライブ・マイ・カー」
2位「あのこは貴族」
洋画・邦画ともに女性監督躍進の年だったなと思う。「あのこは貴族」の岨手由貴子しかり、「ノマドランド」のクロエ・ジャオしかり。繊細な感性と確かな映像力で深いストーリーの波に引き込まれる瞬間がたくさんあった。
女友達が悩んでいたり、もし自分や友人に娘ができたら「あのこは貴族」を観せたい。おんなが、おんなであることの辛さや幸せを一緒に分かち合いたい。そういうウェッティーな感動もある一方、日本に確かにある「階層」をリアリティたっぷりに描き出した(えぐりだした)監督のドライさにも感動した。そして、それを演じた素晴らしい役者たち。この俳優陣でなければ成立しなかった調和があった。門脇麦、水原希子、高良健吾の素晴らしい演技に拍手を送りたい。
そんな「あのこは貴族」を押さえての邦画ベストは、やっぱり「ドライブ・マイ・カー」。もう、ひっさびさに、鑑賞後に打ちひしがれた。立ち直れなくなるくらいの傑作。なに、何が起こった?今何観たの?人生そのものを観たって感じ?
「ドライブ・マイ・カー」は村上春樹原作の小説なんだけど、小説自体は数十ページの短編で、短編集「女のいない男たち」の中の物語。このたった数十ページが179分もの映画に化けるんだから面白い。179分て。3時間ですよ。新幹線で東京ー岡山間が3時間20分、東京ー新青森間が3時間10分です。ずっと座っているとおしりが痛くなる距離ですね。でもあっという間だったぞ。心はもっとずっと遠い場所に連れていかれた。監督に心からスタンディングオベーションを送りたい。どうやったらこんな脚本が書けるんだろう。オリジナル要素や原作を改変した箇所もあるけれど、正直なところ原作よりも原作らしいし、村上春樹より村上春樹のことをわかっているんじゃないのか。
村上春樹原作の映画は「ノルウェイの森」「バーニング」「神の子どもたちはみな踊る」などありますが、ぶっちぎりでこれが現時点の最高傑作ですね。
俳優陣も素晴らしかった。西島秀俊の人生に疲れた変人演劇人ぶりも堂に入っていたし、三浦透子のドロンと死んだ目も最高だし、岡田将生のダメ男演じたら日本一ぶりも健在だし、みんないいんだけど、でもやっぱり霧島れいかに惚れちゃいました。あの色気…!スクリーン越しにもダダ漏れの色香が尋常じゃなかったです。私も将来、ああいう悪魔的熟女になって、何人もの男の人生を狂わせてみたい。うん、無理だな。
この映画も最終的なメッセージは「どんなに辛くとも、生きていかなくちゃね」なので、世界的危機のコロナ禍にあって、世界中のクリエイターが同じ方向を向いていることにハッとされられたのでした。災厄後と災厄前、カタストロフを「生き残って」しまった者たちのすべきことは、残念ながら生き残れなかった者たちのことを忘れず、悼み(メメント・モリ)、死ぬまで生き続けることだけなんですよね。
そのほか観た新作映画はこんな感じ。緊急事態や営業短縮などの煽りも受けて、あまり観られなかったな。旧作名画は、神保町シアターが少し遠くなったので月2本くらいしか観ていない。横浜に名画座がないのが口惜しい。映画情報は、今の上司が好みの合うシネフィルなので、お互い良かった映画をシェアしています。仕事の話よりも映画の話している時間の方が長い気がする。来年はもっと観るぞ~!
【2021年に観た新作洋画】
「クルエラ」「プロミシング・ヤング・ウーマン」「RUN/ラン」「ゴジラvsコング」「クーリエ 最高機密の運び屋」「グリーンランド」「アナザーラウンド」「新感染半島ファイナルステージ」「DUNE/デューン 砂の惑星」「ノマドランド」「JUNK HEAD」「ファーザー」「オールド」「アメリカン・ユートピア」
→この中では「オールド」も出色。M.ナイト・シャマランは信頼できる映画人だ。常に「スリラー」というジャンルを更新してくれる。
【2021年に観た新作邦画】
「映画大好きポンポさん」「花束みたいな恋をした」「街の上で」「まともじゃないのは君も一緒」「ヤクザと家族 The Family」「キネマの神様」「孤狼の血 LEVEL2」「さんかく窓の外側は夜」「竜とそばかすの姫」「リョーマ!The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様」「名探偵コナン 緋色の不在証明」「すばらしき世界」「あのこは貴族」「ドライブ・マイ・カー」
→特別出来のいい映画じゃないけれど「孤狼の血 LEVEL2」の鈴木亮平ちゃんにMVPを贈りたい。LEVEL3も製作決定だそうなので楽しみ。
【見逃した/これから見る新作映画】
「ブックセラーズ」「エターナルズ」「漁港の肉子ちゃん」「空白」「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」「劇場版 きのう何食べた?」「ずっと独身でいるつもり?」「アンテベラム」「マリグナント 狂暴な悪夢」
→「マリグナント 狂暴な悪夢」はホラー好きとしては見なくてはならない。ポスターが「サスペリア」ぽくっていい感じ!
「ずっと独身でいるつもり?」は敬愛するエッセイスト・雨宮まみさんの原作が好きなので、こじらせ女子としては彼女の追悼のためにも観ようと思う。どうかいい映画でありますように。
魔法使いと職人のいるところ〜推しのバーテンダーたちに会いに行く
11月になった。霜月。温暖化も相まってハマに霜なんてほとんどつかないけれども。
ここ数年、というか社会人になってから、10月から2月までの記憶があまりない。繁忙期と年末進行、期末が重なるので加速度的に忙しくなるからだ。10月後半に自分の誕生日があって、ハロウィンを超えたら年末までノンストップになる。
そんな中でも忘れてはならないのが酉の市。元・下町の民(上野〜浅草がホーム)としてはゆく年を締めくくり、くる年を迎える大切な準備なのだ。地元で商売やってる人らは特に敏感で、毎年この時期になると「いつ行く?」「一の酉行ったらすごい人出だったよ」と世間話をする。
昨年の末にハマに越してきたので、2020年の酉の市は浅草・鷲神社で行った。かれこれ5年も行ったのか。500円から始めた熊手も少しだけ大きくなった。
今年は氏神様へのご挨拶がてら、ハマの酉の市に行くことにした。二の酉は日曜日で混みそうだから、平日の一の酉に行った。午前中まで冷たい雨が降っていたが、夕方にはすっかり止んでいた。
人出はあるが、予想したほどではなかった。浅草の来年の混雑ぶりからすれば可愛いくらいだ。とはいえマスクはしっかりして、短時間で用件を済ます。
今年もお祭りらしいお祭りには行けなかったから、久方ぶりに露店がたくさん並ぶ風景を見た。活気があってよろしい。若い子が多くいたがみんなマスクをしっかり付けているので素晴らしいね。たくさんの人の笑顔を見ると元気をもらえる。
さて熊手選び。猫飼いなのでいちおう毎年、猫熊手・猫枡を選ぶようにしている。数店舗流しながら作り手ごとの個性を見極める。ふむ、ここは大手向けのサイズ展開だな、こちらはぬいぐるみをつけるタイプね、なんて。
気に入ったデザインで手頃なモノを見つけたので購入。本当は大きな熊手を買った人にしかやってくれない手締めを図々しくリクエスト。笑顔で応じてくれた。やっぱり手締めしてもらえるとありがたさが増す。稲穂もマシマシにつけてくれた。一年間大事にします。
さて、用件完了したので撤収。屋台メシに後ろ髪を引かれつつ、イートインスペースがなく露店はテイクアウトオンリーなので来年のお楽しみに。たこ焼きや串ものはアツアツを頬張るのが楽しいからね。この時期、人混みでの食べ歩きはマナー違反だ。あぁ、でもジャンキーな焼きそばの視覚的パンチ力や強烈なソースのにおい、鉄板焼きのじゅうじゅう音にヤられちゃった。
ちょうど近くにあったヒジテツさんに初来店。気になっていたのよね。
鉄板焼きを食べて屋台メシ欲を満たしましょう。モロッコ風の洒落た店内が素敵だ。食事は野菜や焼き物が美味しいし、グラスワインも手頃で美味しいのがたくさんあって、デートにも使えそうなお店でした。
まだ時間も遅くないし、もう一軒だけ。今夜はお祭りの余韻にまだ浸っていたい。東京事変の「御祭騒ぎ」を脳内BGMで。
行き先は、今いちばん夢中になっているバー。関内駅からほど近い路地裏にある「Bar Prima(プライマ)」だ。
https://www.instagram.com/bar_prima0708/?hl=ja
ここは、10月に初めて行った。ときめきと感動をくれる、魔法使いと職人のいるところだ。
実在の人に対して「魔法使いみたいですね!」と言ったのは生まれて初めて。ジャンルで言えばミクソロジーカクテルバー。果実やスパイス、薬草や茶葉、珍しいリキュールなんかを使い、お客さまの好みに合わせて、恐ろしく手の込んだ一杯を提供してくれる。一口飲めば世界が変わる魔法のようにキラキラしたカクテルから、尋常じゃない集中力と技術が詰め込まれた職人技のカクテルまで、振れ幅大きい至高の一杯を届けてくれる。
緊急事態が明けてお酒提供ができるようになったので、休業明けて復活したバーも多い。色々なお店を飲み歩いて開拓したい気持ちは山々なのだが、上述した通り繁忙期に入ったのでそんな余力&体力もあまりなく。盛り場放浪は夢のまた夢で、馴染みの店に細々と顔を出すのが精一杯だった。そんな状況でも、このお店にはご縁があって行かせてもらい、すぐに大好きになっちゃったのだ。
****ここから回想****
ここのカクテルを初めて飲んだ晩、世界が反転するくらいびっくりした。近くに、こんな素敵なバーがあったなんて。
一限のバーにお邪魔した際は、たいてい「ジントニックをください」と言うようにしている。ジンの種類を聞かれたら、酒瓶を眺めながら気分で選ぶけれど、多くはタンカレーかビーフィーターが使われている。
バーテンダーのアルバイトをしていた学生時代、初めて作ったカクテルがジントニックだった。基本にして王道。ジンのバーの格とバーテンダーの腕はジントニックを飲めば知ることができる、と酒飲みの師匠に教わった。
そんなわけで、ここでも初来店の一杯目にはジントニックをオーダーした。
初回。帽子を被ってエプロンをつけたバーテンダーのYさんが作ってくれたのは、ハーブ感とスパイス感たっぷりの、国籍不明のオリエンタルなジントニックだった。それが、めちゃめちゃ美味しいのなんの。そしてしっかりジンの味もした大人向けカクテル。えっ、初めて飲む味なのに、ちゃんとジントニックだ。これ、好き。
聞いたところ、甘いジンと辛いジンをブレンドして、色んなスパイスで漬け込んで、仕上げにベルガモットをシュッと吹きかけて火をつけている。ちょっと飲んだことない、でもめちゃめちゃ美味しいジントニックだったのだ。
2杯目はギムレットを頼んだ。私とバーに行ったことのある方ならお分かりですが、ジントニック→ギムレット→フルーツカクテル→マティーニ→ウイスキーの順で飲むパターンが多いです。ジンの海で溺れたい。
お次のギムレットもすごいのが出てきたぞ。バーナーで炙ったローズマリーが載っている。これまた美味しいし飲みやすい。そうそう、こういうライムの効いた酸っぱめのギムレットが飲みたかったのよ。夢に出てきそうな味わい。
3杯目、夢心地すぎて何を頼んだか覚えていない。まぁこの時はシャンパンとワイン1本開けてだいぶゴキゲンだったから記憶が朧げなのはご愛嬌。
んで〆にアレキサンダー。Yさんにお任せで寝酒を作っていただいた。甘さ控えめなのにミルク感あって癒される。帽子を被ったYさんがだんだん魔法使いに見えて来る。トンガリ帽子に、魔法のケープ、魔法の杖(バースプーン)に空飛ぶホウキ(シェーカー)。…好き!
いい店見つけたなー、次は一軒目に来てみよう、と思って行ったのが2日後。バーフードも色々美味しそうなのが黒板に書かれていたのを目ざとく見ていたので、それも目当てで。
すると違うバーテンダーさんがいらした。Kさんと仰って、物腰丁寧で地に足のついた職人風の出立ち。両方ともハンサムなのが目の保養です。聞くと2人で経営しているらしく、店主はYさんだけれど別のお仕事もあるので分担しているとか。
ジンリッキーをオーダー。美味しい。オーダーしたカレーにもよく合う。というかカレーもスパイスが爆発しててめちゃ美味しいな?このあとソーセージやいくつかいただきましたが、どれもバーフードの域を超えたレベルでした。
Yさんの作るキラッキラなカクテルとは違い、クラシカルなのにものすごい独創的なパワーがあるカクテル。それぞれ得意分野があって自由にオリジナルカクテルを作るのが店のコンセプトのよう。ならばKさんの得意分野ってなんですか、と聞いたところ、チーズとお茶とハーブとのこと。ほほう。
じゃ、チーズと、チーズに合わせて赤ワインをグラスでください!カクテルはその次に飲みます!という目の前のチーズ欲に負けた私。熟成されたチーズたち最高でした。
ようやくハーブで一杯。香りが強くて草感が最高。ファイナルファンタジーに出てくる回復薬のポーションってこんな味だと思う。
飲みながらKさんの話を聞く。チーズを作りに北海道に修行に行ったり、店中にお茶っ葉とハーブのストックを置いていたり、特殊なハーブを栽培するために畑をつくったり、好きなことに一直線で凝り性なタイプのようだ。バースプーンが工具に、シェーカが耕運機に見えてきた。…好き!
じゃあ、次はお茶を使ったフルーツカクテルを、とオーダー。すると、急須を出してきた。急須にお酒を入れて温め、茶葉成分を抽出するのだ。文字にすればあっけないのだが、バーナーを使ったり急須を回したり、もはやバーの域を超えていそうな、というか調理ですか?という感じに。一杯のためにゆっくりじっくり工程を積み重ね、最高の状態のカクテルを提供してくれる。やっぱ職人だ。
マスカットの皮の渋みとカテキンの渋みがベストマッチする。少しでも分量を変えたら壊れてしまう繊細な味わい、絶妙なバランス。マスカット単体で食べるより好きかもしんない。
大変失礼かもと思いつつ「変態ですね」という素直な感想を伝えてしまった。「ありがとうございます、最高の褒め言葉です」と笑顔で返された。
最後はお任せ。
コーヒーを使ったラテっぽい一杯。お風呂上がりにグイグイ飲みたいやつ。美味しい。何飲んでも全然違うので面白い。奥が全く見えなくてスゴイぞ、この店。
****ここまで回想****
長くなりましたが、そうして3回目、酉の市帰りに立ち寄ったのが先日。
インスタで載っていた11月のカクテルが気になりすぎた。「牡蠣のオールドファッションド」。
や、牡蠣て何。レシピ見ても意味不明だ。自家製青のりビターズ?焼き海苔?スモークオイスター(本物)?
飲んだ感想は「飲める海」。うまい生牡蠣を置くレストランにボウモアがないように、ボウモアを置くバーには生牡蠣はない。ならば牡蠣とボウモアのカクテルを作っちゃおうというコンセプトだと勝手に解釈。新世界すぎて脳が追いつかなかったけれど挑戦的かつ面白い一杯です。ぜひお試しあれ。
ブレックファースト・エスプレッソ。マティーニだけど朝から飲みたいやつ。
〆は絶対飲みたかったラムチャイ。6種のスパイスであったまる。好きなやつ。寝酒に最高。
そんな時、Yさんがいらした。別のお仕事の帰りだった。再会が嬉しい。Yさんは翌日に店にいるという情報をもらった。どちらの日も楽しいカクテルが飲めていいなぁ。はっ、まさか、魔法使いと職人の2人ともに会いたいから、結果的に来店頻度が上がるという策略か!
無事、策略に引っかかり、魔法使いにも会いたくて翌日もPrimaへ。その日は友人とクラプローネさんで楽しくワインを飲み比べして、〆カチョエペペした後に。
クラプローネ→Bar Primaというゴールデンルートを開拓できたことが、2021年良かったことベスト5に入るかもしれない、本気で。
北海道のクラフトビール「ノースアイランドビール」で乾杯。
早い時間に行くとタイムサービスでこんなお通しが。ふわふわモッツァレラのかかったバゲットが最高。
みかんのサラダ。胡椒きいててお酒進む味。
グラスワインをオーダーしたら「どれにします?」が始まる。うーん、飲み始めたら覚えられなくなるから、左端から順番に全部!(ほんとにこう言った)
さといもゴルゴンゾーラ。赤ワインが進むやつ。
ワイン一本ずつに丁寧に説明が書かれていて、読みながら飲むのが楽しい。
鶏肉香草和え。ここは一皿をハーフサイズにしてくれるので、食べたいモノを気軽に頼めて嬉しい。大皿で来ると2-3品しか頼めないからね。
出物。とっても美味しいワイン。こういう血のように濃くてぶどう味が強いワインが好き。
ザブトンのステーキとともに。私の血となれ肉となれ!
待っていました、〆のカチョエペペ。基本はペコリーノ・ロマーノとブラックベッパーだけなのに何故にこげにうまいのか。イタリア料理の真髄である。
ワルなので〆の後にリゾットも食べた。
グラッパもいただいた。
グラッパ入りのチョコレートもいただいた。ジャリジャリ甘くてお酒たっぷり。ポケットに忍ばせておいて雪山で遭難した時に食いたい。
贅沢にもアマローネで〆ちゃう。はー、極楽。
チーズは欠かせません。薄いのを口内で溶かしながらワインとともに味わうと絶頂。ごちそうさまでした。
さ、数分移動してBar Prima。魔法使いに会いに来た。これは1027というオリジナルカクテルで、食後にピッタリ。今まで飲ませてもらったのもそうだけど、全体的に女性的で優しい風味が多い気がする。しっかりアルコール使ってるのに飲みやすくて。身体にいいことをしている気分だ。
お任せしたら焚き木が始まった。Yさんは魔法使いの上、マジシャンなのかもしれない。エンターテイナーだなぁ。火を見ながら飲むカクテルも良いですね。パチパチ火花を眺めて、焼印押された氷がカランとなる音を聴いていると、俗世のイザコザや現実社会の多忙を忘れられる。
本当の〆はこちらで。リンゴのカクテルでした。華やかなでスッキリ甘くて好き。何作ってもらっても美味しい。よし、通うぞ!
この世に素晴らしいバーは数多くあれど、結局足繁く通うのは推しのバーテンダーがいる店になる。「スリーマティーニ」のYさんしかり、「キネマ」のYさんしかり、「Peat House」のIさんしかり。人に店の魅力あり。今夜もすべてのバーで幸せな一杯がありますように。
酉の市の縁起物を検品する黒猫。
検品クリアしたので玄関に。一年間よろしくね。家内安全、健康第一、商売繁盛、美酒佳肴!
家に帰れなくなった時の話~帰りたい、入れない~
いつもの仕事帰り、いつものように家の鍵を差し込んでドアを開けようとしたら、「がちゃっ!」とうるさい金属音とともにドアが動かなくなった。ドアガードが掛かっている。え、なんで。思考がフリーズした。
出かけた時の何かの拍子でガードが掛かってしまったのか、原因は不明。玄関は暗く、誰かがいる気配はない。手を差し込んでもドアガードを開けることは不可能。そんな簡単に外から開けられる構造ならば、内側にガードを仕込む必要はない。それでもダメ元で何回か試し、「ドアガード 外から開ける方法」でググって、1分自問自答して諦めた。うん、管理会社に電話しよう。
時刻は21時ごろ、運よく営業時間内だったので状況を説明した。
「あのぅ、ドアが開かなくて、内側のドアガードが何故か閉まっていて…ハイ、鍵を無くしたとかじゃなくて、内側から手動でガチャっとやるやつが閉まっているんです…いえ、中には誰もいなくて…」
2分くらい説明して、ようやく理解してもらえた。けれど夜間対応はできないので明朝に来てもらうことになった。最悪、ドアガードを切断するらしい。わぉ、大掛かり。
比喩じゃなく、ドア一枚隔てた向こう側に自宅があるというのに、帰れないジレンマ。ほんの数cmの隔たり。
あぁ、ミスターチルドレンの歌でもあったな、「たった0.05ミリ合成ゴムの隔たりをその日 君は嫌がった僕は それに応じる」状況はまったく違うけれど、今ならもっと気持ちを込めて歌えそうだ。
いつまでもドアの前にいてもしょうがないので、近所のファミレスに避難した。仕事道具が入った鞄がずしっと重い。
「ビールください」飲まなきゃやってられないぜ。
こういう時は機械的にやるべきことをするに限る。まずは今夜の寝床確保。じゃらんで検索して、近所のビジネスホテルを予約した。運よく空いていてよかった。こんな機会でもないと泊まらないであろう距離の宿。パソコンを背負っていたので、家でやろうと思っていた仕事やメールの返事も済ませた。
ビールを飲みながら、猫たちは元気だろうかとぼんやり思う。家に帰ってモフモフしたかったのに…一週間のお疲れが溜まっていたからお風呂入って寝たかったのに…げに理不尽…やることを終えたら急に悲しくなってきた。精神が「ちいかわ」になる。
どうもできないけど、誰か慰めてほしい。精神年齢10歳くらいの気分。
即レスくれそうな友人らに「あはは、部屋に入れない~」とLINEした。心優しい友人らに「大変だね、気を付けてね」と心配され、それ自体には感謝なんだけど、やっぱリモートじゃなくて直接誰かに会いたいなぁ。気弱になっている時は人恋しい。話を聞いてほしい。いい子いい子してほしい。
タイミングよく、近所の友人が「泊まるとこないならうちおいでよ~」と言ってくれた。正直最初それも考えたけれど、いちおう大人なので自分の寝床は自分で確保したかった。学生時代なら即「誰か泊めて!」と連絡しまくったけど、それをしないくらいには分別の付く大人なのだ。えっへん。
代わりに、「今から一杯飲むの付き合ってくんない?」とお願いした。快諾してもらえ、ビジネスホテルに荷物を置いて友人宅にお邪魔した。
「大変だったねぇ」遅い時間の急な来訪にも関わらず、笑顔で迎えてもらえる僥倖。あたたかくて明るい部屋、今一番欲しかったもの。持つべきものは近所の友人。
濃いカンパリソーダを作り、乾杯した。苦さと甘さが、ささくれた心に染み入る。
お酒は、理不尽な出来事や納得できないアレコレをぐっと飲み込むためにも、大人には必要なのかもしれない。子どもみたいに「イヤッ!」と地団駄踏んで泣けないので、代わりにお酒に救いを求める。
アルコールで脳が痺れて、内臓があたたまって、現実からいっとき目を背けさせてくれる。根本的な問題解決にはならないかもしれないけれど、一晩やり過ごす猶予をもたらしてくれる。たかが一晩、されど一晩。一晩の過ごし方が命運・明暗を分けることがあることは経験則で知っている。
もちろん今回は大した出来事ではないし、そこまで追い詰められてはいなかったけれどね。ちょっとお疲れ気味だったので妙に堪えてしまったのだ。誰だってそういう日、あるよね。
今回のちょっとしたトラブルのおかげで、一晩を乗り越えるのがつらい時、寄り添ってくれるのはいつもお酒と友人の優しさだったということを、改めて実感することができた。友人たちを大事にしよう。彼らがつらいときは私が寄り添いたい。よしよししてあげたい。
友人宅で、藤井風くんの動画を流しながら、カンパリソーダや翠ジンソーダを飲みながら他愛ない話をした。
「ドアガードを内側から閉めたのは猫たちかもね。モリアーティとルパン(注:我が家の猫たちの名前)が結託したのかも。特にルパンは世紀の大泥棒だし、鍵をかけるなんて朝飯前でしょ」
このところ家を空けがちだった飼い主に反抗したストライキか、はたまた帰りの遅い飼い主を心配してドアの向こうに行くべく開けようとしたか。いずれにせよ、猫たちの仕業かもと想像したら笑えてきた。
ほんの1時間ほど過ごしてお暇した。さんざん笑って、気分がすっきりした。最終的には「ま、こんな夜もあるさ」と思うことができた。むしろ貴重な体験なのかも。私の中で、笑い話兼教訓として刻まれた。切り替えが早いのが私の長所。
その後、ビジネスホテルに戻ってぐっすり眠った。朝が来るまで、あっという間だった。なんてことない夜だった。
翌朝、管理会社が呼んでくれた鍵屋さんが部屋の前まで来てくれ、ちょっとした道具を使ってすぐにドアガードを解除してくれた。セキュリティ的にその内容は書けないけれど、本当にあっという間だった。プロの泥棒の前ではドアガードなんて無力に近いと思うくらい、すぐに開いた。果たして必要なのか、ドアガード…。
なぜドアガードが閉まったのか、鍵屋さんも不思議そうにしていたが、今になっても原因は不明。とりあえずドアガードはガムテープで封印した。
猫たちは元気だった。奴らの犯行だったのか、表情から読み取ることはできなかった。面白いから、モリアーティ教授による密室犯罪、完全犯罪ということにしておこう。
玄関で荷物を下ろし、お決まりの台詞をひとりごちた。
「やっぱり自宅が一番だよ」
とつぜん、恋に落ちた話
人が恋に落ちる瞬間はいつなんだろうか。
恋はするものなんじゃない、落ちるものだ、なんて戯言が甘く響く時、その人は既に恋の虜になっている。落ちる。何に?見えない落とし穴に。足を滑らせて、瞬間意識を奪われて夢中になる。けれど、絶対に底はある。
とある食事の最中、初めて対面でマスクを外して喋る彼女に、私はちょっと恋に落ちかけた。「落ちかけた」という時点で、もう「落ちている」んですよ、と冷静にツッコミを入れる自分もいる。わかっている。
決して、色恋的な情動ではない。付き合いたいとかそういう次元の話ではない。
言葉にするのが難しいのだけれども、自分と彼女との「落差」あるいは「距離」みたいなものに惹かれたのだ。魅力は、遠さ。
私は割に、自分と全然違う考え方をする人間、自分が想像もつかない生き方をする人間に興味を持って近づきたくなる性質なのだけれど、それは性別の区別を必要としないものなのだな、とはじめてハッキリと自覚することができた。
「何をしている時が一番幸せ?」という他愛のない話題に、私は「おいしいものを口にしている時」と素直に答えた。1杯目の生ビールで、焼き立ての豚タンを流し込んでいた。幸せそのものだった。
その場にいたもう一人の女性は、「風を感じている時です。サウナから出て水風呂に入った瞬間とか、山の頂上を登り切った時とか」と素敵な答えを口にした。件の女性は、「私は、ちょっとここでは言えない」と照れながら前置きをしつつ、私たちに何度か促されて答えを明かした。
「イケメンに抱かれている時。」
ああー、なるほど。まぁ、口ごもる時点で性的な何かだと思っていたし、どちらかというとオーガズムの話かと思っていたら、イケメンですか。2011年に「美男(イケメン)ですね」というTBSのドラマがあったな…なんて時空を遡るくらい、自分にとっては衝撃的な答えだった。
「イケメンって例えば?」「斎藤工みたいな。」
うん、確かに「昼顔」の斎藤工はセクシーですよね。自然体なのにどこかミステリアスで。でも、イケメンかそうでないかで男性を判別しない自分にとってその発想はなかった。というか私は顔面の造形に興味がないのかもしれない、むしろ骨格や筋肉の方が萌えるので。
よくよく話を聞くと、その女性は面食いかつ年下好きで、しかもちょっとダメなクズ・ヒモ男で、でも分不相応な大志を抱いちゃうコに弱いらしい。かつ本人曰く被虐趣味があるので、そんなダメダメな男性から虐げられたり、下に見られるのが好みだそうな。
私は、年の割に女慣れしていて甘え上手で、器量のいい男性の多くはクズの素質があるのではないかという偏見がある。だから極力近づかないようにしている。…同族嫌悪という説もある。それはいいとして、あまりにも自分と正反対な異性の趣味で驚いた。どこがいいんだそんな男?
全っ然理解はできなくとも話は盛り上がり、最終的には打ち解けて、彼女のセンスを見込んで私の家のインテリアコーディネーターになってもらうだとか、彼女が引越しをする時には不動産屋巡りに付き合うだとか、彼女が帰省する時には実家に遊びに行かせてもらってご両親と飲みたいなんて、ほんの1時間でなんだか急に距離が詰まった。ヒトとしてのベクトルは真逆なのに、仲良くなれるのは不思議だ。
これまで、異性愛の場合、男性と女性はある意味正反対の役割(肉体的にも、精神的にも、性的嗜好にも)を持っていたほうが、お互いの存在を補完しあえて良いパートナーになるのではと思っていた。
対して、友人関係の場合、一定の共通点、例えば「好きなバンド」「好きな料理屋のジャンル」「嫌いな同性」のような要素が多ければ多いほど、仲良しレベルを上げられるように思っていた気がする。学生時代は、「同じ学校」「同じ部活」「同じ最寄り駅」のような共通項が多いほど急速に親しくなって、卒業後に一気に疎遠になるように。
けれども、こういう、あんまり共通項はなくて、むしろ正反対に思える特質をたくさん持っていることを素敵だなと思えて、全くもってうらやましくもないけれど、その考えって新しいしオモロいなって感じられて、一緒に同じものを見たいと、彼女を通じて思うことができた。や、対面で話したのはほんの数時間ですが。彼女がどう思ったかは別ですが。
でも、こういう直感は当てになるってことを経験から学んでいるし、できれば大事にしたいなと思う。誰かのことをもっと知りたいと思えて、世界が広がっていくトキメキ。それは、私にとって恋に近い感覚。こういう心持ちでずっと暮らせたら、世界はもっと平和になる気がするのに。
「夜の河」を神保町シアターで観る
「夜の河」の山本富士子は、黒田清輝の描く和服女性がスクリーンに飛び出してきたようで仰天した。
丁寧に剃られたうなじが色っぽく、日本映画の黄金期は間違いなく1950年代だったと確信する。
カメラワークが超一級。どの場面で止めても美しい作品。場面転換もスムーズでテンポが良く、比較的単調に展開する色恋物語をまったく飽きさせない。
やっぱり男どもは弱く、女は強い。気の強い京女って魅力的だな。
連れ込み宿で、情事の後に浴衣を雑然と羽織って風呂場に行き汗を流す。湯浴みをしてさっぱりしたら瓶ビールを景気良く開けたい。いつだったかの記憶が蘇る。鶯谷で、丸山町で、歌舞伎町で、五反田で、大森で、伊勢佐木町で、松影町で、何処そこの盛り場で。なんてったって男と女の縁は切ったって切れないたぐいか。どう足掻こうと切れる手合いよ。
神保町シアターの終演後、ひと時を共にした観客たちが一斉に階段を登る瞬間が好きだ。オレンジ色の灯りに照らされる巡礼者たち。トーキョーシティど真ん中で、今日この瞬間、同じ映画を観に来た、顔も名前も知らない人たち。
映画の余韻に浸りながら登る階段は良い。シネコンみたく、白々しく眩しいLEDの廊下に追いやって現実に帰すのではなく、薄ぼんやりした灯りの中で物語世界を反芻する僅かな空白時間が有り難い。まるで高速のトンネルのように、次の行先に向かうまでの接続点に思える。
コロナ禍なので、映画の後は駅に向かってすぐに解散。餃子と紹興酒をあおりながら、映画の話ができる世の中に早く戻れますように。ま、生きていれば何とかなるでしょう。
緊急事態宣言明けの秋葉原きんぼしに行く
いや~!明けましておめでとうございます!もちろん新年ではなく「緊急事態宣言」および「まん防」がです。いつまでかは分かりませんが、久しぶりの「平常事態宣言」を堪能しましょう。(コロナ対策は引き続き頑張ります)
うれしい気分を引っ提げて何処に行こう。さすがに人混みや混雑する飲食店に突撃するわけにはいかないので、信頼できる馴染みの店から、ゆっくりとあいさつ回りをいたしましょう。
まずは、いの一番に秋葉原の「きんぼし」に行きました。学生の頃から通っていたし、前住んでいた家からよく歩いて夕飯を食べに行っていた。常に生酒を20種類以上置いておいてくれるし、料理も抜群においしい。そしてリーズナブル。
きんぼしは、緊急事態宣言中は休業し、土日だけ日中にラーメン屋になったりしていた。今回数か月ぶりに酒を提供できるようになり、現在週末は予約制でコースのみで営業している。(2021年10月6日現在。人気店なので訪問の際は予約することを推奨します)
気になるコースは、料理7品+ごはん+デザート+飲み放題で5,000円(税込み)。えっ、それで採算取れるんですか?という金額です。飲み放題のメニューはいつもの生ビールやサワー系はもちろん、店内の日本酒全部が含まれる。破格である。
山形だしを乗っけた冷奴、手作り塩辛、秋の白和えから始めましょう。
「残り少ない日本酒からじゃんじゃん持ってきてください」という品のない注文をした。まずは「美寿々」「髭VIVE」が来ました。
「蓬莱泉 美」。
「風の森」。うーん、いつ飲んでも好きだ。キレイ系フルーティー日本酒の白眉。
ラベルが読めないけどおいしかった。
お刺身盛り合わせもコースのうち。
「十四代 雄町」!雄町米に目がない私をうならせた。
「世は満続(まんぞく)」。
〆は「天美」。
お食事で松茸ご飯もいただいた。おいしかった。デザートはカラメルたっぷりカボチャプリン。食欲の秋ですなぁ。
きんぼしのトイレに掲げられた「酔っぱらいろは」。毎回頭に叩き込む。けどすぐ忘れる。
お正月、これでカルタ大会やりたいな。札を取れなかったら、おちょこで日本酒呑むルールで。たぶん楽しい。誰か一緒にやらない?
店主のメガネさんに「再開おめでとうございます」と言ったら、「お店を開けられるのも嬉しいけれど、お客さんにお酒を出せて、またこうやってお話できるのが何よりも嬉しいです」と仰っていた。居酒屋だもん、お酒がないと始まらないよね。そんなわけで今月は、節度を守りながら、再び居酒屋に行ける有難さを噛み締めようと思います。
皆さん、乾杯!
閉館する油壷マリンパークに行ってきた
2020年から2021年にかけて、閉館・閉店する商業施設やテーマパークが増えている気がする。恵比寿の三越、バーニーズニューヨーク新宿店、池袋マルイ等。渋谷の東急本館も閉まるとか。コロナ禍がどのくらい影響を与えたのかは分からないが、神奈川県民を震撼させたのは京急油壺マリンパークの閉館のお知らせだった。
2021年9月30日をもって、53年の歴史に幕が閉じる。私は幼少期に数年間磯子に住んでいたので、その時に何度か訪れていた…らしい。残念ながら全く記憶にない。行ってみたら思い出すだろうか、ということで行ってみた。
油壷。あぶらつぼ。土地勘のない人はギョッとする響きだ。
地名の由来は、①湾内が穏やかで油を流した時の様に静かだという事から名づけられた説と、②鎌倉時代に三崎城が落城した際に、打ち破られた三崎氏の死体から流れ出る血が漂い、まるで油を水に落としたように漂っていたことから名づけられたという説がある。リゾート地としては①が由来であってほしいが、個人的には②も捨てがたい。
京急油壺マリンパークは1968年4月27日に開業した。もともとマリンパークは京浜急行電鉄の創立70周年記念事業として計画された。現在、東京都心・横浜方面からの列車の終点となる三崎口駅は7年後の1975年4月26日に開業を迎える。京急久里浜駅までは1942年に開通しており、同社による三浦半島の開発は戦後の1960年代に本格化した。
マリンパークを後にして、横須賀中央まで足を延ばした。
クレイジーケンバンドの新アルバムにしてオールカバー楽曲で構成された「好きなんだよ」のキラーチューン「横須賀ストーリー」を聞きながら街を歩いた。山口百恵の原曲は、別れる寸前の男女の微妙な駆け引きが魅力だが、剣さんが歌うと軽快でこざっぱりしている。夜の店の女に騙されて、有り金つぎ込んでこっぴどく振られた男の歌にも聞こえる。
この時は緊急事態宣言も明けていなかったので、ノンアルコールでおとなしく帰宅した。あと1か月持ちこたえてくれていたら、若松マーケットで呑んで〆ることができたんだけれど。
結局、幼少期に行った記憶は探り当てられず、私にとっての油壷マリンパークの思い出はこの日だけになった。ま、それもいい。できればこの先の30年くらい忘れずにおきたい。