サントリー美術館で「河鍋暁斎展」を観て、寿町「浜港」で角海老グッズを手に入れる
寒の戻りで冬のようなお天気。猫たちも布団に戻ってきた。人間を「あたたかい棒」としてとらえ、我が物顔で布団を占拠する。
午前中はジムでちょっと走って、午後イチにサントリー美術館へ。「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展の会期終了が迫っていたので。
暁斎作品では、浮世の戯れを描いた遊宴図や極彩色の画帖作品が好きで、とくに地獄太夫を描いた《地獄太夫と一休》や《暁斎楽画 第九号 地獄太夫がいこつの遊戯ヲゆめに見る図》などがお気に入り。でも私がイイナァと思う作品は、大英博物館蔵やイスラエル・ゴールドマン・コレクションなど、ほとんどが海を渡ってしまった。
観終わった頃合いで連絡が来たので横浜に夕飯を食べに。集合は石川町の純喫茶「モデル」。
「浜港」は店員のお姐さんがたが素敵で、こざっぱりした応対と心のこもったサービスが魅力的。どんな客も受け入れる懐の深さがあり、さすが寿町に店を構えるだけはある。聞くと営業開始して45年ほどらしく、実は相当な老舗店だ。
我々のことも覚えておいでで、前回いただいた「角海老ボクシングジム謹製うちわ」を神棚に飾っていると話すと笑っていた。
店内は6割がた埋まり、競馬実況や相撲中継を観たり、各々リラックスして過ごしている。お客同士の会話が面白く、競馬や競艇、パチンコなどのギャンブルに興じることを「仕事に行く」と表現しており、狭い世界観が広がる思いだ。
熱燗を数本飲んで、金宮のお湯割りに切り替えて酔いがまわってきたころ、ひとりのおじちゃんがやってきた。店員のお姐さん曰く、「あのうちわの元持ち主」らしい。それは現持ち主として一言ご挨拶せねば、と話しかけた。
「そうかぁ~~あのうちわ、おねーちゃんが持ってるのかぁ!」と喜んでくれ、「角海老グッズ、宿にまだたくさんあるよォ、見に来るかい?」とお誘いまでいただいた。店員のお姐さんがすかさず「じゃ、店に持っておいで、預かっておいてあげるから」と突っ込んでいた。そして、店の奥から引っ張り出してきた角海老グッズをまたいただいてしまった。
「おねーちゃん有名な人?どこかで見たことあるなぁ」なんて言っていたが、もしかしたら角海老に似た人がいたのかもしれない。御礼を伝えて席に戻ってしばらくすると、私の目の前に燗付けした大関ワンカップが4本並べられた。
寿町流の歓迎がうれしい。ふだん過ごしていてドヤ街のおじちゃんと会話をすることはほぼ無いので、「浜港」は貴重な接点の場だ。
ごちそうしてもらった大関ワンカップは2本飲み、残りは帰ってから楽しむことにした。ワンカップと角海老グッズを携えた会社員、なかなかいない気がする。
空きっ腹でお酒を飲んだので会計からほとんど記憶がない。本能のままに行動していたようで自分が恐ろしい。朝になり、もはや定宿と貸したホテルを後にし、天気がいいので横浜橋方面に散歩をすることにした。
横浜橋商店街でお酒とおつまみ買って、100円均一ショップでブルーシート買って、大岡川沿いでお花見でもしたいところだけど、私は午後から働きに出ないといけないので、また今度。
伊勢佐木町の端っこをぷらぷら歩き、古本屋覗いたり、性風俗店の営業を確認したりして黄金町方面へ。純喫茶「タケヤ」でお茶しましょう。
赤線跡を歩くのが好きで、と話すと、マスターが気を利かせて昔の話をしてくれた。終戦後の焼け野原だった頃も、在留米軍を「ハロー」と読んでいた頃も、黄金町でちょんの間が盛んだった頃も、浄化作戦があった頃も、すべて見てきた時代の生き証人だ。御年72歳、長生きしてください。