盛り場放浪記

花街を歩くことが楽しみな会社員による、酒とアートをめぐる冒険奇譚。

東京国立近代美術館「大竹伸朗展」に行く

好きな作家は数多くあれど、「個展やるって」と聞いたら居ても立っても居られなくなってしまい、口からヨダレを垂らして駆けつけるくらい惚れている現役のアーティストはそんなに多くない。

そのひとりが、大竹伸朗。コロナ前にやった個展は、熊本市現代美術館と水戸芸術館に観に行った。今、満を持して東京国立近代美術館で個展が開催されている。願わくばもうちょっと天井高いところでもやってほしいけど、国立館で大竹伸朗ってだけで感激なのであーる。

www.takeninagawa.com

sakariba.hatenablog.com

水戸芸術館にて、大竹伸朗展の手ぬぐいを持って。

熊本と水戸で結構作品入れ替わってて驚いたなぁ。この時着ていたワンピースはSOMARTAの。気に入っていたけどどこかにいってしまった…。

15年以上ミュージアムめぐりをライフワークとしてきて、10代のころは「一期一会!」の気持ちで展示を観てきたけれど、最近は昔観た作品と再会して「お、久々だねぇ」という機会も増えてきた。作家の回顧展で「没後〇年」「生誕〇年」も、10年経つともっかいできますしね。何回観ても良いものは良いし、昔観た時の気持ちを思い出すことができる。同窓会みたいな気分です。

横浜に越してから近代美術館がちょっと行きづらく。東京駅で降りて皇居をぐるり歩いて行くコースが好きです。天気が良く、銀杏並木が美しかった。

さて竹橋。

夕方になるとネオンが点灯します。近代美術館が宇和島駅に乗っ取られてしまった。これ、TATEとかMOMAでもやってほしいな。

今どきらしく、出品リストと音声ガイドはアプリ経由。無料で提供してくれて有難い限りなんですが、展示鑑賞中スマホの画面じっと見ることができないタイプなのでダウンロードだけして家でゆっくり(開こうとして忘れる)

大竹伸朗の作品は「考えるな、感じろ!」ができて好き。「何でだか分んないけど、これ好き」がたくさん見つかって、じっと観ているうちに時間が経ってしまう。

細部に神は宿る。画面のどこを切り取っても格好良くなってしまう。

最初期の作品から近年の海外発表作、コロナ禍に制作された最新作まで、およそ500点の作品が一堂に会している。小さな手製本から巨大な小屋型のインスタレーション、作品が発する音など、ものと音が空間を埋め尽くす。展示は、7つのテーマ「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」に基づいて構成。時系列はバラバラ。テーマの振り分け、鬼のように大変だったろうな。

刺さらない人は30分足らずで観終わるだろうけど、好きな人は何時間も居座れますね。ここに住みたい。夜通し酒飲みながら観たい。

まだ会期はじめなのに結構人が入っていたので、この後混むでしょうね。早めに!

ほんと趣味が良い。

すべての展示コーナーが素晴らしいんだけど、一番ビビったのはこちら。(ガラスケースの向こう)

このケース、一見「古い棚を拾ってきたよ」って顔しているけど、新しく作ってる?ガラスのスリットうまくはめて、蛍光灯に紫外線フィルム巻いて、サビのエイジングして。大昔の博物館で使われていた古(いにしえ)の展示什器やん…!

2時間かけて企画展終えて、コレクション展に移動。そっちでも大竹伸朗コーナーがあるらしいと聞いて。するとなんか廊下まで響く轟音が鳴っている。なにかと思ったら。

大竹伸朗さんご本人が「ダブ平&ニューシャネル」生パフォーマンスしていました。

SNSにもそんな情報なかったのであんぐり。たまにゲリラパフォーマンスするんでしょうか。神よありがとう。

ミュージアムショップも盛況でした。昔買った手ぬぐいとカバンは取り扱ってなかった。廃盤になったのだろーか。

 

いざ展示の感想を書こうとしたら言葉が出てこないな。全部陳腐になってしまう。身体感覚で楽しんだからなのかな。大竹伸朗はあらゆる素材、あらゆるイメージ、あらゆる方法を使って、言葉が入り込む余地のない画面をつくる。ひとりの人間が本当にこれを作ったのだろうか?というくらい、濃密でバリエーション豊富な作品群。圧倒的にかっこいい。痺れた。何よりも嬉しいのは、これからもまだまだ新作が生まれること。もし私が億万長者になったら、大竹伸朗美術館をどっか山奥か島につくりたい。巨大な館を。常設で観る場所がほしいなぁと切に願う。